日本経団連タイムス No.2814 (2006年5月25日)

「アジアにおける日米協力」セミナー開く

−マンスフィールド財団と共催


日本経団連は4月14日、モーリーン・アンド・マイク・マンスフィールド財団との共催で、「アジアにおける日米協力」と題するセミナーを開催した。同セミナーには、現在マンスフィールド財団の理事長を務めるトーマス・S・フォーリー元駐日大使やウォルター・F・モンデール元駐日米国大使(元米国副大統領)のほか、日米の学識経験者らがパネリストとして登壇。日米関係が今後、アジア地域の安定と発展にどのような影響を与え、いかなる役割を果たすことができるかについて意見を交換した。

セミナー冒頭、あいさつに立った張富士夫日本経団連副会長は、日本経済の持続的な成長を維持していくためには、成長著しいアジア地域の政治的安定と、自由で円滑な貿易に立脚した地域全体としての経済発展が不可欠と強調。その上で、アジア地域において大きな役割を担う日米両国の経済関係は重要と指摘するとともに、同セミナーを通じて、両国の関係が一層発展することに期待感を示した。

第1部では、「日米関係の展望」として、フォーリー氏やモンデール氏、斉藤邦彦・民間外交推進協会理事長が意見交換。これまでの日米関係を振り返り、1980年代の2国間の貿易紛争後、アメリカでの日本企業の現地化による雇用回復や安全保障関係の強化などを背景に、現在日米の経済関係はとても安定した良い状態にあるとの見解や、日本は同盟国として、アメリカのイメージが国際社会で傷つくような事態に対し、毅然として忠告するような役割を負うべきであるとの意見が述べられた。また、アジアの自由経済圏構想に関しては、アメリカも含めた構想を考えるべきとの指摘がなされた。

第2部の「アジアにおける日米同盟〜地域的課題」では、L・ディセイ・アンダーソン同財団理事やバートン・レビン同財団理事、森本敏・拓殖大学海外事業研究所長らが、台頭する中国の政治的、経済的課題やアジア地域の安定の鍵を握る北朝鮮の動向、核に関するインドやイランの方向性について発言した。

第3部では、「日米経済関係と東アジア経済共同体」に関して、田中直毅・21世紀政策研究所理事長や大川三千男日本経団連アジア・大洋州地域委員会企画部会長、チャールズ・D・レイク・同財団理事、ウィリアム・T・ブリア同財団理事が議論した。大川部会長は、アジアを中心とした日本が構築すべき新しい経済枠組みの展望を紹介。主要国間で自由かつ円滑にモノ、サービス、ヒト、カネ、情報が移動できる制度基盤を整備することが不可欠と述べ、日本経団連としてもWTOの枠組みを通じた多角的通商体制の維持、強化に努めることや、東アジア諸国との間で包括的でレベルの高いEPAを締結し、相互の経済関係を強化していきたいとの考えを披露した。

また、日米経済関係の強化に鑑み、日米FTAの交渉開始の重要性に触れたほか、東アジア共同体とアメリカとの関係などに関し、意見交換が行われた。

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