日本経団連タイムス No.2800 (2006年2月9日)

東海地方経済懇談会を開催

−「企業の力を引き出し新しい成長の基盤を創る」テーマに


日本経団連(奥田碩会長)と中部経済連合会(中経連、豊田芳年会長)ならびに東海商工会議所連合会(箕浦宗吉会長)は2日、愛知・名古屋市内のホテルで東海地方経済懇談会を開催した。懇談会には奥田会長はじめ、御手洗冨士夫副会長、柴田昌治副会長、三木繁光副会長、宮原賢次副会長、庄山悦彦副会長、米倉弘昌副会長、勝俣恒久副会長、張富士夫副会長、岡村正副会長、高原慶一朗新産業・新事業委員会共同委員長ら日本経団連首脳、また共催の2団体の会員企業などから約200名が参加。「企業の力を引き出し新しい成長の基盤を創る」を基本テーマに、東海地方の経済情勢と諸課題などについて意見を交換した。

東海地方の諸課題などで意見交換

冒頭、箕浦東海商工会議所連合会会長は、開会あいさつの中で東海地方の昨年を振り返り、中部国際空港の開港と愛・地球博の開催という2大プロジェクトが、同地域の国際化を大きく進展させたと指摘。引き続き、「名古屋を世界各国と交流し、世界に情報発信する世界都市にするとともに、東海地域、中部全体の一層の飛躍・発展をめざしていきたい」と述べた。また、東海地方の景況について、「競争力の高い製造業を中心に、全国的にも元気」であると述べる一方で、「いまだ十分に回復感が浸透していない業種や中小企業がある」ほか、原油価格の高騰、減税措置の縮小等の消費への影響などの懸念材料があることを指摘。こうした中、企業経営者が、「知恵と経験、旺盛なチャレンジ精神を持ち寄り、景気の本格回復を実現するとともに、企業の英知や人間の英知を結集して、新たな産業振興や魅力ある都市・地域づくりに向かってさらに前進していきたい」と述べた。

続いてあいさつした奥田会長は、激化するグローバル競争の中で日本企業が生き残っていくためには、製造業の競争力を高めていくことが重要であり、科学技術創造立国の実現に力を尽くす必要があるとした。その上で、東海地方はものづくりの中枢として日本経済を支えており、これまで蓄積した技術力や経営ノウハウなどをさらに革新し、日本経済全体の活性化に貢献することが期待されると述べた。
また、春季労使交渉については、地域や業種、規模間だけでなく、企業ごとに格差があることから、横並びや一律でなく、個別企業等を意識した交渉になると指摘。加えて、賃上げに代表される「経済的豊かさ」中心の交渉だけでなく、仕事と生活の調和などを通じた「心の豊かさ」についても、労使がともに考える必要があることを訴えた。

活動報告/経済法制改革の最近の動きなど

各団体の活動報告では、日本経団連側から、御手洗副会長が「経済法制改革をめぐる最近の動き」、柴田副会長が「今後のエネルギー安全保障の確立に向けて」、三木副会長が「憲法改正をめぐる動向」、張副会長が「税制改正」について、それぞれ報告した。

続いて、名古屋商工会議所(名商)の早川敏生副会頭が活動を報告。名商が、「万博・空港」の成果を未来につなげる事業として、昨年11月に会員企業の外国人社員や地域在住外国人と日本人ら24カ国600名が参加した運動会(NAGOYA UNDOUKAI)を実施したことや、今年10月に「『環境を基軸とする産業』をめざして」をテーマに、企業間取り引きを基本としつつ、市民や生活者の視点も加味した見本市「メッセ ナゴヤ」を開催する予定であることを報告した。また、名古屋において広告、デザインなどの情報発信産業や、アミューズメント産業などの都市型産業の振興・育成・誘致策について検討を進めており、日本経団連からも協力、支援を求めたいと述べた。
その後に中経連の川口文夫副会長が、「魅力と活力溢れる中部の実現について」と題する報告の中で、(1)産業振興 (2)観光産業振興 (3)国際交流の推進 (4)道州制の実現 (5)インフラの整備 (6)地球環境・資源問題への対応――について説明。同地域がものづくりの中枢圏域として今後とも産業技術面で世界をリードしていくためには、次代を担う産業を適切に育成・振興していくことが最大の課題であると述べた。
また、インフラの整備では、中部国際空港の2本目の滑走路建設や幹線道路ネットワークの整備、主要港湾の機能強化・国際競争力の強化をめざして活動していると説明した。

