日本経団連タイムス No.2812 (2006年5月11日)

自由民主党と政策を語る会開催


日本経団連(奥田碩会長)は4月26日、東京・大手町の経団連会館で自由民主党と政策を語る会を開催した。自由民主党からは来賓として中川秀直政務調査会長、甘利明政務調査会長代理、丹羽雄哉社会保障制度調査会長、伊吹文明税制調査会小委員長が出席。日本経団連からは、奥田会長、御手洗冨士夫副会長、柴田昌治副会長、宮原賢次副会長、庄山悦彦副会長、張富士夫副会長、前田又兵衞政経行動委員長、会員企業幹部ら約350名が参加した。

奥田会長、「構造改革加速」を強調

開会あいさつで奥田会長は、「最近の日本経済は明るい展望が開けてきた」と指摘。その理由として小泉構造改革の推進と企業の経営革新があいまって、日本再生への行程が明確になってきたことを挙げた。同時に、構造改革は道半ばであり、後戻りは決して許されないことを強調、「地球規模での競争が激しさを増す中で本格的な人口減少社会を迎える日本においては、政治と経済が車の両輪となって、構造改革を加速させることがますます重要になる」との考えを示した。

中川政調会長、歳出入一体改革へ決意

続いて中川政調会長が基調講演を行い、構造改革路線加速の重要性に言及。「今まで以上の覚悟と決心をもって構造改革に取り組む。とりわけ大増税を回避するための歳出歳入一体改革、同時に経済の新しい潮目の変化を活かす成長戦略に合わせた経済財政一体改革に取り組んでいきたい」との決意を語った。また、中川政調会長は、「1%成長しかできないと思っていると2〜3%の成長のチャンスを見逃してしまう」とし、成長率の押し上げに向けた決意を語った。
アジア諸国などとの経済連携協定(EPA)については、海外市場の拡大を日本経済の発展にプラスするために重要であるにもかかわらず、日本は大きく遅れたとした上で、「政府・与党として、さらに取り組みを強化する」「日本が中国や韓国とEPAを締結していないということは考えられない。日中・日韓のEPAを積極的に推進する」と述べた。
日中関係について中川政調会長は、競争と協調、摩擦と協力の並存が重要であると述べ、(1)日中の研究者が今の相手国の実情を客観的に分析し、メディアが客観的に報道する(2)靖国問題のような政治案件は党間で処理し、軍の相互訪問などの政府間は実務協力を重ねる――こと等が必要であると発言した。

丹羽社会保障制度調査会長は、最近の年金制度、医療保険制度、介護保険制度の改革について紹介。これらの改革が少子化・高齢化社会の進行に対応して、社会保障費負担の増嵩度合いを抑制し、制度の維持をめざしたものであることを説明した。また、国際競争力を確保するために、社会保障負担水準の引き下げの必要性を指摘しつつも、「独仏に比べ日本は低い水準にある」「社会保障制度は良質な勤労者を確保する観点からスタートした制度である」とし、理解を求めた伊吹税制調査会小委員長は、歳出カット、遊休資産などの処分、ならびに自然増収の後に、はじめて増税や新税創設を考えるべきであると指摘。加えて、その際にも、公平性や企業の国際競争力への影響などの点にも、十分配慮しなければならないと述べた。また、2007年度の消費税引き上げについては、事務的に不可能であるとの見解を示した。

科学技術・通商政策などめぐり意見交換

これに対し日本経団連側はまず、張副会長が、歳出歳入一体改革のあり方についての日本経団連の考え方に関して発言。改革がめざすべき社会を「競争力ある製造業と高品質のサービス業が連携し、生産性を高める活力ある経済社会」と規定した上で、改革の進め方については、持続可能な社会保障制度の確立を図るとともに、徹底的な歳出削減を通じたプライマリーバランスの黒字化をめざし、その進捗状況を見極めながら歳入面の見直しを行うべきとの考え方を示した。また、歳入の中心となる税については、経済活動の拡大を図ることが安定的税収の確保につながることから、産業の国際競争力強化に資する法人実効税率の引き下げや減価償却制度の抜本的見直しを是非とも実現してほしいと要請した。さらに、今後の高齢社会を考えると消費税を重視せざるを得ないと述べ、「まず徹底した行政改革・歳出削減の姿を示し、その上で経済情勢を見極めながら、消費税を段階的に引き上げることが望ましい」とした。

続いて庄山副会長が科学技術政策について発言。この中で庄山副会長は、「資源が乏しい日本においては、科学技術こそが生命線」と述べ、第3期科学技術基本計画においては、これまでの投資をイノベーションに結びつけ、国民の目に見える形で還元すべきだとの考えを示した。その上で、そのためには基本計画の重点推進分野などの課題にきちんと取り組むとともに、PDCA(計画、実行、評価、改善)サイクルによるフォローアップが必要との考えを示した。また庄山副会長は、人材育成の重要性についても言及した。

通商政策について発言した宮原副会長は、WTO新ラウンド交渉の難航に憂慮を表明。自民党に対し「真に守るべきは守り、譲るべきは譲り、攻め取れるべきはきっちり攻め取るという戦略の下、議員外交を一層活発に展開」してほしいと要請した。また、年内の交渉妥結のためには、加盟各国が歩み寄り、国内的には厳しい決断を行うことが不可欠であると述べ、与党が一体となって、加盟国間の調整にリーダーシップを発揮してほしいと述べた。さらに宮原副会長は日本経団連が、WTOの交渉推進と合わせて、重要な諸国との間のEPA(経済連携協定)やFTA(自由貿易協定)の早急な締結推進を強化していくことが重要と考えていることを強調。資源エネルギー安全確保の必要からも、東アジア主要資源国とのEPA、FTA締結を早期に、積極的に推進すべきとの考えを示した。加えて、WTO、EPA、FTA推進のためにも、外国人受け入れ体制の整備や農業構造改革を着実に進めていく必要があるとした。

これを受けて甘利政調会長代理は、(1)国際競争力強化に資する政策としてIT減税を実施していく(2)科学技術創造立国・知財立国を推進するには、人材の交流や技術協力などの面で、産学連携の度合いを高めていく必要がある(3)WTOやEPAの重要性については十分認識しており、党としても体制を整備している――と述べた。また、中川政調会長は、(1)「知識経済」の重要性が増してくる中で、人的資本の充実のために重点投資をしていく必要がある(2)政府の基礎研究の投資が経済成長に結びつくよう、世界に先んじて制度改革を実現しなくてはならない――などと発言した。伊吹税制調査会小委員長は、(1)法人税については、さまざまな租税特別措置との兼ね合いで実効税率を考えていく必要がある(2)消費税見直しは、日本の税体系全体を見直すことになり、まさに民意を問うことにつながるので、慎重な準備が必要だ――と語った。

最後に御手洗副会長があいさつし、「成長力を高めていくため、さまざまな分野で引き続き改革を断行していかなければならない。今後もより的確で先見性ある政策を企画し、スピーディーに実行してほしい」と自民党への期待を述べた。

【社会本部政治担当】
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