日本経団連タイムス No.2805 (2006年3月16日)

第58回九州・山口経済懇談会を開催

−「構造改革の推進と九州地域における自律型経済圏の形成」を基本テーマに


日本経団連(奥田碩会長)と九州・山口経済連合会(九経連、鎌田迪貞会長)は8日、福岡市内のホテルで「第58回九州・山口経済懇談会」を開催した。同懇談会には、両連合会首脳をはじめ、九経連会員代表者など約200名が出席し、「構造改革の推進と九州地域における自律型経済圏の形成」を基本テーマに、「九州はひとつ」の実現に向けた地域戦略の推進、環黄海地域経済圏の経済交流推進などについて、活動報告や意見交換が行われた。

開会あいさつで九経連の鎌田会長は、まず九州・山口地域の経済情勢は回復基調にあり、特に九州全域において自動車、半導体関連などの新工場建設が続くなどモノづくりにおける九州の重要性が高まっていると指摘。アジアに近い利点が活かされ、今後一層マザー工場化やサポーティングインダストリー化が進み、地域全体の生産力向上に結びつくことへの期待を示した。また、これまで以上にアジアに開かれた玄関口としての機能を強化したいと述べ、アジアと連携していく姿勢を強調した。
さらに、自律型経済圏の形成に向けた官民一体の取り組みとして立ち上げられた「九州地域戦略会議」が、九州観光推進機構や道州制検討委員会を設置するなど、本格的な地方分権時代を見据え積極的な活動を展開していることを報告。今後の課題としては、(1)東九州自動車道をはじめとする循環型高速交通体系の早期整備(2)物流コスト低減化や物流ネットワーク機能の向上(3)高度情報通信ネットワークの構築(4)県境を越えた連携による産業クラスターの形成(5)知的集積のネットワーク構築と新産業創出および高度な技術人材の養成――などを挙げ、九経連ではこれらの早期実現に向け、努力を傾注したい旨あいさつした。

奥田会長はあいさつの中で、九州には鉄鋼や化学、自動車、半導体関連などの製造拠点が集積しており、こうした「強み」を活かし、一層の技術革新や経営改革に取り組むことでさらなる発展を期待したいと語った。

「九州はひとつ」実現にむけ論議

■活動報告

日本経団連からは、柴田昌治副会長が「今後のエネルギー安全保障の確立に向けて」、三木繁光副会長が「憲法改正をめぐる動向」、出井伸之副会長が「行政改革への取り組み」、三村明夫副会長が「容器包装リサイクル法の見直し」についてそれぞれ活動報告した。

続いて九経連からは、まず明石博義副会長が「国土形成計画と九州における自律的経済圏の形成」について報告。国による国土形成計画の策定に対応し、積極的な提言活動等を行っていくとともに、「九州地域戦略会議」や「九州観光推進機構」を通じ、国内外の観光客誘致など、戦略的な取り組みを進めていることを紹介した。一方、「自律的経済圏形成に向けての環境整備は不可欠」と指摘。東九州自動車道などの社会基盤整備の重要性を改めて強調し、実現に向け、支援・協力を呼びかけた。

次に、平山良明理事が「道州制についての取り組み」を報告。九経連としては昨年5月に提言を発表後も研究や議論を重ねており、九州地域戦略会議道州制検討委員会も今年10月には道州制の実現に向け最終報告を出す予定であることを紹介。「『九州はひとつ』の実現には道州制はふさわしい制度」と述べ、道州制実現に向けての協力を求めた。

安藤昭三副会長からは「東アジア経済圏の形成」について報告が行われた。中国、韓国との共同開催による「環黄海経済・技術交流会議」や「環黄海ビジネスダイアログ」を通じ、ビジネス障害の解決策を協議するなど、具体的な取り組みを進めていることを紹介。また、昨年開館した「九州国立博物館」を観光ルートとしてアジアからの観光客の誘致促進を図るとともに、優秀な外国人人材の受け入れと支援体制の強化を推進するなど、東アジア全体を視野に入れ、連携・共生をめざした活動を進めていくとの意向を示した。

最後に浜本康男副会長は、「循環型社会における九州地域の産業基盤の整備」について報告。九経連として、(1)環境経営(2)地球温暖化対策(3)適正な廃棄物処理・リサイクル――などの推進に取り組み、循環型社会の構築に注力していると語った。

■自由討議

続いて行われた自由討議では、九経連側から、「九州圏の一体的な発展に向け、東九州自動車道の早期整備など域内交通基盤の整備が喫緊の課題」「域内情報通信基盤の整備が不可欠」「アジア各国との経済交流を進める上で中央、地方の連携が必要」「地域においても国際競争力のある新産業が生まれる仕組み作りが必要」「産学連携を推進する上で、大学側の積極的な取り組みが重要」――などの発言があった。これらの発言に対し、日本経団連側からは、西岡喬副会長、張富士夫副会長、宮原賢次副会長、高原慶一朗新産業・新事業委員会共同委員長、勝俣恒久副会長がそれぞれコメントした。

【総務本部総務担当】
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