日本経団連タイムス No.2830 (2006年9月21日)

第10回アジア欧州ビジネスフォーラム開く

−グローバル化への対応などで議論


第10回アジア欧州ビジネスフォーラム(AEBF)が10〜11日の2日間、フィンランドのヘルシンキにおいて開催された。AEBFは、1996年から政府レベルで開催されているアジア欧州会合(ASEM)の民間版である。ASEMは、96年当時、アジア、欧州、北米の3極の関係の中で相対的に希薄であったアジアと欧州との関係強化を目的に始まったもので、AEBFは、そのASEMに対して民間として提言することを目的としている。
今回は、ASEM・AEBF参加38カ国(アジア13カ国、欧州25カ国と欧州委員会)から約250名が参加、グローバル化への対応等をめぐって議論を行った。

初日の全体会議では、「グローバル化、競争力、エネルギー」「貿易政策の行方=経済界の利益に資するのは多国間主義か地域主義か」がテーマとなった。総じて保護主義は決して好ましい結果はもたらさず、貿易・投資の自由化や多角的なルールづくりを進めるべきだというのが一致した見解であった。
WTOを中心とする自由貿易体制をめぐって、FTAなどの2国間・地域間の協定をどう考えるかという点については、数多くのFTAが締結されている現状では、WTOとFTAを対立するものととらえるのではなく、いかにして相互補完的なものにするかが大事であるというのが共通認識であった。

個別分野については、貿易、投資、金融サービス、情報通信技術、インフラの5つのワーキンググループに分かれて、それぞれ、次のようなテーマで討議が行われた。(1)貿易=電子化等を通じた輸出入手続きの簡素化・透明化、技術的障壁の一層の削減、知的財産権の保護等(2)投資=官民パートナーシップのあり方、外国への投資に関する企業行動のあり方等(3)金融サービス=金融市場の自由化、国際会計基準の導入等(4)情報通信技=企業活動・行政サービス等の電子化、市場アクセスの改善、情報セキュリティーの確保等(5)インフラ=エネルギー効率の向上、エネルギーの安定的確保等。

最終日の全体会議では、「アジアと欧州は互いに何を学べるか」というテーマでパネル討議が行われ、パネリストとして参加した日本経団連の不破久温・ヨーロッパ地域委員会企画部会長からは、「東アジアにおける統合は経済中心に機能重視で進められてきており、EUとは経緯を異にする。東アジアのダイナミズムを活かし、統合効果を享受するためには、今後もそのような形で進めていくのが現実的であると考えられる。一方、欧州のように高い理念を掲げて統合を推進していく可能性についてどう考えたらよいか」と問題提起した。
これに対して、パネリストとして参加していたフィンランドのレへトマキ外国貿易開発協力大臣からは、いずれにしても現実の変化に合わせてタイミングを失することなく制度を変えていくことが重要である旨のコメントがあった。

最後に、「現在中断しているWTO新ラウンド交渉の成功に向けて、参加国政府に対して一層の努力を要請する」ことなどを盛り込んだ議長声明が取りまとめられ、会議後にクリストファー・タクセル議長(フィンランド産業連盟会長)からASEM首脳会合に提言された。
次回は2008年10月に北京で開催される。

【国際第一本部欧州・ロシア担当】
Copyright © Nippon Keidanren