日本経団連タイムス No.2818 (2006年6月22日)

「わが国の宇宙開発利用推進に向けた提言」発表

−「宇宙基本法」策定など求める


日本経団連は20日、「わが国の宇宙開発利用推進に向けた提言」を発表した。同提言では、宇宙開発利用は、(1)通信・放送・観測・測位など国民の重要な社会インフラを形成する(2)安全保障、防災、環境保全など国民の安全・安心にも大きく貢献する(3)宇宙産業による最先端の技術開発は他の産業への高い波及効果をもつ――ことなどから、宇宙開発利用を重要な国家戦略として位置付け推進すべきとしている。いまや、欧米だけでなく、ロシア、中国、韓国、インドといった国々でも宇宙開発利用については、国が主導的に進めている。
提言では、こうした宇宙開発利用の意義を示すとともに、自民党の宇宙開発特別委員会による宇宙の法制・体制整備のための宇宙基本法策定の検討、政府の第3期科学技術基本計画において選定された国家基幹技術の具現化の動きを踏まえ、産業化に向けて大きな転換点に差しかかった、わが国の宇宙開発利用について、産業界の考え方をまとめている。

指摘の第1は、「法制・体制の整備と宇宙基本法の策定」である。高性能・高信頼性を確保し、いつでも顧客のニーズに応じて打ち上げができる自律性・自在性をもった衛星・ロケットの開発や、毎年、一定の公的受注の確保などによる宇宙産業の国際競争力強化のため、また宇宙の平和利用原則の解釈を「非軍事」から「非侵略」に見直し、国際的スタンダードに合わせることによる宇宙の安全保障への活用のため、「宇宙基本法」を策定することを求めている。

第2は、「宇宙開発利用予算の拡充と利用の拡大」である。国の宇宙予算は2500億円と、ピーク時の3000億円に対して大幅に減少しており、宇宙産業は大きな打撃を受けている。宇宙産業の健全性が損なわれれば、結局、国の技術基盤も損なわれることになる。技術基盤の維持、ユーザーの視点に立った開発と開発成果の有効利用のため、適正予算の確保が必要である。

第3は、「官民連携による宇宙開発利用の推進」である。今年度から開始されたH―IIAロケットの民営化、日本版GPSである準天頂衛星や中型宇宙輸送システムであるGXロケットの開発など、宇宙開発利用における官民連携が進みつつある。その際、巨額な資金を必要とし、最先端の技術開発をめざす宇宙プロジェクトは、リスクが高く、国家・国策事業とするのが基本である。官民連携の場合でも、民間のリスク負担には限界があり、まず官が開発、実証を行い、その成果を踏まえて、産業化に向けて、民が利用、事業化を進めることが重要である。

第4は、「国家基幹技術の具現化」である。「第3期科学技術基本計画」において、5つ選定された国家基幹技術の中で、2つが宇宙関係となった。具体的には、「海洋地球観測探査システム(衛星系)」と「宇宙輸送システム(輸送系)」が取り上げられた。こうしたシステムを構築する災害監視衛星や地球観測衛星、基幹ロケットの開発などのプロジェクトを円滑に進め、宇宙インフラの整備と有効利用を図ることが重要である。

【産業第二本部技術担当】
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