日本経団連タイムス No.2791 (2005年11月17日)

経済政策委員会企画部会を開催

−企業価値創造で経産省課長から説明聴取


日本経団連の経済政策委員会企画部会(築舘勝利部会長)は10月27日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、経済産業省の新原浩朗課長から、「企業価値創造に向けた企業像と統治」をテーマに説明を聴いた。

冒頭、新原課長は、最近のコーポレートガバナンスをめぐる論調について、「株主による経営者の監視を重視し、法規制により企業統治が健全化されると考える『監視のガバナンス』に偏っている。むしろ、経営者が自己を規律する『自発性のガバナンス』を重視し、『監視のガバナンス』は補完として位置づけるべき」と指摘した。そして、自己規律を担保する力は、「従業員、取引先、顧客による監視であり、製品・サービス市場における競争である」と述べた。

また、ガバナンスにおいては、「全社的に、行動規範や価値観などの企業文化を共有することが重要」と主張した。この理由として、「予測できない事態に直面した際、従業員は潜在的な企業文化を判断の拠りどころとする」ことを指摘した。あわせて、企業文化が満たすべき条件としては、(1)それが示す行動目標と、経営者の目標とが同じであること (2)それに従えば、従業員が、経営者と同じ方向での判断を容易にできること――を挙げた。さらに、経営者の最大の仕事は、「この指とまれ」のビジョンの提示であると述べた。すなわち、「IR活動を通じて、事業の方向性、利益処分、投資、雇用等を積極的に開示し、会社の基本方針に賛同・支持するステークホルダーを集めること」であり、「会社も株主を選ぶべき」とした。

加えて、経営者には、「持続的に価値を創造し得る『場』を確保すること」、具体的には、「現在の優位性を強化する努力(既存の製品や製造プロセスについて、継続的かつ漸進的なイノベーションを行う)」と「新しい優位性を開発する努力(いまだ満たされていない顧客ニーズを見い出し、新たな事業の柱を創出する)」が求められるとした。

他方、「現在の優位性を強化するためには、企業の各部門が密接に連携する必要があるが、新しい優位性を開発するためには、企業内の組織の縛りを緩くすることが効果的であるため、両立は困難」となる。そのため、「新しい優位性の開発努力については、企業の本体から分離し、現在の競争優位性の維持を考えずに検討を進める」ことが必要とした。

そして、「新しい優位性の開発においては、(1)社内の常識にとらわれない『境界領域』に存在する、没頭できる能力を持つ社員を見いだすこと (2)長期的かつ思い切った研究開発を可能とするために、あえてキャッシュフローの範囲内で投資を行うこと――が重要である」と強調した。

【経済本部経済政策担当】
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