日本経団連タイムス No.2807 (2006年3月30日)

改正労災保険法

−労災保険の通勤災害/保護制度の対象拡大


4月1日から、複数就業者の事業場間の移動中の災害と、単身赴任者の赴任先住居・帰省先住居間の移動中の災害が、通勤災害として労災保険給付の対象になる。
改正のポイントは次のとおり。

(1)複数就業者の事業場間移動

現行制度では、住居から第一の事業場への移動中の災害と、第二の事業場から住居への移動中の災害については、通勤災害として労災保険給付の対象とされている。今回の改正では、これまで保護の対象となっていなかった「第一の事業場から第二の事業場」への移動中の災害を新たに保護の対象に加えた。
ただし、複数就業者の事業場間移動については、第二の事業場における労務を提供するための移動であることから、第二の事業場の保険関係で処理する。
なお、複数就業者の労災保険給付基礎日額の算定方法(業務災害の場合と通勤災害の場合とを問わず、複数の事業場から支払われた賃金を合算した額を算定基礎とするか否か)については、賃金の実態を調査し、早期に結論を得ることとされているが(2005年10月25日、参議院厚生労働委員会附帯決議)、まだ結論は出ていないため、現行制度どおり合算しない方式で実務上処理することとなる。

(2)単身赴任者の住居間移動

現行制度では、単身赴任者の赴任先住居と就業の場所との間の移動中の災害と、帰省先住居と就業の場所との間の移動中の災害については、通勤災害として労災保険給付の対象とされている。今回の改正では、これまで保護の対象となっていなかった「赴任先住居・帰省先住居間」の移動中の災害を新たに保護の対象に加えた。
新たに保護される住居間移動の要件については厚生労働省令で定めている。主なケースは次のとおり。

なお、日本経団連は、人事労務管理委員会を開催して、審議会使用者側委員と連携しながら対応し、今回の改正案を了承した。ただし、複数就業者の労災保険給付基礎日額算定における複数事業場の賃金合算については、慎重に検討するべきであると主張している。

【労働法制本部安全・衛生担当】
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