日本経団連タイムス No.2795 (2006年1月1日)

東証「コーポレート・ガバナンス報告制度」でコメント


東京証券取引所(東証)は、上場会社のコーポレート・ガバナンスの取り組み状況をより投資家にわかりやすい形で開示する観点から、今年3月初旬を目途に、「コーポレート・ガバナンス報告制度」を導入する予定であり、昨年11月22日、同報告制度要綱案の意見照会を実施した。

東証は、全上場会社のコーポレート・ガバナンスに関する情報を、常時、東証のホームページに掲載し、検索や比較等を可能にする方針である。しかし、同制度の導入は、企業の実務に大きな影響を与えることが予想されるため、日本経団連では12月5日、経済法規委員会企業会計部会(八木良樹部会長)・企画部会(八丁地隆部会長)合同で、同報告制度要綱案に関するコメントを取りまとめるとともに、東証との懇談会等を通じて、意見の反映に努めた。

企業への過剰な負担強いぬ仕組み求める

同コメントにおいては、同報告制度は、単なるアンケートとは異なり、企業名や個別データが公表され、かつ実質的な制裁を伴う上場規則に基づくものであるため、企業実態や開示に係るコストとその有用性を十分検討した上で、開示側の企業や投資家の混乱やミスリードを防ぎつつ、制度導入を図るべきことを強調している。とりわけ、企業への過剰な負担を強いることがないよう、一律強制の開示項目は、必要最低限のものに絞り込む一方で、各社が自主的な判断に応じて、補足説明ができるよう、自由記載が可能な仕組みとすべきことを求めている。

具体的に問題としているのは、第1に、「取締役及び監査役の独立性」のように、概念が曖昧で、現時点ではコンセンサスを得られていない項目である。同コメントでは、一律に記載を強制するのは時期尚早であり、自由記載とすべきとしている。
第2に、「独立取締役の有無」や「各種委員会の設置の有無」等のように、「形式」に係る項目が見られるが、コーポレート・ガバナンスについては、形式に捉われることなく、「実際に効果を上げる」ことが重要であり、形式に係る項目の規定は不適切と主張している。
第3に、「当該体制等が自社にとって『適切である』と考える理由や当該体制等を採用したことによる『成果』等」の開示を求めているが、各企業は、より良い仕組みづくりに向けて不断の改革を進める中で、ある時点での体制等を「適切である」と判断させる項目の設定は不適切かつ不要と指摘している。
第4に、使用する用語については、混乱、誤解を生じさせないよう、有価証券報告書など、公的な定義、記載基準と整合性を図った上で、一義的に明確に定義するか、定義付けが困難な項目(「独立取締役・監査役」等)は削除すべきと主張している。
第5に、すでに各社が有価証券報告書、営業報告書等で開示している情報と重複した項目は排除し、最低限必要な項目に限定すべきであり、「内部統制システムの整備状況」や「敵対的買収防衛策の導入状況」も、特別の開示は不要とすることを求めている。
第6に、報告時期について、コーポレート・ガバナンスに関する重要事項は、株主総会に付議する項目が多いことから、株主の意思が反映された最新の情報を開示できるよう、株主総会後の一定期間内に報告することとすべきと強調している。
加えて、同報告制度が導入された場合、今後、具体的な記載内容を決定するに当たっては、企業の実務家の意見が十分反映されるような検討の機会を設けるべきであることを求めている。

【経済本部経済法制担当】
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