日本経団連タイムス No.2784 (2005年9月22日)

情報通信委・情報化部会合同会合

−インターネット・ガバナンスのあり方で村井慶応大学教授と懇談/第2回世界情報社会サミットへの提言案審議


日本経団連の情報通信委員会(張富士夫委員長、石原邦夫共同委員長)は5日、東京・大手町の経団連会館において、情報化部会(棚橋康郎部会長)との合同会合を開催した。

今年11月にチュニスで開催される「第2回世界情報社会サミット」においては、インターネット・ガバナンスに関する諸課題の解決に向けた議論が行われる予定である。今日、ICTは企業の競争力の源泉であり、インターネットは必要不可欠なインフラである。そのため同サミットの結果は、日本の産業界に大きな影響を与える可能性がある。そこでこの日の会合では、情報通信委員会として、サミットに向けた日本の産業界の意見を盛り込んだ提言の審議を行った。

また当日は、インターネットの将来をテーマとして、慶應義塾大学の村井純教授の講演を聴いた。村井教授はまず、「研究目的であったインターネットが商用化され、利用者の裾野が拡大したことに伴い、さまざまな問題が発生、拡大している」と指摘。「ステークホルダーに『ユーザー』という視点が入ったことや、コンピューターだけでなく、さまざまな機器がネットワークに接続されるようになったこと、一対多のデジタル通信が可能になったこと等に伴い、インターネット・ガバナンスにおいて、誰がどのような責任を持つべきかが大きく変化している」との認識を示した。
村井教授はさらに「これらの環境変化、あるいは技術革新により、今後、いろいろなガバナンスのあり方を考えることができるが、それを評価するのはユーザーであり、マーケットである」「最高レベルの技術とマーケットを有する日本こそ、適切なガバナンスを構築できる可能性がある」とした上で、「ただし、インターネットは真にグローバルな世界であり、その軸があまりに複雑であるため、問題に『答え』を出せる人は誰もいない。従って議論を続けるしかない」との見解を示した。

意見交換では、日本経団連側から「現在、インターネットの管理はICANNを中心とした民間が担当しているが、グローバル化したことに鑑み、ITUなどの公的機関が行うという選択肢はあるか」などの質問があった。
これに対して村井教授は、「公的機関による管理だと、一番重要なマーケットの評価に応じた柔軟な対応を行うことが難しいと思う。もちろん民間でも課題は多いと考えるが、実績を尊重した方がいいのではないか」と説明した。

続いて、同委員会の「ITガバナンスに関するワーキング・グループ」村上輝康座長が、提言「インターネット・ガバナンスの在り方について―第2回世界情報社会サミットに向けて―」(案)について説明し、審議を行った。

同提言案は、「利用者の立場で考え、民間部門の活力を生かすことが、インターネット発展の原動力である」こと、また「サミットでは国際社会での対応が必要な課題について議論し、その成果に基づき、各ステークホルダーが自らの責任を認識し、協力して役目を果たす」ことが重要であるとの基本スタンスの下、インターネット・セキュリティの確保や民間管理の継続、サミット後にも議論を継続することの重要性等を指摘したものである。この案に対し、委員からは「非常に重要な問題であり、サミット後も継続してわが国産業界としての意見を表明する必要がある」などの意見が出された。審議の結果、同提言案は了承された。
なお、同提言は、20日の理事会でも審議が行われており、サミットにおいて、日本経団連の代表から意見表明を行う予定となっている。

【産業本部情報担当】
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