日本経団連タイムス No.2820 (2006年7月6日)

報告書「主体的なキャリア形成の必要性と支援のあり方」を発表

−人材育成支援策など提起


日本経団連は6月20日、報告書「主体的なキャリア形成の必要性と支援のあり方〜組織と個人の視点のマッチング〜」を発表した。同報告書は、教育問題委員会(草刈隆郎委員長、蛭田史郎共同委員長)の下部組織の「キャリア形成支援のあり方に関する研究会」(牧田和久座長)が、時代の変化に対応したキャリア形成支援、人材育成支援策のあり方について検討し、取りまとめたもの。
同報告書の概要は次のとおり。

■主体的なキャリア形成を支援

わが国の企業は、グローバル化やICT(情報通信技術)の進展といった環境の変化に加え、雇用・就労形態の多様化、働く人たちの価値観の変化にも直面している。こうした状況の中、厳しい企業競争を勝ち抜いていくためには、自ら主体的に考え行動できる「自律型人材」が強く求められている。
また、社会・経済の急速な発展に伴って、企業が必要とする能力は年々変化しており、変化に対応し得るキャリア形成の重要性が高まっている。
従って、今後企業がめざすべき方向として、従来の企業主導の「一律的なキャリア形成」から、個人に焦点を当てた「主体的なキャリア形成」支援の仕組みへと転換していく必要がある。
企業としては、従業員に自律を促していく中で、それぞれの能力や適性、意思と意欲に応じた自己選択型のメニューを策定するなど、多様な教育訓練の機会を提供し、キャリア形成支援を積極的に進める姿勢が欠かせない。

■変革・チャレンジ志向への意識改革

激変期にあっては、過去の前例やノウハウを踏襲した仕事のやり方、安定志向的な考え方では、企業も従業員個々人も生き残っていくことが難しい。安定志向から脱却し、個々人自らが向上、変革していく気概を持つ、意識改革に溢れた社内風土や職場づくりが重要になる。
一方、従業員には創造性を発揮し、自ら課題を発見し解決する能力、国際社会に通用する幅広い教養と語学力など、「人材力の向上」が強く求められる。
大切なことは、環境の変化に対応する柔軟性とチャレンジ精神を培うとともに、問題の本質をつかんだ上で、迅速に行動し、価値創造、事業革新を図ることである。

■人材育成における4つのキーワード

企業にとっては、長期的な視点に立って人材力の質的水準の向上を図るとともに、従業員が自らの成長を実感し、その企業で雇用されることに誇りと喜びを感じるような組織・風土づくりをめざすことにより、さらなる発展につなげていくことが、ますます重要になっている。
その際、キーワードとして次の4つが挙げられる。

  1. 「組織と個人の視点のマッチング」
  2. 企業の経営方針やビジョンを明確にして、従業員にその趣旨を浸透させていく「トップの強いリーダーシップ」
  3. トップと自律型人材との接点となる管理職層、および各階層における「変革型リーダーの育成・活用」
  4. 働く人々の価値観や就労観の多様化に対応するため、新たな「職場の和・チームワークのあり方を再構築」
【労政第一本部雇用管理担当】
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