日本経団連タイムス No.2824 (2006年8月3日)

グリア・OECD事務総長が来訪

−御手洗会長と懇談/OECD諮問委総会で講演も


OECDのアンヘル・グリア事務総長が7月20日、日本経団連の御手洗冨士夫会長を訪問し、懇談した。また、それに先立ち、日本経団連のOECD諮問委員会(本田敬吉委員長)の総会で講演した。グリア氏は、今年6月にOECD事務総長に就任して以来、初の日本経団連訪問となる。
御手洗会長との懇談の中でグリア事務総長は、「世界経済をよりよく機能させるために、加盟国だけでなく非加盟国に対してもアプローチしている」と説明。OECDの今後の活動として、公務員の腐敗防止や模倣品・海賊版対策に言及。また、経済発展のためのイノベーションの推進に当たって知的財産権保護の重要性を強調した。

OECDの活動説明

OECD諮問委員会総会においては、「OECDの使命は、市場をより開放するとともに、事業活動にとって公平な競争条件と健全かつ透明な規制体系を構築することにある」と述べた上で、最近のOECDの活動について説明した。
グリア事務総長の説明の概要は、次のとおり。

(1)税制

経済活動にとって税制が障壁にならないよう作業を進めてきた。現在世界では、OECDが作成したモデル租税条約に倣って2500もの条約が締結されている。また、移転価格税制のガイドラインも世界中で広範に活用されている。さらに、課税にかかわる紛争処理メカニズムの確立や二重課税の防止にも取り組んでいる。

(2)投資

資本移動の自由化コードや多国籍企業ガイドラインの策定に加え、最近では、投資環境改善のために途上国政府が実施すべき政策をまとめたPFI(Policy Framework for Investment=投資政策枠組み)というガイドラインを策定し、その順守状況をフォローしている。
最近、加盟国の一部においてさえOECDが推進してきた投資の自由化を後退させる動きがみられるが、上記ガイドライン等に盛り込まれている規範の順守を改めて徹底する必要がある。

(3)腐敗防止

外国公務員贈賄防止条約を制定し汚職の廃絶を訴えている。腐敗防止への対応は倫理やモラルの問題にとどまらず、ビジネス環境の公正性の問題としてとらえる必要がある。

(4)コーポレート・ガバナンス

OECDは1990年代に入ってコーポレート・ガバナンスの検討を開始、1999年に投資家・企業等に対する指針を提供するため「コーポレート・ガバナンス原則」を策定、2004年に改訂している。現在、多様な株主から異なる圧力がマネジメントにかかっており、必ずしも企業の利益につながらない恐れもあり、コーポレート・ガバナンスへの影響に注目している。

(5)公的部門のガバナンス

競争条件の改善、投資環境の改善、公的部門の腐敗防止にとって、より良い規制体系を構築することが重要である。

(6)模倣品・海賊版

知的財産権の使用料も払わずに製品化してしまう事例が散見される。それらに対処するために長期的な努力が開始されている。G8サミットにおいても、模倣品・海賊版に関する国際的な対応の一翼をOECDが担うことが決定された。効果的な防止策を講ずるべく作業を行う予定である。

【国際第一本部貿易投資担当】
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