日本経団連タイムス No.2797 (2006年1月19日)

連合首脳と懇談/春季労使交渉めぐる諸課題で意見交換

−今次交渉・協議で日本経団連は総額人件費管理など5つの観点を強調


日本経団連(奥田碩会長)と連合(高木剛会長)は11日、東京・大手町の経団連会館で首脳懇談会を開催した。日本経団連からは奥田会長はじめ柴田昌治副会長、岡村正副会長、西室泰三評議員会副議長、立石信雄国際労働委員長、大橋洋治雇用委員長、茂木賢三郎少子化対策委員長、加藤丈夫労使関係委員会共同委員長らが、連合からは高木会長はじめ会長代行や副会長ら、両者あわせて31名が出席した。今回の懇談会では、春季労使交渉をめぐる諸課題について意見交換を行った。

冒頭のあいさつで連合の高木会長は、社会安定の前提としての産業・企業の発展の重要性や、二極化・格差社会に対する強い懸念、「生産性三原則」の再認識の必要性などを指摘した上で、「今日以降、さまざまな場で経営側と協議・交渉させていただくが、労働者も頑張ってきた点について是非ご高配を賜りたい」と要望した。

次にあいさつした日本経団連の奥田会長は、バブル崩壊後の回復に向けた労使の懸命な努力が構造改革と相まって、昨年は経済が順調に回復したことに言及した一方で、「原油をはじめとする資源価格の高止まりがコストプレッシャーになると覚悟しなければならず、昨年ほどの大幅な増益は期待できないし、期待しない方がよい」と語った。

意見交換

続いて行われた意見交換では、連合がまず、今回の春季労使交渉の切り口は「格差社会に対する警鐘」であるとした上で、(1)マクロ的な分配面でのゆがみを解消するため、月例賃金を重視した賃金改善が必要であること (2)規模間格差と雇用形態間格差を是正するため、均等待遇と底上げをめざした中小共闘およびパート共闘に取り組むこと (3)人口減少社会を見据えた働き方の改善、改革にも取り組むこと――が課題であるとの考えを示した。

これに対して日本経団連は、横並びで賃金水準を底上げする市場横断的なベースアップはもはやあり得ないことを強調、個別企業の賃金決定は個別労使がそれぞれの経営事情を踏まえて行うべきであるとし、今次交渉・協議に当たっては、(1)自社の支払能力による賃金決定 (2)総額人件費管理の徹底 (3)中長期的な見通しに立った経営判断 (4)短期的な成果の賞与・一時金への反映 (5)企業内の幅広い課題についての労使間の積極的な協議・話し合い――の5つの観点が重要であるとした。
このほか、日本経団連からは、「自社の生産性向上を上回る横並びでの賃金引き上げは高コスト構造の原因となるだけでなく、企業の競争力の低下を招き、雇用の安定や企業の存続さえも危うくする」「働き方の改善については、国際競争力の維持という観点からも真剣に議論しなければならず、“ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)”と“ホワイトカラー・エグゼンプション”のバランスをどのように図るかが極めて重要である」「法定福利費の増加による人件費増大の圧力は、国際競争力の問題でもあることを認識し、労使双方でしっかりとした考えをまとめていく必要がある」などの意見が出された。さらに、「組合側は“従業員主権から株主主権へ”移行する傾向があると言うが、ステークホルダーに対して公平に満遍なく対応しようという考えの経営者は多い」といった意見や、若年者と高齢者の雇用問題、社会保障制度改革、生産性三原則などに関する発言があった。

一方、連合は、「労働条件の向上と国際競争力の強化は車の両輪であり、分配構造の歪みを是正し賃金の回復が図られてこそ、産業・企業の競争力が強化される好循環が働くものである」「賃金体系を維持できず実質的にマイナスベアとなっている中小組合の状況を打破し、二重構造、二極化を解消する必要がある」などの意見を述べたほか、パートを含めた非典型労働者に光を当てることの重要性や、パート労働者の増加と正規社員の長時間労働という働き方の二極化の是正、取り引き関係の改善の必要性などについて主張した。

【労働政策本部労政・企画担当】
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