日本経団連タイムス No.2783 (2005年9月15日)

第53回北海道経済懇談会を開催

−「民自律型経済社会の実現と北海道経済の再生に向けて」基本テーマに


日本経団連(奥田碩会長)と北海道経済連合会(道経連、南山英雄会長)は7日、札幌市内で第53回北海道経済懇談会を開催した。同懇談会には、奥田会長はじめ日本経団連の首脳役員、道経連会員など約130名が参加。「民自律型経済社会の実現と北海道経済の再生に向けて」を基本テーマに、北海道の持つ諸々の資源を活かした北海道産業経済の再活性化や社会資本の整備、国際交流事業への取り組みなど、北海道の抱える諸課題を中心に意見を交換した。

新産業創出や観光振興/奥田会長、北海道の取り組みに期待感

開会あいさつした道経連の南山会長は北海道の経済動向について、「依然として明るさは見えていない」「北海道開発予算は4年連続マイナスの伸び率で、公共事業への依存度が高い北海道経済には引き続き厳しい状況が続いている」と述べる一方で、5月に北海道新幹線の起工式が行われたことを経済活性化に向けた明るいニュースとして取り上げ、1日も早い開業を期待するとともに、札幌までの延伸(計画は新函館まで)への支援を呼びかけた。
また、南山会長は、北海道経済再生・自律のためには、(1)基幹産業である食関連産業や観光産業の競争力強化と高付加価値化 (2)産業クラスター活動の推進 (3)新産業の育成 (4)国内外からの戦略的な企業誘致 (5)社会資本の継続的整備――が必要と指摘。
特に企業誘致について、北海道は安価で広大な工業用地、多くの優秀な人材や恵まれた大学・試験研究機関、優れた交通アクセス、冷涼なために少ないエネルギーコスト、工場新増設・雇用増に対する助成制度の充実など、他地域よりも有利な条件が揃っているとして、北海道への企業進出を要請した。

高橋はるみ北海道知事の来賓あいさつに続いてあいさつした奥田会長は、日本の景気動向について、「踊り場的状況から脱却しつつある」と指摘した上で、日本は内需拡大の喚起を通じた中長期的な安定成長をめざすとともに、地球環境問題や超高齢社会、人口減少社会の到来に対応していかなければならないと述べ、「経済人は変化を先取りして積極果敢に経営革新に取り組んでいくべき。日本経団連も政策提言力と実行力をさらに高め、改革の動きをリードしていく」との決意を表明した。

また奥田会長は、地球規模の競争が激化する中で、新しい成長戦略を描くために、日本は「科学技術創造立国」「環境立国」「観光立国」に向けて取り組む必要があることを強調。北海道における (1)潜在力や個性を活かした新産業創出への取り組み (2)サマータイムの試験的導入 (3)豊富な観光資源を活かした観光振興への創意工夫――に対して、大きな期待感を示した。

日本経団連、道経連が活動報告

■活動報告

活動報告ではまず、日本経団連の三木繁光副会長が国の基本問題について、日本経団連が1月に公表した報告書『わが国の基本問題を考える』で示した、めざすべき国家像を説明するとともに、憲法改正をめぐる国会や政党の動きなどを紹介した。

次に最近の行政改革への取り組みとして、出井伸之副会長が、(1)国家としての日本の競争力を回復する観点からの国家公務員制度の抜本的な改革実現 (2)市場化テストの本格実施などを柱とする規制改革の推進――に向けた日本経団連の活動を説明。

また、岡村正副会長はソフト・ハード業界の連携によるコンテンツ産業の発展に関して、日本経団連では、コンテンツ製作者、ハード機器メーカーなどの間で懇談会を設け、相互理解を深めるとともに、エンドユーザーのニーズに応える新たなビジネスモデル創造に向けた課題を検討していることを紹介した。

続いて道経連側から、まず横山清副会長が、北海道経済の活性化に向けた取り組みについて報告した。この中で横山副会長は、道経連が6月にまとめた、今後5年間の活動指針である『2005中期活動指針』について言及。同指針に基づく今年度の具体的取り組みとして、(1)産業構造転換に向けた新事業・新産業の創出 (2)農林水産業・食関連産業の競争力強化 (3)地方分権・地方主権推進や、人口減少社会への対応と地域の活性化対策、公共事業縮減への対応など北海道固有のソフト面の課題への対応 (4)社会資本の整備拡充に向けた種々の活動――を実施していると述べた。

次いで、日本の食料自給率の向上について、林光繁副会長が説明。カロリーベースの食料自給率が40%に低下している今日、自給率向上は喫緊の課題であり、日本の食料基地として北海道が担う役割は一層大きくなってくるとの認識を示した上で、北海道では、大規模食糧備蓄基地構想の推進や、次世代ポストゲノム・根圏制御技術に関する研究開発支援を進めていると述べた。
また、農業の市場開放に関して日本の食料安全保障や農業における構造改革の進展度合等への配慮を指摘、理解と支援を求めた。

堰八義博副会長は、リサイクル産業構築に向けた取り組みについて、北海道では農林水産業や食品加工産業の産業廃棄物量が増加し、その処理が大きな課題となっている一方で、道外からの廃プラスチックを燃料とする発電所の稼動、自動車リサイクル事業やPCB廃棄物処理の展開など、北海道がリサイクルコンビナートの一大集積地となる可能性を持っていることを指摘。官との連携による、循環資源の利用促進や、資源循環型・環境調和型社会の実現推進へ向けた諸活動を行っていることを説明した。また、北海道が導入を検討している「循環資源利用促進税(仮称)」については、北海道経済の情勢や企業の競争力への影響などを考慮した慎重な対応を要望していると述べた。

北海道産業経済再活性化や社会資本整備など意見交換

■自由討議

自由討議では、道経連側から (1)北海道では新幹線や高速道路などの社会資本の一層の整備が不可欠である (2)アジア諸国との経済連携を進めていく必要があるが、経済連携協定(EPA)などの締結に当たっては、農林水産業の果たしている多面的機能への配慮や食料安全保障の確保、農業構造改革などの進展を踏まえた対応が必要 (3)環境関連産業は地域の優位性や特性を活かすことで大きく発展する可能性がある。北海道は室蘭港などの静脈物流拠点を有し、本州の循環資源を受け入れ、資源化を進めることができる (4)少子化・人口減少に伴い、国籍を問わず優秀な人材を確保したいという企業ニーズが高まっていくが、外国人受け入れについては、秩序ある受け入れに向けた国内体制の整備が不可欠 (5)食関連産業と観光産業を「北海道のブランド産業」と位置づけ、産業の高度化、周辺産業の育成・強化を図るとともに、次世代ポストゲノムなどの新産業創出に向けて産学官が連携して取り組んでいる――などの発言があった。

これらに対して、日本経団連の岡村副会長、宮原賢次副会長、勝俣恒久副会長、和田紀夫副会長、高原慶一朗新産業・新事業委員会共同委員長が、各課題に関する日本経団連の取り組み、考え方を説明した。

最後に、奥田会長が総括を行い、北海道の経済活性化のためには、国内だけでなく海外の諸資源を利用する発想が必要であり、北海道は中国やロシア極東地方などとの連携も視野に入れるべきであると述べたほか、昨今の企業不祥事に触れ、企業倫理徹底の重要性を訴えた。

【総務本部総務担当】
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