日本経団連タイムス No.2805 (2006年3月16日)

日本ブラジル経済委員会企画部会開く

−桜井日本貿易振興機構サンパウロセンター所長から説明聴取/ブラジルのビジネス環境と日伯関係


日本経団連の日本ブラジル経済委員会企画部会(多田博部会長)は3日、東京・大手町の経団連会館で会合を開き、桜井悌司日本貿易振興機構サンパウロセンター所長から変貌するブラジルのビジネス環境と日伯関係について説明を聴いた。概要は次のとおり。

市場開放と輸出多様化進む

現在ブラジルでは物価も為替も安定し、企業は競争力をつけ、市場開放と輸出の多様化が進みつつある。コーヒー、サトウキビ、オレンジの生産量は世界第1位。大豆、牛肉、鉄鉱石、アルミニウムは第2位、鶏肉は第3位である。海底油田の掘削技術は世界屈指で、2005年に石油自給を達成した。サトウキビを原料にしたエタノールの生産も世界最大で、ガソリンと併用できる燃料としてエタノールは世界的に注目されている。
2005年の輸出は工業製品が55%を占め、輸入は原材料・中間財51%、資本財21%、燃料・潤滑油16%、消費財12%。2005年国別輸出額では米国、アルゼンチン、中国、オランダ、ドイツ、メキシコ、チリ、日本、輸入は米国、アルゼンチン、ドイツ、中国、日本の順である。

日伯の貿易構造については、日本は鉄鉱石や鶏肉を輸入し、日本からは日本企業の進出、投資に絡んだものを多く輸出している。例えば自動車産業の進出に伴い、自動車部品が輸出されている。2005年にブラジルは96年以来はじめて対日貿易で黒字を記録した。日本向け輸出は前年比25.6%増の34億7600万ドル、輸入は同18.8%増の34億700万ドルとなり、対日貿易の黒字は6900万ドルであった。鉄鉱石や鶏肉、エタノールなど資源輸出が加速した。
また2005年の日本からの投資は、7億7900万ドルで全体の3.6%のシェア、国別で10位であった。2005年は金融分野で大型投資があり、大幅増となった。輸送機械、鉱山、鉄鋼業、食品、パルプなど資源加工型産業が多い。
昨今ブラジルに進出した日本企業としては、自動車産業が際立っている。食品産業が戦略拠点を置き、大型投資を行うなどの動きも増えている。

食料安保面で早めに注目を

大豆、鶏肉、豚肉のブラジルでの生産量はここ10年で倍増している。日本は食料安保の面からもブラジルに早めに注目しておくべきだろう。また現在、日本企業はアジアで手一杯であり、中南米にまでは進出しかねているようだが、今のうちから下地を作っておく必要があろう。
新たなビジネスとしては、CDM(クリーン開発メカニズム)をはじめとする環境関連、食品資源関連、中間財関連などがある。

最近になって日本企業のブラジルに対する関心が高まってきた背景には、両国首脳の相互訪問の影響も大きい。
2004年9月に小泉純一郎首相が訪伯して以降、2005年5月のルーラ大統領の訪日を経て、昨年秋以降、日本からのビジネスパーソンの訪伯が後を絶たない。

CNI(ブラジル工業連盟)は昨年のルーラ大統領訪日の際、「ジャパン・イニシアティブ(対日経済関係促進策)」を発表しているが、日本・メルコスールEPAを視野に入れながら、日本側でも何らかの提案を返すべきであろう。
また、昨年5月の合同経済委員会で、日本からブラジルにミッションを出すことも話題になっており、次回の経済合同委員会を早めにブラジルで開催してほしいと考えている。これらが実現されれば、日伯経済関係は一層緊密化するだろう。2008年は日本移民100周年に当たる。日伯交流拡大に向け日本側の積極的な取り組みが期待される。

今年10月に大統領選挙があるが、政権が変わってもブラジルの経済運営に大きな変更はないとの見方が一般的である。

【国際協力本部中南米・中東・アフリカ担当】
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