日本経団連タイムス No.2804 (2006年3月9日)

ラガルド・仏貿易担当相と懇談

−日仏経済関係やWTO交渉への取り組みで説明を聴取


日本経団連の貿易投資委員会企画部会(桑田芳郎部会長)は2月24日、東京・大手町の経団連会館で、クリスティーヌ・ラガルド・フランス貿易担当大臣との懇談会を開催、日仏双方から約50名が参加した。

冒頭、桑田部会長は、「大臣から日仏経済関係、WTO交渉への取り組みの2つのテーマについてお話をうかがえることをうれしく思う」とあいさつ。日本経団連が、これまでWTOを通じた多角的貿易体制の維持・強化を支援してきたことや、新ラウンド交渉を2006年中に終結させることが重要であるとの認識から、4月末には農業と工業品の大枠合意を成立させることが必要であると考えていることを説明した上で、「EUの有力国であり、EUの通商政策に影響力を持っているフランスの立場を、大臣から直接承りたい」と述べた。

これを受けてラガルド大臣は、まずフランスのビジネス環境を説明。インフラが整備されていることや、地理的にヨーロッパの中心に位置すること、豊かな文化を持っていることなど、フランスが投資先として多岐にわたる魅力を備えていることを紹介した。またフランスの特徴として、欧州航空宇宙産業の中核的役割を果たすなど質の高いテクノロジーを有していることを挙げ、「重要なのはフランスにはまだ、これら事業環境を改善する余地が残されており、フランスは一層発展していくということである」と述べて、日仏企業の事業協力をいま一層促進したい考えを示した。
さらにフランス政府の姿勢について、税制やイノベーションを重点分野として取り組んでいると説明、(1)かつてフランスの租税負担率は極めて高かったが(最高で60%)、現在は他国と比べても中位となっている(2)イノベーションについては、インダストリー・イノベーション・エージェンシーを設け、10億ユーロの予算を確保するなど積極的に取り組んでいる(3)フランスは60に及ぶクラスター(高度産業技術集積地)を設けており、バイオ、ナノテクなどの分野を育成している――などと述べた。

WTO交渉に対する方針についてラガルド大臣は、日本とフランスは農業分野でWTO交渉において共通するところが多いと指摘。「日本はG10の主要メンバーであるが、フランスも第2のG10ともいえるEUに所属している。われわれは、過大な農業市場開放を要求するG20とは異なる考え方をしている」と述べた。また「EUは、農業の輸出補助金においては最大ともいえる譲歩をした。EUの輸出補助金を2013年までに撤廃するとの約束に伴い、輸出信用(米国)、食料援助(米国)、輸出国家貿易(オーストラリア、ニュージーランド、カナダ)など補助金同様に農業市場をゆがめる政策も同時に見直すことが重要である」との考えを示した。
ラガルド大臣はさらに「(WTO交渉では)途上国の対応も鍵となる。全世界の関税の60%は南南貿易が占めているという事実が示すとおり、貿易自由化によって経済成長を遂げられないのは、途上国自身の問題ともいえる。途上国が自ら発展戦略を描かないでいる点を問題視すべきである」と述べるとともに「EUは自己中心的であると時に批判されるが、農業市場を開放できるよう現在、大きな改革を断行している。牛肉やバターでも市場開放を行っており、『チキンナゲット1個分の自由化しかしない』との批判は的外れだ。新ラウンド交渉を前進させるべく、これからも努力を行っていく」との決意を示した。

【国際経済本部貿易投資担当】
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