日本経団連タイムス No.2796 (2006年1月12日)

WTO新ラウンド交渉・香港閣僚会議に代表団派遣

−各国経済団体と連携/交渉の推進を働きかけ


日本経団連は、昨年12月13〜18日に開催されたWTO新ラウンド交渉・香港閣僚会議に、日本の経済界を代表して、総勢16名の代表団(団長=桑田芳郎・貿易投資委員会企画部会長)を派遣した。

2006年末に交渉終結期限が迫る中、農業や鉱工業、サービス貿易など、主要な交渉分野・論点において、04年7月末の枠組合意以来、各国の意見対立がほとんど収束しないまま、新ラウンド交渉は香港閣僚会議を迎えることとなった。事前に用意された合意案である閣僚宣言案は、大枠合意実現を数カ月先送りする一方、加盟国の大半を占める途上国の積極的交渉参加を促すため、焦点を開発問題に絞っていた。
こうした中、日本経団連は、WTOを通じた世界貿易の自由化の停滞への危機感を強め、香港閣僚会議直前の12月5日、緊急提言を発表。香港において、06年中の交渉終結への具体的な道筋を明確化するとともに、各国が相互に政治的決断を行い、自由化の実質的進展に資する合意を実現するよう強く求めた。

こうした働きかけや、過去のシアトルやカンクン閣僚会議における交渉への関与の実績も踏まえ、日本経団連は今回初めて、日本政府代表団の正式な一員に加わることとなり、会議期間中、毎日定期的に、交渉官からの情報提供を受けるとともに、意見交換の機会を持った。さらに、二階俊博経済産業大臣や中川昭一農林水産大臣にも面会し、交渉の進捗を踏まえ、直接経済界の要望を伝えるとともに、日本政府の交渉努力に対し支援を表明した。
また、各国経済界とは早くから危機感を共有し、香港閣僚会議前の共同声明の発出等を通じて連携強化を図ったほか、現地では共同で会合を開催し、ラミー事務局長をはじめWTO事務局幹部や各交渉グループ議長との意見交換を行うとともに、交渉の進捗を踏まえて適宜共同声明を発表し、交渉の推進を求めた。
特に、経済界の関心の高い鉱工業品の関税引き下げに関しては、欧州産業連盟(UNICE)、全米製造業者協会(NAM)をはじめ、ブラジル、インド等新興途上国やアフリカ諸国等開発途上国を含め、22カ国の経済団体とともに、分野横断的な関税削減方式への合意や分野ごとの追加的関税引き下げへの取り組みの推進等へ合意実現を主張した。また、サービス貿易自由化交渉の推進に関しては、交渉期間中、ASEAN、アフリカ諸国がさらなる自由化の方策への合意に抵抗姿勢を示したことに対する緊急アピールも採択、米国サービス産業連盟や欧州サービス産業連盟はじめ、各国のサービス業界別産業団体とともに、自由化推進の動きの維持を求めた。

同閣僚会議は、先進国主導の自由化に対する途上国の不安感を背景に、農業関係者による自由化への抗議活動も激化する中、一時は決裂も危ぶまれた。しかし、各国経済界の一致した働きかけも功を奏し、06年中の交渉終結の確認と、大枠合意を06年4月末までに形成することを盛り込んだ閣僚宣言の採択が実現した。もっとも、決裂は回避されたものの、依然として主要論点で各国の意見対立は収束していない。期限内終結の見通しは、一層予断を許さない状況となっており、引き続き自由化推進に向けて各国の政治的決断を働きかけていく必要がある。
日本経団連は、各国経済界相互の連携をさらに強化しつつ、日本政府との一層の緊密な連携を求め、効果的な交渉の推進を働きかけることとしている。

【国際経済本部貿易投資担当】
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