日本経団連タイムス No.2802 (2006年2月23日)

フィットネスクラブの取り組みで説明聴取

−新産業・新事業委ヘルスケア産業部会/当面の課題で意見交換


日本経団連は10日、東京・大手町の経団連会館で、新産業・新事業委員会ヘルスケア産業部会(赤星慶一郎部会長)の第6回会合を開催した。同会合では、生活習慣病予防のビジネス化における民間の取り組み事例のヒアリングを続けており、今回は、コナミスポーツの黒川知輝副社長、ルネサンスの斎藤敏一社長から、フィットネスクラブにおける取り組みについて説明を聴取。その後、当面の課題に関する論点整理について意見交換を行った。

黒川副社長は、現在コナミスポーツが開発に取り組んでいる「e−エグザス」という健康管理システムについて説明し、(1)フィットネスクラブでの運動量や日常生活におけるカロリー消費量など、個人の運動履歴が瞬時にデータベースに蓄積されること(2)パソコンやテレビを通じて、自分のデータをどこからでも見ることができること――などの特徴を挙げて紹介した。従来は、顧客への運動指導をインストラクターの暗黙知に頼っていたが、e−エグザスを通じて、顧客は常に自分の消費カロリー等、運動量に関するデータを把握できることに加え、これらの具体的なデータに基づき、インストラクターから適切な指導を受けることができると指摘した上で、目標の達成が容易になるだろうと語った。
また、コナミスポーツでは、顧客の健康状態に関する医師の診断を踏まえて適切な運動指導を行うなど、医療との連携にも取り組んでいることを紹介。今後の課題として黒川副社長は、「医療、運動、栄養に関するカルテの一体化の推進が重要」と締めくくった。

続いて、ルネサンスの斎藤社長が説明に立ち、まず、政府の動きについて、厚生労働省は現在運動所要量・運動指針の取りまとめを行っており、経済産業省は産業構造審議会の下に近々サービス産業に関する部会を立ち上げ、健康を1つの切り口として取り上げる予定であることなどを紹介した。
次に、ルネサンスにおける会員の特徴を説明、会員の半数以上が40歳以上であることから、従来の子供向け水泳教室や成人向けプログラムに加えて、シニア層を対象としたプログラムを数多く開発してきたことを紹介。また、若年層に比べて、シニア層は退会率が低く、クラブ運営の安定に貢献していると述べた。
さらに、電子カルテの採用など先進的な取り組みに熱心な近隣の医師と提携し、3年前からメディカルフィットネス事業を始めたことに触れ、月々3500円で提携医療機関による運動処方が受けられるなどの概要を語った。
日本では人口のわずか3%しかフィットネスクラブに通っている人がいない現状を指摘した斎藤社長は、「今後、社会の高齢化に伴い、国民医療費の大幅な増加が見込まれる中で、残り97%の人々の健康づくりをいかに実現していくかが最重要課題である」と強調。今後ルネサンスでは、地方自治体等と連携して、市民の健康づくりにフィットネスクラブ運営の知見を活かしていきたいとの意向を示した。

部会後半は、当面の課題に関する論点整理について意見交換を行った。

現在、ヘルスケア産業部では、当面の課題を「保険者による保健事業のアウトソース推進による産業基盤の醸成」としており、そのための主な論点として、(1)企業と健保組合の連携推進(2)保健指導推進の観点から個人情報保護法や関連ガイドラインの見直し(3)保健事業実施にかかる保険者への動機付け(4)アウトソース基準の整備、アウトソース事例の収集――などを挙げている。
今後、同部会では議論を深め、適宜論点整理をまとめる予定としている。

【産業本部産業基盤担当】
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