日本経団連タイムス No.2828 (2006年9月7日)

経済広報センター「企業広報賞」表彰式を開催

−1社・5氏が受賞/御手洗会長、企業広報の重要性を強調


日本経団連の関連組織である経済広報センター(御手洗冨士夫会長)は8月30日、東京・大手町の経団連会館で、第22回「企業広報賞」の受賞企業・受賞者に対する表彰式を開催した。企業広報大賞はダイキン工業(井上礼之・代表取締役会長兼CEO、岡野幸義・代表取締役社長兼COO)が受賞したほか、企業広報経営者賞は日東電工取締役社長CEO兼COOの竹本正道氏、東芝代表執行役社長の西田厚聰氏、ワタミ代表取締役社長・CEOの渡邉美樹氏が受賞した。また企業広報功労・奨励賞には肥銀用度センター取締役(前・肥後銀行総合企画部長代理兼IR室長兼地域文化課長)の早川満久氏、三菱商事総務部長(前・広報部長)の廣田康人氏が選ばれた。

表彰式ではまず、主催者を代表して御手洗会長があいさつ。経営者は、企業倫理の確立や企業発展のための利潤の確保、雇用の維持、地球環境保護、社会貢献などといった課題に真正面から取り組むとともに、その姿勢を率直に社会に向かって発信し、社会との会話・交流を続けていくべきであり、その意味から企業の広報活動はますます重要になってくると述べた。その上で、「(受賞企業・受賞者は)社会と企業との対話の重要性を十分認識した上で、すばらしい活動をしている方々ばかりである。これから先もぜひ、多くの企業の模範となるよう活躍してほしい」と受賞企業・受賞者に対する期待を示した。

このあと、表彰状・トロフィーの贈呈と、選考委員による講評が行われたのに続いて、受賞企業代表・受賞者があいさつし、喜びを語った。各賞受賞者のあいさつの要旨(文責記者)は下記のとおり。

各賞受賞者あいさつ(要旨)

【ダイキン工業・岡野幸義代表取締役社長兼COO】

当社では、社外との信頼関係を高めるために、企業の透明性・公開性を向上させるということに、常に重点をおいている。その時々の情勢に応じて、当社の顔や心を公開し、知らせるということを積み上げてきた地道な努力が、大賞に結び付いたと思う。経営理念というものが非常に重要であると認識しており、社内の従業員に徹底しているが、社外に対しても経営理念を積極的に開示し、それへの批判・評価を糧に、さらに高いパフォーマンス・成果に結び付けていくということを心がけている。そういう意味で、広報活動は会社にとって非常に重要な、事業戦略の柱だと思っている。会長を先頭に、経営者や従業員全員が広報担当者となり、常に企業の透明性を高めるということを意識してきた。今回の受賞を励みにお客様に新鮮な驚きと満足を提供し続ける企業でありたいと思っている。

【日東電工・竹本正道取締役社長CEO兼COO】

日東電工グループに働く従業員が、いつもわくわくして、生き生きして働いてほしいと思っている。そうすることがよい製品を生み出し、そのことが利益を生む。その利益を株主や地域や環境に還元できる。このような従業員を起点にしたスパイラルがうまく回せればよいと考えている。その意味から従業員と、年間250時間ぐらいはマン・ツー・マンでの面接を行っている。これからも自分自身で現場に立って、現場の風を感じ、それを自分のことばで直接伝えるということを続けていきたい。

【東芝・西田厚聰代表執行役社長】

経営方針や施策を従業員にあまねく浸透させるには、非常に時間がかかるが、工場や支社、支店、研究所といった現場に、時間を見つけては足を運び、従業員との対話を重ねてきた。社長に就任してからの1年2カ月の間に、おおよそ41拠点を回ったし、開催した対話会も50回を超える。現場を訪ね、現場の直面するさまざまな課題や、あらゆる問題意識を直接聞く。本社ビルにいたのではとてもわからないようなさまざまな課題も見聞でき、それが日ごろの経営判断にたいへん役立っている。対話会の中では一貫してイノベーションの必要性というものを唱えてきた。イノベーションを常態化することにより、企業の持続的な発展を実現していきたいと考えている。今後とも引き続き躍動感あふれる東芝グループを実現するために、社外とのコミュニケーションを一層積極的に推し進め、東芝の現状・ビジョン、進むべき姿を1人でも多くの人に正しく理解してもらえるように努力していきたい。

【ワタミ・渡邉美樹代表取締役社長・CEO】

「何らかの思い」を形にするのが企業の役割だと思う。その思いを社内外に伝え、外部の方には理解・応援していただき、内部においては同志の絆をより強く深めていくのが経営者にとって一番大事な仕事だと思っている。その仕事を評価してもらったということで、たいへんうれしい。社員に、「社長はいつもテレビに出ているから受賞した」といわれたが、決してテレビに出たから賞をいただいたわけではないと思っている。テレビ出演は、ワタミの思いが伝わる番組だけを選ばせてもらっている。いま介護事業に参入しているが、この事業においては、世の中・制度がどう変わろうが、必ず高齢者の方を守るという決意を新聞の1面広告で出させてもらった。広報される実態、本物が一番大事である。今回の受賞は、ワタミの思いを、社員みんなが毎日、汗を流し、形にしてくれているおかげだと考えている。

