日本経団連タイムス No.2826 (2006年8月24日)

2006年春季労使交渉・労使協議トップ・マネジメント調査

−賃金決定の個別化進む/約8割で若年層の不足感


日本経団連が23日に発表した「2006年春季労使交渉・労使協議に関するトップ・マネジメントのアンケート調査結果」 <PDF> によると、今次労使交渉・労使協議においては、(1)ベア・定昇とも実施した企業は1割に満たなかったこと(2)賞与・一時金を昨年より引き上げた企業の割合が、引き下げた企業の割合を3年連続で上回ったこと(3)正規従業員の雇用状況については、約8割の企業で若年層の不足感があること――などが明らかになった。

1.今年の賃金決定の結果

今年の賃金決定の結果(非管理職)は、「ベアは実施せず、定昇のみ実施」した企業が38.5%、今回から選択肢に加えた「ベア以外(賃金改善などの概念を含む)の措置・定昇のみ実施」が13.8%となっている。「ベア・定昇ともに実施」は昨年に続いて1割に満たない(9.7%)。

2、今後の望ましい賃金決定のあり方

「定昇のみとし、成果や業績はベアではなく賞与に反映させていくべき」とする企業(40.7%)と「定昇制度を廃止し、成果や業績による賃金決定とすべき」とする企業(34.6%)を合わせて4分の3を超える企業(75.3%)が成果や業績を重視している。また、「定昇を中心として必要があれば、ベアを行うべき」とする企業は15.1%となっている。

3.今次労使交渉の結果、とられた措置

今次労使交渉の結果としてとられた措置についてみると、「定期昇給制度の見直し(一部廃止も含む)」を実施した企業は11.9%(昨年20.1%)となった。
賞与・一時金では、昨年より「引き上げた」企業は43.7%(昨年37.0%)、「引き下げた」企業は13.0%(同14.0%)で、引き上げた企業数が引き下げた企業数を一昨年、昨年に引き続いて上回った。また、「賞与・一時金の業績連動制の導入」をした企業は17.7%に上った。
そのほか、昨年回答数の多かった「退職一時金・年金制度の見直し」は15.6%、「諸手当の廃止・減額」は5.6%となり、昨年よりそれぞれ3.1ポイント、4.6ポイント減少した。

4.高齢者雇用確保措置

2006年4月1日から施行された改正高年齢者雇用安定法に伴う高年齢者雇用確保措置については、「定年以後、対象を限定した継続雇用制度を導入した(または以前より導入していた)」企業は70.3%で、「定年以後希望者全員の継続雇用制度を導入した(または以前より導入していた)」企業は27.0%となっており、継続雇用制度を導入した(または以前より導入していた)企業は全体の97.3%となっている。「定年年齢引き上げを行った」企業は2.4%、定年の定めを廃止した(または以前よりない)企業は0.4%となっている。
定年年齢引き上げ、継続雇用制度における雇用確保の制限年齢については、65歳が最も多く65.8%、次いで63歳が19.3%となり、62歳は14.8%となった。

5.今次労使交渉における雇用問題と若年者雇用について

現在、企業が直面する雇用問題についてその余剰と不足状況を尋ねたところ、「人材不足」と回答した企業が40.3%と昨年の26.3%から増加した。景気回復が雇用環境の改善に波及したと推測できる。その一方で「雇用余剰と人材不足の両面」と回答した企業が55.3%(昨年66.9%)を占めたことから、雇用のミスマッチは依然として問題となっている。規模別、製造業・非製造業別にみても、昨年と比べて「人材不足」を訴える企業は増えており、500人以上および非製造業でその傾向が特にみられる。
若年層(35歳前後以下)の正規従業員の雇用状況については、「不足」および「やや不足」と回答した企業を合計すると、78.7%の企業が若年層の不足感を認識している。
なお、フリーターの正規従業員への採用については、「積極的に採用したい」(1.6%)、「経験・能力次第では採用したい」(64.0%)を合計して、7割近くに上っており、多くの企業がフリーターからの採用を視野に入れていることがわかった。

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「春季労使交渉・労使協議に関するトップ・マネジメントのアンケート調査」は、今後の賃金対策や企業経営の参考とするために、1969年より毎年、その年の春季労使交渉についての企業トップの考え方を調査しているもの。今回の調査は、日本経団連会員企業と東京経営者協会会員会社2149社を対象に実施、560社から回答を得た(回収率26.1%)。

【労政第一本部企画担当】
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