日本経団連タイムス No.2809 (2006年4月13日)

資源・エネルギー対策委員会を開催

−立岡・資源エネルギー庁総合政策課長とエネルギー戦略で意見交換


日本経団連は3月28日、東京・大手町の経団連会館で、資源・エネルギー対策委員会(秋元勇巳委員長)を開催した。今回は資源エネルギー庁の立岡恒良総合政策課長が、現在、検討段階にあるエネルギー戦略について「新・国家エネルギー戦略の中間とりまとめ」と題し講演。その後、出席者との意見交換を行った。
立岡課長の講演概要は次のとおり。

1.国際エネルギー情勢に対する認識

国際エネルギー市場は、石油ショック以降の推移と今後30年間の展望を踏まえれば、大きな構造転換期にある。
米国、欧州をはじめとする世界各国においては、エネルギー問題を国家戦略に直結する課題ととらえ、資源制約あるいは環境制約を前提に中長期的な資源確保戦略を再構築する動きが活発化している。
日本においても、エネルギー安全保障を軸とする新たな国家エネルギー戦略の構築が国益上、不可欠となっている。

2、新・国家エネルギー戦略の構築

(1)戦略の実現によってめざす目標

「新・国家エネルギー戦略」がめざす目標は、(1)国民に信頼されるエネルギー安全保障の確立(2)エネルギー問題と環境問題の一体的解決による持続可能な成長基盤の確立(3)アジア・世界のエネルギー需給問題克服への積極的貢献――の3つである。

(2)戦略策定にあたっての基本的視点と戦略項目

目標達成のための基本的視点と現時点で考えられる個別戦略は次の3つである。

  1. 省エネルギー対策を徹底して推進するとともに、石油依存度の低減と原子力政策の着実な推進によって、国内のエネルギー需給構造を集中的かつ加速度的に改革する。
  2. 産油・産ガス国との多面的な関係強化による石油・天然ガスの安定供給の確保、アジア諸国へのエネルギー協力等を通じて、エネルギー市場に限らず、幅広い協調関係を作り、わが国自身の手により、世界的なエネルギー危機の発生を食い止める能力を高める。
  3. わが国の石油備蓄等の緊急時体制は、石油依存度が8割に近かった時代に設計されたものであり、改めて、エネルギー源全体の特性を踏まえた緊急時体制を構築する。

(3)数値目標の設定

官民が共有すべき長期的な方向性として、2030年時点における数値目標に、(1)エネルギー効率をさらに30%改善する(2)石油依存度を40%以下に低減する(3)特に、運輸部門の石油依存度を80%程度に低減する(4)原子力発電の比率を30〜40%程度、もしくはそれ以上に引き上げる(5)海外での資源開発比率を輸入量の40%程度に引き上げる――の5つを設定する。

(4)戦略実施に際しての留意事項

戦略の実施にあたっては、(1)中長期にわたる軸のぶれない取り組みとそのための明確な数値目標の設定(2)世界をリードする技術力によるブレークスルー(3)官民の戦略的連携と政府一丸となった体制の強化――の3点に十分留意する必要がある。

◇ ◇ ◇

今後同委員会では、5月を目途にエネルギー安全保障を中心とする新たなエネルギー戦略に係る提言の取りまとめに向け、さらに議論を深めていく予定である。

【環境・技術本部エネルギー担当】
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