日本経団連タイムス No.2821 (2006年7月13日)

提言「物流インフラの整備について」を公表

−ボトルネックの解消へ/物流インフラ整備の考え方示す


日本経団連の運輸・流通委員会(岡部正彦共同委員長、井坂榮共同委員長)は6日、提言「物流インフラの整備について〜ボトルネックの解消を通じた物流ネットワークの構築〜」を公表した。今回、同委員会が提言を行ったのは、(1)わが国産業の国際競争力強化と国民の生活利便向上の観点から、国家戦略として真に物流の効率化に役立つインフラ整備をハード、ソフト両面から進める必要がある(2)アジアにおける国際分業の進展を踏まえ、アジア規模のシームレスな物流ネットワークを戦略的に構築することが急務である(3)特に、現在、公共事業費削減の方針が打ち出されている状況の中では、より緊急度の高いものから重点的に整備していく必要がある――との認識に基づいてのこと。円滑な物流を妨げているボトルネック解消の観点から、産業界としての物流インフラ整備の考え方をまとめている。提言の概要は次のとおり。

1.道路に関するインフラについて

(1)首都圏三環状道路の早期整備

首都圏三環状道路の完成は、首都圏の渋滞解消、東西を結ぶ人的・物的交流の円滑化につながる。首都圏中央連絡自動車道については、既に開通の目標年度が明示されているが、東京外郭環状道路、首都高速中央環状線についても、可能な限り前倒しで完成をめざすべきである。

(2)港湾・空港への道路アクセス改善

港湾・空港から内陸の主要物流拠点への輸送の円滑化という観点から、港湾・空港の背後にある道路網を充実させるとともに、幹線道路におけるボトルネックを解消し、物流ネットワークの整備を推進すべきである。
国際海上コンテナ車両やモーダルシフト対応車両が通行できる幹線道路を整備すべきである。

2.港湾に関するインフラについて

(1)港湾機能の高度化・効率化

  1. 港湾コスト低減、リードタイム短縮を目的とし、スーパー中枢港湾プロジェクトが推進されている。船舶の大型化に対応した大水深コンテナバースの整備や必要な航路水深の確保を行うとともに、コンテナターミナル背後のヤードの拡充や複数バースの連続的・一体的運用によりコンテナターミナルの取り扱い能力を向上させることが必要である。
  2. アジア地域とのスピーディーでシームレスな物流を図るため、国際コンテナ、フェリー、RORO船ターミナルの整備・改良、コンテナターミナルの背後ヤードの拡充など、わが国側のゲートウェイとしてのターミナル機能の高度化を図る必要がある。特に今後、経済交流の活性化が見込まれる日本海側の港湾の整備も推進すべきである。
  3. 港湾のコンテナヤードに鉄道線路を引き込んで、海上輸送から鉄道へのコンテナの積み替えを円滑化し、コンテナの大型化に対応した大型荷役機械を整備するなど、結節点における物流効率化に資する施設整備を推進すべきである。
  4. サプライチェーン強化の観点から、コンテナターミナルの背後に在庫管理、流通加工、クロスドック機能などといった高度の物流サービスを提供できるロジスティクスセンターを立地させることで、港湾周辺の機能を多面的にする必要がある。
  5. わが国の主要拠点港湾がアジアの主要港に遜色のないコストで24時間サービスを提供できるよう、コンテナヤードのゲートオープン時間の延長、税関、検疫所等の執務時間外の体制整備などを推進すべきである。

(2)輸出入・港湾諸手続きの効率化

  1. 港湾EDI(船舶の入出港に係る手続きの電子情報処理システム)やNACCS(通関情報処理システム)などのシステムを単に府省ポータルへ接続するだけでは、真のワンストップサービスは実現できない。原則、1カ所への1回の送信ですべての貿易関連手続きを完了できるよう、求められる各手続き項目の必要性を各省庁が総合的に検証し、輸出入制度を徹底的に業務改革することを前提に、システム機能の統合を行うべきである。
  2. 民間企業の法令順守を含め貿易関連業務管理の優劣に応じて手続きの簡素化を図る制度を設け、物流のセキュリティー強化と効率化の同時達成をめざすべきである。その際、電子タグなどのIT技術を活用した国際海上コンテナの管理・輸送システムを官民共同で構築すべきである。

3.航空に関するインフラについて

増大する航空需要に確実に対応し、空港機能や航空企業等の応需能力を向上させ、利用者の利便性を図ることが重要である。「総合物流施策大綱(2005―2009)」の記載項目について、ハード・ソフト両面での環境整備を着実に実施するとともに、実現可能なものは早期に実現すべきである。特に羽田空港・成田空港は国の基幹的インフラであり、その整備は焦眉の急である。

4.鉄道に関するインフラについて

鉄道による物流については、輸送力の強化とともに、トータルの輸送時間を短縮することが重要である。主要幹線区間の輸送力増強を図るとともに、E&S(着発線荷役)方式の貨物駅を増やす必要がある。特に設備等が老朽化するなどE&S化には不向きな駅については、新たな拠点駅の整備も検討する必要がある。

5.物流インフラ更新の促進に向けて

高速道路・港湾・空港・鉄道などの物流インフラは、昭和30〜40年代に整備されたものが多く、今後、大規模改修・更新が増えてくる。メンテナンスを強化し、延命化を図るなどの工夫により、既存ストックの計画的、効率的な整備計画を策定し、更新・維持・修繕に必要な財源を確保すべきである。

【産業第一本部国土担当】
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