日本経団連タイムス No.2796 (2006年1月12日)

産業問題委エンターテインメント・コンテンツ産業部会で説明など聴取

−コンテンツ・ポータルサイト構想が本格化/東アジア規模に発展へ期待


産業問題委員会エンターテインメント・コンテンツ産業部会(依田巽部会長)は12月21日、会合を開催し、慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所の菅谷実教授から、メディア融合時代のコンテンツ流通について説明を聴くとともに、日本映画製作者連盟の福田慶治専務理事からは、映画館における盗撮の現状を聴取し、意見交換を行った。

菅谷教授は、政府によるコンテンツ振興政策が文化政策だけでなく経済政策や外交政策としても重要になりつつあることを紹介した上で、韓流ブームを例に上げながら、日本としても「アジアのハリウッド」となるべく海外展開に向け、積極的な施策を講じる必要があると強調した。特に、海外に向けた情報発信の重要性を指摘し、現在日本経団連において検討している「コンテンツ・ポータルサイト」構想を東アジア規模に発展させ、東アジアにおけるコンテンツ流通の情報インフラを構築することへの期待を示した。

現在、日本経団連ではエンターテインメント・コンテンツ産業部会を中心に、コンテンツの内容や権利者に係わる情報等、コンテンツを2次利用したい人々が迅速・的確に入手できるための情報検索サイトとなる「コンテンツ・ポータルサイト」の2006年度中の実現に向け検討を進めている。「コンテンツ・ポータルサイト」については、05年6月に政府の知的財産戦略本部がとりまとめた「知的財産推進計画2005」において政府が構築を支援する旨が明記されているほか、経済産業省主催により05年10月に東京で開催された「アジアコンテンツ産業セミナー」閣僚会議の共同声明においても、各国がポータルサイトを整備し、それをリンクすることで、アジアのコンテンツ産業全体のインフラとしていくことがうたわれたところである。

また菅谷教授は、04年12月に日本経団連が映像関係業界とともに設立した、NPO法人映像産業振興機構(VIPO)がコンテンツ産業振興に果たす役割の重要性に言及し、VIPOのように政府に代わり政策主体となり得る組織を、さらに育成していくべきだと強調した。

続いて説明を行った福田専務理事は、映画館で上映中の作品が盗み撮りされ、オンライン上で無料で交換されているほか、繁華街の路上ではそれらの作品がDVDで販売されている実態を紹介。このような行為に対し、日本映画製作者連盟、外国映画輸入配給協会、全国興行生活衛生同業組合連合会、MPA(アメリカ映画協会)の4団体や、不正商品対策協議会、日本国際映画著作権協会は、合同で対策を協議していることを報告した。
同部会では、今回聴取した映画館における盗撮問題など、コンテンツ産業が抱える重要な課題について整理を行い、上半期にも予定されている政府の「知的財産推進計画2006」改訂に向け、政府・与党に対し、課題解決に向けた必要な働きかけをしてくこととしている。

【産業本部産業基盤担当】
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