日本経団連タイムス No.2781 (2005年9月1日)

次期医療制度改革へ中間的議論を「整理」

−厚労省部会、異なる意見併記


厚生労働省・社会保障審議会の医療保険部会(部会長=星野進保・総合研究開発機構客員研究員)は8月24日、次期医療制度改革に向けての中間的な議論の「整理」を行った。同部会は、2003年3月に閣議決定された医療制度改革に係る基本方針に基づいて、同年7月から検討を続けてきた。
今回の「整理」は、(1)保険者の再編・統合 (2)新たな高齢者医療制度の創設 (3)医療費の適正化 (4)診療報酬体系の見直し――などで構成されている。個別の論点について、多くの異なる意見が併記されているのが特徴。

「整理」はまず、改革を進めるのに必要な基本的考え方として、(1)安定的で持続可能であり、給付と負担の関係がわかりやすい制度とする (2)国民生活の質的向上を通じて医療費を適正化する (3)都道府県単位を軸とした制度運営を推進すること――の3点を挙げている。日本経団連は、昨年9月、12月、今年5月に公表した意見書で、公的給付費に目標値を定めた上で、改革工程を明確にすべきと提言してきたが、「整理」では、この点の具体的な取り組みが明らかになっていないといわざるを得ない。
保険者の再編・統合では、被用者保険、国保それぞれについて、保険料水準を地域の医療費水準に合わせるという考え方を示した。同時に、被用者保険と国保間の財政調整的な仕組みづくりを求める記述もある。日本経団連は、保険者の自主性・自律性を損ねるような安易な仕組みづくりには、反対の立場をとっている。

焦点の1つである高齢者医療制度は、制度運営の責任主体を明確にする観点から、新たな制度を創設すること、その財源は、高齢者自身の保険料、国保および被用者保険からの支援、公費により賄うことについて意見が大勢であったとしている。
高齢者の保険料については、高齢者の所得に応じたきめ細かな配慮を行い、現役世代との均衡を考慮した適切な保険料負担を求めている。具体的には、高齢者と若年者の人数比で按分する意見や、医療費の10%とする意見を提示している。また、国保および被用者保険からの支援については、一般保険料とは別建てにし、高齢者の保険料との割合は明確なルールを決定すべきとしている。公費は、現行の老人保健制度における公費負担割合(50%)を少なくとも維持すべきとしている。
日本経団連としては、国保および被用者保険からの支援について、(1)高齢者医療費の適正化が大前提 (2)負担者が負担額の決定に関与できる仕組みが必要――と考えており、「整理」にその方向性は記述されているものの、実効性が担保できる施策・仕組みの実現に努めていきたい考えだ。
被保険者の年齢について、日本経団連は、年金制度等との整合性の観点から65歳以上を高齢者とする意見を主張しているが、厚労省の意向もあり、「整理」は75歳以上を高齢者とする意見との両論併記となっている。同様に、制度運営を担う保険者についても、市町村が保険者となることに強い難色を示していることから複数意見を併記して、結論には至っていない。

6月21日に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005」では、医療費適正化に関する政策目標を設定し、定期的に検証した上で、必要な措置を講ずるとしている。これを受ける形で、「整理」は、医療費適正化の実質的な成果をめざす政策目標について、具体的な措置内容とあわせて今年中に結論を得ることを確認している。また、生活習慣病対策の推進や、良質で効率的な医療提供をめざす地域医療計画の見直しなど、中長期の施策の他に、食費・居住費の自己負担化や高額療養費の自己負担額引き上げなど保険給付の範囲見直しについても推進・反対の両論併記という形で整理されている。厚労省は今般の議論の整理を踏まえて、早ければ9月下旬にも試案を提示し、同部会で議論した上で、年内には、政府・与党案の取りまとめをめざしたいとしている。
日本経団連としては、医療制度改革の最重要課題は、現役・将来世代への過重な負担や負担の先送りを避けることであり、医療費の適正化は不可欠であるとの認識で、引き続きこの問題に取り組んでいく意向である。

【国民生活本部医療・介護担当】
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