日本経団連タイムス No.2829 (2006年9月14日)

「イントラネット・ブログ活用による社内コミュニケーション活性化セミナー」開催

−雨宮クロスメディア・コミュニケーションズ代表取締役が講演/社内コミュニケーションの課題や対応策など学ぶ


日本経団連の社内広報センターは8日、都内で「イントラネット・ブログ活用による社内コミュニケーション活性化セミナー」を開催した。同セミナーでは、現在多くの企業が抱える社内コミュニケーションの課題について企業のウェブ活用の現状から再点検した上で、イントラネットの実態、コミュニケーション能力の必要性などを学んだ。講師は、企業コミュニケーションや経営の視点からオンラインメディアの有効活用をサポートしているクロスメディア・コミュニケーションズ代表取締役の雨宮和弘氏。

■ネット利用の課題などを指摘

雨宮氏はまず、インターネットが商用利用に導入されて十余年経た中で、多くの日本企業はどのような使い方をしてきたか、実際の企業のホームページを例に挙げ、「更新管理が外注任せの場合、不祥事や事故があったときに即時対応できない」「個々のページは豪華でも、メッセージに一貫性がなく、インターフェイスもバラバラ」「一方的な情報提供に終始し、積極的な対応姿勢を持たない」「積み重ねてきたコンテンツの取捨選択、整理の明確な方法を持たない」など、多くの課題を指摘した。その原因をプロの担当者育成の遅れ、ホームページの戦略設定の不備、社内・社外(制作会社など)との対応、運営管理の不備などでWEBマスターが孤立化していることを訴えるとともに「取りあえずつくっておけばよい」という経営者の認識不足をあげた。
さらに雨宮氏は、「社内コミュニケーションの手段として、イントラネットを導入している企業はかなり多いが、目的をきちんと持っている企業は少ない。自然発生的に生まれ今後どのようにマネージ、もしくは整理したらよいのかわからない、さらにテクノロジーの発達でいろいろなことができるようになってきたが、ツールが多くどこからどう手をつけていいのかわからないといった悩みを持つ担当者も多い」とイントラネットの現状を説明した。

■導入企業の注目事例を紹介

また雨宮氏は、イントラネットを導入している企業で注目される事例の紹介も行った。機械メーカーの某社では、中途入社のある社員が、各部門が行っている仕事が見えないので、ボランティアで各部を回り情報収集し、自らブログツールを使って部門紹介を立ち上げた。それがきっかけとなりイントラを全面的に見直し、標準化することができた。ユーザーの立場で客観視できる人がいるとスムーズにことが運ぶ事例だ。そのほか、メンタルヘルスのサポートを目的に、管理者教育のためのコーチングのツールをイントラネットに組み込んだ事例や、社員全員外向けのブログを持ち、社内も社外も関係なくオープンにコミュニケーションを行っている事例で、社内のミーティングを社外にも公開して外部意見をも求めるというものなどを紹介した。一方、イントラブログを社内の情報共有のために全社導入したが、この10年でマネジメントが数度変わり、企業文化も変化し社員のモチベーションも変わったため、「自分のノウハウをなぜ他人に明かさなければならないのか」ということで社員がほとんど利用せず失敗に終わった、ある総合家電メーカーの事例も紹介した。
特にイントラネットを導入する上では情報交流をオープンにする企業文化やコミュニケーション文化がいかに大事であるかを訴えた。

■深刻なコミュニケーション事情を示唆

雨宮氏はコミュニケーション文化と関連し、昨今のコミュニケーション事情がかなり深刻な状況であることを示唆した。欧米ではもともと情報の共有認識がないという前提に立っているので、コミュニケーションが発達した。日本は聞かないでもわかるだろうという“阿吽(あうん)の呼吸”が以前はあったため、プレゼンテーションやディベートは欧米のように育たなかった。ところが、最近の日本は以前では考えられなかったような形で「常識」が崩れつつあり、皆で守るべき他人への気遣いが急激に低下している。とにかく今の若者には「会社とは何か、働くこととは何か」という基本的なことから教育していかなければならない。このあたりをないがしろにして、「イントラネットさえ導入すれば何とかなるだろう」という安易な考え方だと逆に社内コミュニケーションの低下を招きかねないと同氏は警告した。

■コミュニケーション能力の必要性説く

一方、企業に目を向けてみると、ビジネスでコミュニケーションロスが非常に多くなっている傾向がみられる。部門ごとの専門化で縦割り組織になっており、他の部門の仕事が見えないことや業務プロセスの電子化・働く価値の多様化などで、企業ごと、働く人ごとにビジネスコミュニケーションがいかにあるべきかを考える時期に来ていることに言及し、各人がコミュニケーション能力を身につけることの必要性を説いた。
そして今、働く人に求められる能力として、(1)コミュニケーション能力(2)判断力・決断力(3)プレゼンテーション能力(4)企画力、発想力、創造力――などを挙げるとともに、コミュニケーショントレーニング法としてミーティング、プレゼンテーション、マッピングなどの具体的なやり方を紹介した。

■積極的に情報交換を

終わりに雨宮氏は、今回のセミナーのように、「同じ思いを持った担当者が集まる機会は貴重であり、ぜひ参加者同士、積極的に情報を交換してほしい。自分自身の経験からも、ユーザーから話を聞くことが大変ためになった」と締めくくった。

【事業サービス本部社内広報担当】
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