【肥銀用度センター・早川満久取締役】

地域金融機関で足掛け15年にわたり、広報やIR、社会貢献活動に従事してきた。全国各地の地域社会には、私のような広報担当者が、情報を発信するにも受信するにも何かと制約の多い中、それぞれ汗を流している。そうした地域の担当者に目を向けていただいたことを、本当にありがたく思っている。この賞は私個人が受賞したのではない。そういった、地域でさまざまな制約の中、懸命に広報に取り組んでいる担当者みんなと一緒に受賞させていただいたと思っている。
広報に当たっては、共感ということが非常に大事である。各ステークホルダーからの共感を得ていく中で、特に地方の企業にとっては、地域社会からの共感が一番重要だと考えている。まずは社内に企業風土というものを確立し、社内で地域に対する志を共感し、その上で広報を通じて情報を発信して、地域と共に新しい豊かな地域をつくっていく。そういう志を貫きたいと思って広報に取り組んできた。気持ちを新たにし、地方からの情報発信に取り組んでいきたい。

【三菱商事・廣田康人総務部長】

9年間にわたり広報の仕事に携わってきた。今回の受賞は、この9年間私と一緒に、汗を流してきた仲間に対してのお褒めと受け止めたい。三菱商事は典型的なBtoBの会社である。そうした中で、等身大の三菱商事を伝えていきたい、できれば三菱商事に対するそこはかとない好感を得られればよいという意識で広報活動をやってきた。
昨今、企業は「企業集団」としてとらえられるようになり、グローバルで、スピーディーな経営がなされている。そういった企業の実態を伝えていくことは非常に難しいが、また大切な仕事でもある。情報を発信する側に立つと、どうしても独り善がりになりがちだが、やはり受け手の立場に立って、等身大の企業を伝えていくということが重要である。そのことによって、社会の常識と企業の常識を一致させていくことができるのではないか。広報部門はあくまでも裏方であるが、説明責任や企業の公開性が求められる中で、広報機能というものはますます重要性を増している。新しい時代の新しい広報を考えていくことは非常にやりがいのある仕事だ。これから広報をやっていかれる方たちの健闘をお祈りしたい。

◇ ◇ ◇

受賞者と受賞理由

◆企業広報大賞

ダイキン工業

「グローバル」「人の活用(女性、高齢、グローバル)」「環境」を重点テーマとして、首尾一貫した広報活動を着実に展開した。また、人を基軸にした経営理念を、経営トップ自らが積極的に情報発信した。グローバルで加速する事業展開にあわせて、独創的な情報発信に努め、企業としての存在感、モノ作りへのこだわり、人を基軸にした経営理念を的確に反映した広報活動を展開した。

◆企業広報経営者賞

竹本正道・日東電工取締役社長CEO兼COO

「グローバル・ニッチ・トップ」を事業戦略に掲げ、経営トップ自らコミュニケーション活動に重点をおき、多くの社員との直接対話を通じ、グループの理念・文化・DNAなどの浸透を図っている。また、広報のグローバル対応力強化にも積極的に取り組んでいる。経営理念「新しい価値の創造」の下、全グループ社員が絶えず意識や行動を進化させることにより、すべてのステークホルダーにとって存在価値のある企業をめざし、エモーショナルキャピタル向上とグループ一体感の醸成を図るべくコーポレートブランド価値の向上を追求している。

西田厚聰・東芝代表執行役社長

高い成長性と安定的な収益性を両立できる経営をめざす方向へと軸足を移し、「躍動感ある東芝」をめざす姿勢と透明性のある企業経営を志向し積極的に情報発信した。現場に頻繁に出向き、従業員との対話などの緊密なコミュニケーションを通じて経営方針や会社施策を浸透させるとともに、ステークホルダーに対するタイムリーな情報発信に努め経営者として説明責任を果たした。

渡邉美樹・ワタミ代表取締役社長・CEO

ポジティブ・ネガティブにとらわれず、情報開示を率先して行っている。時代のニーズをとらえ、事業展開だけではなく、CSRなど社会活動も積極的に展開し、わかりやすい説明でステークホルダーに受け入れられている。また経営方針や経営理念を社内で浸透させるため、講話を実施するなど社内コミュニケーションを積極的に進めている。

◆企業広報功労・奨励賞

早川満久・肥銀用度センター取締役(前・肥後銀行総合企画部長代理兼IR室長兼地域文化課長)

15年にわたり地域金融機関である肥後銀行の広報を担当し、企業と記者それぞれの立場を踏まえた上での円滑なコミュニケーション実践により、企業のみならず熊本地域の広報に貢献した。また、地域社会をはじめとした各ステークホルダーからの「共感」が重要と考え、CSRや社会貢献活動に積極的に取り組んだ。

廣田康人・三菱商事総務部長(前・広報部長)

報道関係者や他社の広報関係者からの信頼が厚い。社外に向けては、「等身大」の企業を情報発信、社内に向けては、社員1人ひとりに的確に情報をどう伝えるかを念頭に広報活動を展開した。三菱商事の広報だけではなく、業界や三菱グループ広報にも尽力した。

◇ ◇ ◇
企業広報賞
企業広報賞は1985年に創設され、広報活動の活性化を目的に、優れた広報活動を実践している企業や個人を毎年表彰している。
企業に授与される企業広報大賞は、(1)社会から期待され求められているものを見極め、それを経営に反映させているか(2)ステークホルダーに対し企業活動の的確な情報を発信・伝達し、暮らしと産業に貢献しているか――が選考ポイント。
また、経営者に贈られる企業広報経営者賞では、「経営トップ自らが広報の重要性を認識し、社内外の情報によく耳を傾け、経営環境や経営方針などについて、社会や従業員に語り、コミュニケーションを積極的に推進しているか」に重点が置かれ評価される。企業広報功労・奨励賞は、「広報活動に携わり企業広報の発展に功労が大きく、奨励に値する独創的な企業広報を実践している」広報担当者やチーム・グループが対象となる。
Copyright © Nippon Keidanren