日本経団連タイムス No.2829 (2006年9月14日)

雇用政策検討部会開く

−「平成18年版労働経済白書」の説明を聴取


日本経団連は4日、東京・大手町の経団連会館で雇用委員会の下部組織である雇用政策検討部会(橋本浩樹部会長)を開催し、石水喜夫・厚生労働省労働経済調査官から平成18年版労働経済白書に関する説明を聴取した。概要は次のとおり。

今年の労働経済白書のテーマは、「就業形態の多様化と勤労者生活」である。日本経済は2002年から長期的な景気回復過程に入っている。これを持続的・安定的なものとするにはどのようにすればよいかという問題意識で今回、白書をまとめた。企業部門で先行した回復を勤労者生活の充実へとつなげ、社会の安定を基盤とした持続的な経済発展をめざしていくことが大切であるが、現状では企業部門の回復が勤労者生活の充実にうまくつながっていない。これは、集団的に労働力への分配がなされていた時代から、労働関係の個別化が進み、これまでと違う姿が出てきているからである。さらに、労働関係が個別・多様化することにより、賃金や所得に差がつき、必然的に格差の問題が避けられなくなる点についても言及している。

わが国の雇用情勢は厳しさが残るものの、改善に広がりがみられる。完全失業率は低下傾向で推移し、賃金も緩やかに上昇、個人消費も総じて堅調な動きを示しており、マクロでは改善している。しかし、この改善局面において、景気回復の成果が労働者に一律に分配される姿は次第に変化している。また、賃金制度では、業績・成果主義が広がるなど、労働関係は個別化の動きがみられる。
就業形態の個別・多様化の背景には、グローバル化に伴う厳しい市場競争や産業構造の高度化があり、生産・サービスの柔軟な供給体制をとる企業の経営戦略、高齢化等に伴う労働力供給構造の変化、勤労者意識の変化など要因が複合的である。今後は、労働力供給の制約が避けられず、高年齢層や女性の就業希望に応え、就業率を向上させていくことが不可欠である。企業や行政が労働環境の整備に取り組む中で、柔軟な労働力確保策としての就業形態の多様化はさらに進展する見込みである。

労働関係が個別化し、分配に違いが生じる中、男性壮年層や若年層で格差が拡大している。格差拡大に対しては、1人ひとりが受けとめていくべきものと、社会で考えていかなければならないものの2つがある。今のところ世帯単位でみれば所得格差の明確な拡大傾向は認められないが、今後、政策的な対応が求められる重要な問題となるだろう。若年者が未来に向かって希望に満ち、果敢に挑戦していくことができる環境、例えば、多様な就業形態間の均衡処遇の確保、職業能力開発機会の充実などの整備が重要である。人々の持つ多様な個性を経済・社会発展の原動力とすることが求められよう。

【労政第一本部雇用管理担当】
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