日本経団連タイムス No.2824 (2006年8月3日)

中央最低賃金審議会、06年度地域別最賃額改定の目安答申


厚生労働省の中央最低賃金審議会(会長=今野浩一郎・学習院大学教授)は7月26日、2006年度の地域別最低賃金額改定の目安について、引き上げ額を「Aランク4円、Bランク4円、Cランク3円、Dランク2円」とする公益委員見解(図表)を地方最低賃金審議会に提示するとの答申を厚生労働大臣に行った。公益委員見解における今年度の目安額は、各ランク同率の引き上げ率とする考え方を踏まえつつ、ランクごとの経済実態に大きな相違があるといった特殊事情を踏まえて総合的に勘案したものとされており、各ランク同率の引き上げ率であった従来とは異なる見解となっている。

2006年度地域別最低賃金額改定の引き上げ額の目安(公益委員見解)
ランク都道府県金額
千葉、東京、神奈川、愛知、大阪4円
栃木、埼玉、富山、長野、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、広島4円
北海道、宮城、福島、茨城、群馬、新潟、石川、福井、山梨、
岐阜、奈良、和歌山、岡山、山口、香川、福岡
3円
青森、岩手、秋田、山形、鳥取、島根、徳島、愛媛、高知、
佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄
2円

使用者側、有額の目安適当でないと目安小委などで主張

目安答申に当たっては、「目安に関する小委員会」(目安小委員会)を3回開催した。審議において使用者側はまず、日本経済全体は回復しているものの、地域や企業規模などでばらつきが大きいと述べるとともに、最低賃金の影響を最も受けやすい中小・零細企業は自社の存続すら危ぶまれる厳しい経営環境にさらされており、先行きの不透明感・不安感が高まっていると指摘した。

さらに、今年の賃金交渉でベースアップを実施しなかった企業労使が大多数を占めていることに加え、目安審議の参考資料である賃金改定状況調査において、賃金改定を実施しなかった事業所の割合が5年連続して過半数を上回っていることなどを強調。その上で、使用者側としては今年度の目安は、賃金改定状況調査の賃金上昇率で最も数値の低かったDランクのゼロを考慮すべきであり、有額の目安を示すことは適当ではないと主張した。

一方、労働者側は、存在感のある最低賃金とするために、生計費・各種賃金指標の現行水準や環境変化の動向を踏まえ、2ケタ台の目安を提示すべきであり、少なくとも昨年を大幅に上回る必要があると主張した。

労使の意見の隔たりは大きく、長時間審議したが双方合意の目安を定めるには至らなかったため、目安小委員会は、都道府県を4ランク(A、B、C、D)に分け、引き上げ額を「Aランク4円、Bランク4円、Cランク3円、Dランク2円」とする公益委員見解を地方最低賃金審議会に提示するよう中央最低賃金審議会に報告することとした。

今後、目安答申を参考に、各地方最低賃金審議会が改定審議を行い、8月中にはすべての都道府県で今年度の地域別最低賃金額が決定する見込み。

◇ ◇ ◇

目安審議に当たって日本経団連は、同審議会に推薦している使用者側委員を中心に対応するとともに、労使関係委員会や、地方経営者協会の最低賃金担当者が参集する「最低賃金対策専門委員会」で、目安小委員会での使用者側委員の対応や審議の状況・結果を協議・報告した。
目安答申後には、全国の地方最低賃金審議会の使用者側委員を参集して「使用者側委員全国連絡会議」を開催、厚生労働省から目安審議の経緯や目安答申の内容などの説明を受けるとともに質疑を行った。

【労政第一本部労政担当】
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