日本経団連タイムス No.2789 (2005年10月27日)

「個人情報保護法と社内広報活動セミナー」開催

−影響と今後の対応探る


日本経団連の社内広報センターは7日、都内に114名の受講者を集めて「個人情報保護法と社内広報活動セミナー」を開催、今年4月に全面施行された個人情報保護法により企業の社内広報活動はどのような影響を受けるのか、今後の対応を探った。

同セミナーでは、まずエイレックス代表取締役の江良俊郎氏が「個人情報保護法と情報漏洩問題」について講演した。この中で江良氏は、ケーススタディとして具体的なデータ流失事件をいくつか取り上げ、共通する問題点として、(1)外部からの問い合わせで発覚 (2)被害者意識に陥りやすい (3)情報管理体制、マニュアルが守られていない――などを挙げた。一方、速やかな事件の公表や、丁寧かつ真摯なマスコミ応対、今後の対策を早急に打ち出すことで、危機をうまく乗り越えた事例も紹介した。
以上のことから、広報部門では、(1)自社で起こる可能性を想定し、対応すべきリスクを把握 (2)クライシス・コミュニケーション・マニュアルを作成 (3)研修・トレーニングの実施――が必要であることを強調した。
また、講演において江良氏は、参加者を記者側と企業側に分けて模擬問答を行ったり、自社の状況や対応について参加者自身に質問を投げかけたりと、個人情報問題を少しでも身近なものとしてとらえてもらうよう積極的に努めた。

続いて、オムロンソフトウェア経営企画部主務の出海聡氏が「社内コミュニケーションと個人情報保護」について講演した。個人情報保護法施行後、社員情報が多く掲載される社内報はいろいろと制約が課されるのではと不安を抱く担当者が出ているが、出海氏は、個人(社員)の人格尊重の理念と、本人の知らない情報の扱いは控えるという基本原則をおさえていれば、従来どおりの編集を行って大丈夫であることを強調した。さらに「本人が知り得る状態での取得、利用」「本人の同意の上での第三者への提供」「取得・掲載すべきでない情報」「安全管理措置」など、情報について守るべきポイントを説明した。
特に個人情報の取得に当たっては、通達、職制、イントラネットなどを通じてその取得目的を包括的に周知・公表するとともに、社内広報部門が写真撮影時や取材時に得る情報については、企画書や依頼状にその旨を記載する、あるいは取材時に本人に説明するなどして、本人に了解をもらえばよいと指摘した。そのほか、事前同意を受けず第三者に情報提供が可能な「オプトアウト」についても説明があった。
最後に出海氏は、「社内報に個人情報が載るからといって、掲載できないということではない。きちんと情報を知り得る状態にすれば、なんら問題はない。つまり、社員に対して掲載の目的・趣旨・効果をきちんと社内報担当者が説明できるかが重要である」と締めくくった。

【出版・研修事業本部社内広報センター】
Copyright © Nippon Keidanren