日本経団連タイムス No.2823 (2006年7月27日)

日本ロシア経済委員会06年度定時総会を開催

−最近のロシア情勢と日ロ関係の展望/ロシュコフ駐日大使の講演聴取


日本経団連の日本ロシア経済委員会(安西邦夫委員長)は11日、東京・大手町の経団連会館で2006年度総会を開催した。総会では、05年度事業報告・収支決算、06年度事業計画・収支予算等が承認されたほか、ロシュコフ駐日ロシア連邦特命全権大使から、最近のロシア情勢と日ロ関係の展望について話を聴いた。

■ロシア経済の現状と展望

ロシュコフ大使は、ロシア経済の現状について、05年の経済成長率は6.4%と高い水準を保っていると説明。昨今のエネルギー価格の上昇が経済成長に寄与しているのは事実だが、これを差し引いても、ロシア経済は非常に安定しているとの見方を示した。また、ロシアへの海外直接投資も、04年の121億ドルから、05年には167億ドル超と着実に伸びており、ロシアの投資環境改善を客観的に示すものであると述べた。
ロシュコフ大使は、ロシア経済は全体として、ダイナミックかつ安定的に発展しているが、一方で、(1)国内工業生産の伸びが十分でない(2)インフレ率が高い(3)経済構造改革の進展が遅い――などの課題を抱えていると指摘。その解決には、政府による一層の改革が必要であるとの考えを示した。
さらに、ロシアにおいて官民パートナーシップを発展させるための重要なツールとなるのは、投資基金であると指摘。同基金は医療、社会保障、住宅建設などの、特に重要な国家規模のインフラプロジェクトに民間資本を誘致することを目的としていると説明した。

■日ロ貿易経済関係

ロシュコフ大使は、日本との関係強化は、プーチン大統領も明言しているように、アジア外交における優先課題であると指摘した上で、この1年半、ロシアと日本は、特に経済分野で大きな成果を達成してきたと説明。多くの分野で、実質的協力のための良い雰囲気が構築できたとの認識を示した。
日ロ貿易については、05年には過去最高を記録したが、今年は120億ドルを超えるとの見方を示した。また、05年の日本からロシアへの投資は1億6520万ドルで、他の先進諸国と比べると低いが、この数字は投資の実態を完全に反映していないと指摘。日本の対ロビジネスの特質として、欧米経由で行われるケースがあり、サハリンプロジェクトへの投資だけでも45〜50億ドルとなると述べ、こうした点を考慮すれば、欧米諸国と十分比較し得る規模になると述べた。

また、エネルギー分野の協力について、現在、東シベリアの石油ガス鉱床の探査・開発への日本資本の参加について交渉が行われているが、東シベリア太平洋パイプラインプロジェクトに日本が参加することになれば、二国間協力の最大案件の1つとなり得るとの期待を示した。さらに、サハ共和国の石炭生産プロジェクト協議をはじめ、多くの日本企業が、同様のプロジェクトへの参加を表明していると説明。また、自動車やロジスティクス、建設、コンサルティングなどのほか、メガバンクもロシアに進出しており、その他の金融業態もこれに続いてほしいとの期待を示した。
ロシュコフ大使はまた、経済問題に対する両国首脳の関心の高さは、両国経済界にとって協力強化に向けた明確なシグナルであり、国家が協力を全面的に支援することの裏付けであると指摘。今回のサミットでは、経済問題、特にエネルギー協力の問題が重要テーマの1つとなるとの見方を示した。

最後にロシュコフ大使は、今年は「第8回日本ロシア経済合同会議」のほか、12月のフラトコフ首相の訪日など、日ロ経済関係の拡大・深化に寄与する行事が多数予定されており、中でも訪日するロシア議員団は、地域の利益を代表し、具体的な経済交流の実現をめざしていると述べ、日本企業が他の国々に後れをとらないよう積極的に活動してほしいと要望した。

【国際第一本部欧州・ロシア担当】
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