日本経団連タイムス No.2829 (2006年9月14日)

第4回日本・南アフリカビジネスフォーラム結団式開く

−ングバネ駐日大使から南アフリカの政治経済情勢など聴取


日本経団連は8日、東京・大手町の経団連会館で第4回日本・南アフリカビジネスフォーラムの結団式を開催した。同フォーラムは19〜22日、南アフリカ共和国のヨハネスブルクなどで開催される。結団式には坂根正弘サブサハラ地域委員長はじめフォーラム参加者が出席。来賓のングバネ駐日南アフリカ共和国大使から、南アフリカの政治経済情勢などについて聴いた。ングバネ大使の説明要旨は次のとおり。

日本との経済関係拡大に期待感示す

南アフリカの政治情勢

南アは安定した民主国家であり、国際社会の責任ある一員でもある。タボ・ムヴイェルワ・ムベキ大統領は、国家元首として2期目に入ったが、憲法に従って、その任期が終わったところで退任すると明言している。南アが民主化されたのは1994年であるが、そのとき以来、アフリカ民族会議(ANC)が主導している同政権は、国民に対してより良い生活を提供するというプログラムを開始した。政権発足後、電気の普及率は30%から72%に上昇し、飲料水へのアクセスは94年の59%から2005年には92%へと改善した。現政権が掲げた住宅整備計画の下では、170万人の国民がメリットを享受した。いまだ国としての体制には脆弱なところもあり、世界全体が抱えているのと同じような問題を抱えているが、希望は現実のものとなりつつある。

南アフリカの経済情勢

南ア経済は現在、構造改革のさなかにある。05年の実質GDP成長率は5%を記録し、1984年以来最も高い伸びとなった。今回の景気拡大は27カ月連続しており、これまでで最も長い拡大局面となっている。
自動車生産は06年に56万5018台を記録し、前年比25%増加した。また05年は14万台を輸出し、全輸出額の7%を占めた。06年には21万台の輸出が見込まれている。不動産価格も上昇傾向にある。消費も非常に力強いが、消費者が過剰債務に陥っているわけではない。インフレ率は3〜6%である。過去18カ月間に実質固定資本形成が速いペースで進行しているのは喜ばしいことである。実質総固定資本形成の伸びは、05年後半に年率7.75%であったが、06年前半には同10.25%へと加速している。
現在の南ア経済に対する消費者・企業心理は極めて堅調である。その背景として、インフレ率と金利が低いことが挙げられる。財政赤字が過去数十年間で最も少なくなっており、政府にとっては、貧困と失業を半減させる絶好の機会が今まさに到来している。
ブラック・エコノミック・エンパワーメント(BEE)政策によって、歴史的に不利益を被った人々の経済活動への参加が可能になったことが現在の経済成長に大きく寄与した。黒人中産階級は年間の家計最終消費支出6000億ランド(832億4000万ドル)の4分の1を担っている。黒人中産階級は急激に増加している。
経済成長の目標として、2010年まで少なくとも平均4.5%、以後10年から14年は同6%の達成を掲げている。

貿易と投資

05年において日本は、南アにとって最大の輸出相手国で、同輸出額は50億ドルである。主な対日輸出品の内訳は、プラチナが35%、自動車が22%、フェロアロイが10.1%、木材チップが6.3%、アルミニウムが5.6%である。日本の自動車メーカー2社が、ある特定車種の生産拠点を南アに置き輸出していることが、南ア経済を支えている。また南アと日本の企業が協力して原子炉の生産に臨もうとしている。南アとしては、日本とのサービス貿易を促進したい。例えば南アをテレビCMの撮影や臨床試験を行う場として使ってもらいたい。

日本と南アの今後の関係

今後も日本と南アの経済関係は拡大を続けるだろう。貿易と投資を円滑にするために、東京に南ア商業会議所日本支部を開設したい。

南アの貿易産業省、日本の経済産業省との間で合同貿易委員会を設置することになった。南アと日本の自由貿易協定を締結する上で重要な第一歩である。また、南アは日本が南部アフリカ開発共同体(SADC)との経済関係を進める上での拠点になるだろう。科学技術の分野でも、大学、研究機関、学者の間の交流など協力関係が急速に拡大している。

日本企業の南ア進出も増えている。ムベキ大統領が今年2月に打ち出した「経済成長加速化戦略(ASGISA)」は6%成長を目標にしており、これを達成するには観光やアウトソーシングなど労働集約型産業の振興が重要であり、バイオ燃料産業の育成も雇用創出とエネルギー自給に役立つ。その他、日本企業には、化学や鉱物資源など資本集約的な分野にも投資してほしい。

【国際第二本部中南米・中東・アフリカ担当】
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