自由討議/道州制問題や新産業振興、物流インフラの整備など

自由討議では、まず中経連の神野信郎副会長が「道州制の実現に向けた取り組みについて」発言。長野、岐阜、静岡、愛知、三重の5県からなる「中部州」が実現した場合のメリットの一例として、行政における人件費の大幅削減や行政サービスの質・機能の向上を挙げた。
続いて蒲郡商工会議所の小池高弘副会頭が「地域からの新たな産業振興について」と題し、蒲郡における「癒しとアンチエイジングの郷推進協議会」の活動の実例として、医・衣食住の産業分野における新しい生涯健康産業の事業化・市場化、同地のリゾートを生かしたアンチエイジング事業の取り組みなどについて紹介した。
「中部における産業振興に向けた取り組みについて」発言した中経連の横井明副会長は、広範な産業分野に関わる中核的技術であるナノテクノロジーやバイオ・ITなどの先端産業の振興に、中部の総力を結集して取り組む必要があると述べた上で、財団法人ファインセラミックスセンター内のナノテクセンター設立と、宇宙航空研究開発機構の飛行研究施設の県営名古屋空港隣接地への誘致について日本経団連の支援と協力を求めた。また、中経連の鍋田雅久副会長は、「物流と巨大地震に係わる防災問題について」説明。中経連が昨年10月に取りまとめた「巨大地震に備えた中部のインフラ整備〜ものづくりを支える物流面からの提言」に言及。港湾におけるコンテナバースの耐震強化岸壁の整備や、第二東名・名神高速道路、東海環状自動車道などの整備、既存道路の耐震補強、広域防災センターの整備などを早期に進める必要があることを強調した。
「国際経済交流に対する取り組みについて」述べた高山商工会議所の蓑谷穆会頭は、少子・高齢化、人口減少によって国内観光客減少が予想される中、飛騨高山では15年前から外国人観光客誘致活動を実施し、その成果が上がっていると報告。官民一体となっての、アジア諸国やアメリカ、ヨーロッパなどの海外に向けての積極的なPRが効果を上げていることを紹介した。
津商工会議所の田村憲司会頭は、「広域観光・環境問題について」発言。広域観光の実現のため「中部広域観光推進協議会」などを軸に、同地域の経済団体や行政が連携を密にして取り組んでいくべきこと、環境問題の一環として、今後は経済界としても森林づくりに真剣に取り組んでいくべきことの必要性を指摘した。

これらに対し日本経団連側は、道州制と地域振興の問題について米倉副会長が発言。地域振興については、地下鉄網・地下街の発展や、モータリゼーションの展開により、同地は街づくりの面からも、バランスのよい発展がなされていると指摘した。健康サービス産業の振興については高原委員長が、日本経団連も「ヘルスケア産業部会」を立ち上げ、国民医療費抑制や健康づくりに貢献する産業の育成と発展に努めていることを紹介した。また、産業・技術の振興に関連し庄山副会長は、「第3期科学技術基本計画」の土台となる総合科学技術会議の答申策定に際して、政府研究開発投資額の拡充や科学技術の戦略的重点化を働きかけたことなどを説明した。
物流インフラの整備と防災への取り組みについては岡村副会長が、国際競争力を持ったスーパー中枢港湾の育成や、既存の道路・港湾に対する耐震補強の必要性を指摘。宮原副会長は観光振興への取り組みについて地域間連携による観光振興の推進や景観の整備などによる魅力ある地域づくり、世界に向けた日本の情報の発信・イメージ戦略が重要との考えを示した。
環境問題については、勝俣副会長が発言。森林づくりに関して企業として、間伐材の積極利用や国内外での植林プロジェクトが進みつつあると述べた。
会議の締めくくりとして、奥田会長から、東海地方の経済界が、好況であるにもかかわらず、今後の環境変化を見越して将来の発展へ向けた具体策を模索していることを高く評価。変化に柔軟に対応できるものが生き残れるとして、人々の意識や社会潮流の変化を見逃さず、新しい産業の創出・育成を図っていくことの必要性を述べた。

最後に中経連の豊田会長が閉会あいさつを行い、グローバル化により企業間の競争が熾烈化する中、個々の企業が力を発揮できるような環境を整備する構造改革促進に努めてもらいたいと、日本経団連に対し要望した。

【総務本部総務担当】
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