日本経団連タイムス No.2810 (2006年4月20日)

エンターテインメント・コンテンツ関係者の戦略的コラボレーションに向けた提言を発表

−新たなビジネスモデル構築へ


日本経団連は18日、「エンターテインメント・コンテンツ関係者の戦略的コラボレーションに向けて〜ユビキタス時代の新たなビジネスモデル構築に向けた提言」と題する提言を発表した。
メディア端末の技術革新や、ネットワーク化・ブロードバンド化、マルチユース市場の拡大など、コンテンツをめぐるビジネス環境は急激に変化しており、こうした変化を捉え、ソフト、ハード、通信キャリア等の幅広い関係者が戦略的に協働し、ユーザーの利便と権利者の保護のバランスをとりつつ、WIN―WINを生む新たなビジネスモデルを構築することが極めて重要となっている。
こうした関係者の連携の必要性はたびたび指摘されてきたものの、その機会は乏しく、2004年8月に産業問題委員会(岡村正委員長)の下に、ソフト、ハード、通信キャリアのトップによる懇談会を設置し、新たなビジネスモデル構築に向けた課題や連携のあり方を検討してきた。
提言ではまず、コンテンツをめぐる幅広い関係者が共に繁栄できる基盤づくりが不可欠とし、法制度や流通プラットフォームがその中核となることを指摘している。

◇法制度の整備

法制度については、第1に「放送と通信の垣根の整理」として、放送や通信をめぐる法制度、行政組織、競争政策等について、IP時代にふさわしいものに改めることを求めている。その上で当面の課題として、IPマルチキャスト放送の著作権法上の位置づけを明確にすべきと提言している。
第2に、「著作権法の見直し」については、デジタル化やネットワーク化により、現行制度が想定していないコンテンツの利用形態もでてきており、諸外国のモデルとなり得る新たな著作権法体系の構築に向け、国民的議論を推進すべきとしている。

◇流通プラットフォームの整備

流通プラットフォームの整備については、デ・ジュール型として制度による標準化が有用なものと、デ・ファクト型の標準化を待つべきものとを明確にし、デ・ジュール型については、国際標準化も意識しつつ、幅広い関係者によるオープンな議論を行い、デ・ファクト型については、公正な競争環境を確保しつつ、民間の自由競争に委ねるべきと提言した。

日本発のビジネスモデル構築に向けた協力のあり方示す

こうした取り組みと同時に、ビジネスの飛躍的拡大につながる日本発のビジネスモデルを国内外で展開すべく協働することが重要とし、そのために第1に、「ユーザーのニーズに合わせた市場の拡大」を挙げ、ICT技術等の活用により多様なニーズにきめ細かく対応することや、教育・福祉などコンテンツとシナジーを発揮するような新市場を開拓することを提案している。
第2に、「国際展開に向けた協力」については、国際展開を経営戦略に明確に位置づけ、戦略的に重要な地域で、ソフトとハードが連携して事業を展開すべく、政府が支援することの必要性も指摘している。
第3に、「ソフト、ハード、キャリアの調整」については、ビジネスモデルの成功要因として、(1)コーディネーターの必要性(2)相互理解の必要性(3)関係者がWIN―WINとなる仕組みの構築の必要性――の3点を掲げた。

最後に「新たなパラダイムへの対応」として、アメリカからSNS(*)やブログなど新たなサービスが生まれる中、こうした動きを日本なりに吸収し応用するとともに、科学技術立国たる日本が誇る最先端の技術や研究を活用し、パラダイムシフトを起こす日本発のビジネスモデルを構築することが中期的に重要と指摘している。

(*)SNS=ソーシャルネットワーキングサイトの略。参加者が互いに友人を紹介しあって、新たな友人関係を広げることを目的に開設されたコミュニティ型のWebサービスなどを指す。

【産業本部産業基盤担当】
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