日本経団連タイムス No.2830 (2006年9月21日)

ロードメイヤー・オブ・ロンドンと懇談

−シティの役割など講演聴取


日本経団連は4日、東京・大手町の経団連会館でロードメイヤー・オブ・ロンドンとの懇談会を開催した。懇談会では、米倉弘昌副会長・ヨーロッパ地域委員長があいさつした後、シティ(ロンドン特別行政区)の行政・統治機関であるコート・オブ・コモン・カウンシルの議長であるロードメイヤーのデイヴィッド・ブルーワー氏から、シティの役割等について講演を聴取した。講演の概要は以下のとおり。

ロードメイヤーは、英国系企業に限らずシティに拠点を置く、すべての企業の「大使」としての役割を果たすことが求められる。今回の訪日の目的は、日本との協力関係をより強固なものとするためである。
日本はアジアで最大規模の金融センターであるが、これが随一のものとなるようシティとしても協力したい。英国の国内市場は小さいが、時間的に東京市場とニューヨーク市場の中間にあり、国際的には最大の市場となっている。この経験をぜひとも共有したい。

市場の国際化を推進するためには、障壁を取り除かなくてはならない。現在、日本企業を買収しようとする場合、その対価として株式は認められていないのが現状である。
一方で、日本企業の英国でのプレゼンスを高めたいとも考えている。M&Aなどを通じて日本の金融機関が活躍できるよう期待している。また、事業会社にも、シティに財務部門などを設置してほしいと考えている。

欧州の金融市場の玄関はロンドンであるといえるが、他から学ぶべきは学び、また、状況の変化に合わせて変えるべきは変えていかなければならない。
国際会計基準の問題は、そのような課題の1つである。これを採用することは消費者の利益に資するものと考えている。国際会計基準については、2009年以降、使用が義務付けられることになっているが、それまでに日米欧が相互承認を実現することが重要である。日本の金融庁や企業会計基準委員会、その他の関係者が一体となってコンバージェンスに取り組み、欧米当局と合意する必要がある。われわれも、ロンドンにおいてフォローアップし、状況を知らせるようにしたい。
またわれわれは、これまで合法的な移民を受け入れることによって利益を得てきた。これらの移民は税金を負担し、その見返りに社会保障の恩恵を受けている。シティでは何千人もの外国人が銀行や保険会社で働いており、また65%の労働者が外資系企業によって雇用されている。

シティはEUレベルでの政策形成にも影響を与えている。5月に、今年後半のEU議長国であるフィンランドを訪問した際には、金融市場にこれ以上の規制は必要なく、市場がきちんと機能するよう管理・監督することが重要であると主張してきた。
英国財務省では、委員会を設け、金融市場としてのロンドンの地位にマイナスの影響を及ぼす要素について検討を行っている。企業関係者からヒアリングを行ったところ、最大の懸念要素は規制強化であった。

ロンドンは約20年前にビッグバンを体現し、市場開放を進めた。その結果、日米欧の金融機関が活躍するようになったが、重要なことはロンドンがそれらの最大の拠点に位置づけられていることである。
また、ロンドンにはCO2の取引所があり、世界中の企業が売買している。このような中にあっても、シティは現状に安住することなく、ロンドンにとどまりたいと考える企業を増やすための環境を提供していくことが重要であると考えている。

【国際第一本部欧州・ロシア担当】
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