日本経団連タイムス No.2828 (2006年9月7日)

韓国経済研究院・盧成泰院長と懇談

−韓国経済の現況と展望、盧院長が講演/韓米FTAの動向も


日本経団連(御手洗冨士夫会長)は8月24日、東京・大手町の経団連会館で韓国主要企業で構成される全国経済人連合会(全経連)のシンクタンクである韓国経済研究院の盧成泰(ノ・ソンテ)院長との懇談会を開催した。
懇談会では、江頭邦雄副会長・観光委員長があいさつした後、盧成泰院長が韓国経済の現況と展望について講演した。概要は以下のとおり。

■韓国経済の現況と展望

韓国経済の現状については、政府と民間機関で見方が全く異なっている。政府は昨年の成長率は4%で、経済は好調であると主張、一方、民間機関は非常に厳しい状況であると主張している。過去に3年連続で輸出が年平均26%増加した1986〜88年の「三低(三安)期」(三安=ウォン安、金利安、原油安)の経済成長率は、年平均12%を記録した。一方、2003〜05年の輸出は年平均21%増加しているが、経済成長率は年平均3.9%にとどまっている。三低期は内需が非常に堅固であったが、今回は、内需が冷え込んでおり、経済成長率の低迷につながっている。輸出がこれほど好調である中で、三低期とは異なり所得が大幅に増大しなかったことから、国民の間には失望感が高まっている。国内総生産(GDP)の切り口ではなく、国民総所得(GNI)から見た場合、05年の経済成長率は限りなくゼロに近くなる。政府はGDPをもとに経済は好調であると主張し、民間はGNIをもとに経済は厳しいと主張し、対立している。
05年の下半期の経済成長率は年率で6%程度であったが、その後低下し、今年の第2四半期は年率3%前後となっている。一方、輸出は引き続き好調で、今年の上半期は14%近く増加しているが、輸入が19.4%増加して輸出をはるかに上回っていることから、06年上半期の経常収支は赤字に転落した。
海外経済が引き続き好調であることから、韓国の輸出は当面好調を維持するだろう。06年の成長率はGDPを基準として4.6%と予測されており、昨年より若干高くなる見通しである。問題は、政府の不動産投機対策により、建設投資が冷え込んでいることで、政府も民間機関も5%程度の成長を予測していたが、下方修正した。また昨年、経常収支の黒字幅は、168億ドルから20億ドル程度まで減少する見込みである。

■韓米FTAの現況と展望

全経連は、米国、日本とのFTAを締結すべきであると政府に提言してきた。日韓FTA協議は、農業分野に関する立場の相違や、政治や外交の問題などの非経済的要素が浮上し、中断している。現在、これまで経済開放に消極的であった政府が米国とのFTAを積極的に進めているが、急に政策を転換した理由を国民に対して十分に説明できていない。そのため農業団体など反対勢力の動きが非常に活発化している。
韓米FTAは、いずれ締結されるというのが大方の専門家の見方である。韓米両国政府が双方の国内事情を理解し、一定の譲歩をすることで締結されるだろう。問題は国会での批准であり、野党に加え、与党にも反対する議員が多いため、難航することが予想される。批准されるとしても、その時期はかなり遅れるだろう。

【産業第一本部国土担当】
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