日本経団連タイムス No.2806 (2006年3月23日)

OECD首脳と税制改革の動向で議論

−ジョンストン事務総長らを招きセミナー開催


日本経団連OECD諮問委員会(本田敬吉委員長)は14日、東京・大手町の経団連会館にドナルド・ジョンストンOECD事務総長ほかOECD首脳らを招き、「OECD諸国の税制改革の動向に関するセミナー」を開催した。今回のセミナーは、OECDとBIAC(日本経団連はじめOECD加盟30カ国の経済団体で構成するOECDに対する諮問機関)が、国際租税問題に関する協議を東京で行うことに併せて開催されたもので、当日は、OECD、BIACの関係者を含め、約100名が参加した。
また翌15日には、奥田碩日本経団連会長が、ジョンストン事務総長と内外情勢などをめぐり懇談した。

14日のセミナーでは、冒頭、本田委員長が、「日本がOECDに加入した1964年の前年の63年から、日本の経済界は、BIACの活動に参加してきた。OECD/BIACの活動を通じて、マクロ経済政策や、税制、貿易・投資政策、規制改革環境政策、コーポレート・ガバナンスなど、ビジネスに直結する分野で、情報を収集するとともに、国際的なスタンダードづくりに役立ててきた」と述べた。

ジョンストン事務総長が今後の活動の課題を提示

ジョンストン事務総長は、今後のOECD活動の重点課題として、(1)国境をまたがるビジネス活動を円滑化するため、各国の税や法制度に関するガイドライン、モデル条約を示すこと(2)OECDの非加盟国、特に中国、ロシア、インドなど新興市場の政府に対し、マクロ経済や法制度の審査を行い、政策を助言すること。これにより、そうした市場のビジネス環境の改善につなげること(3)医療保険、教育など加盟国の政策・制度を比較し、ベスト・プラクティスを示すことで、他の国の政策の参考に資すること(4)バイオテクノロジーや、ナノテクノロジー、宇宙の商業利用など先端分野で、各国の取り組みを調査・研究し、紹介すること――の4つを挙げた。

続いて、ジェフリー・オーエンス租税局長が、「国際的視点から見た日本の税制改革」について講演した。
オーエンス局長は、まず、日本の個人、法人の所得税率は、OECD諸国の中で高位にあるのに対し、消費税率は、低位にあるとした上で、今後、財政収支の改善のためには、支出の削減とともに、直間比率の見直しを伴う税制体系の改革による収入増が重要と指摘した。そして、OECD各国の税制改革の方向として、公正の確保、効率化、簡素化の3つの共通性を挙げた。すなわち、公正とは、同等の条件にある納税者に同等の負担を課すこと、効率化とは、財政状況に柔軟に対応できること、簡素化とは、納税コストや徴収にかかる行政コストの削減を図ることである。最後に、各国がそうした改革を成し遂げるための条件として、(1)まず、国民の支持の高い政治的なリーダーが存在すること(2)改革の原則について明確な方向を提示すること(3)改革による利益と痛みのバランスのとれたパッケージとすること(4)税制改革と行政改革を同時並行して進めること(5)政策の発表後、できるだけ短期間に実施すること(6)移行措置を確保すること(7)国民の理解を得るための広報、教育に努めること――の7点を強調した。

日本経団連OECD諮問委員会では、今後とも経済界の関心の高いさまざまなテーマを選んで、OECD関係者との意見交換を充実していくことにしている。

【国際経済本部貿易投資担当】
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