日本経団連タイムス No.2834 (2006年10月19日)

NICC協議会第5回総会開く

−グローバル人材育成で企業事例の講演を聴取


日本経団連のNICC協議会(立石信雄委員長)は4日、東京・大手町の経団連会館において第5回総会を開催した。日本経団連の関連組織であるNICC(日本経団連国際協力センター)の2005年度事業報告や06年度活動計画・進捗状況の説明のほか、グローバル経済における日本企業の人材育成に関する先進的な事例についての講演を聴取した。

冒頭のあいさつで立石委員長は、「NICCの地道な人材育成を通じた国際協力は、アジア諸国の経済発展への寄与とともに、対日関係の強化というかたちで大きな実を結ぶことになる」とNICC事業の意義を強調するとともに、NICCを支援している協議会会員企業に対して感謝の意を表し、引き続きの支援を呼びかけた。

同協議会会務報告の後、北川哲夫NICC専務理事が、05年度の活動報告および06年度の事業進捗状況などを説明した。05年度には、長期(8カ月)の「アジア諸国人事労務管理者育成事業」をはじめ、短期の招聘プログラムを8件、賃金システムや労働安全衛生、管理研修プログラム(MTP)などのテーマで11件の海外セミナーを実施したとの紹介があり、06年度もほぼ同様の規模で事業を実施中との報告があった。さらに、研修成果のフォローアップとして05年度に訪れた中国とパキスタンにおいて、NICCでの研修を活かして自国で活躍している修了者たちの様子が紹介され、事業が確実に成果を生んでいることが報告された。
経済のグローバル化とともに日本企業を取り巻く環境も大きく変化し、グローバルに通用する人材育成がますます重要な課題となっている。このような背景から、今年度の総会においては、「グローバル経済における日本企業の人材育成に関する先進的な取り組み」と題して、キヤノンの荻原博人事本部人材開発センター所長と三菱商事の松田豊弘HRDセンターグローバル人材開発チームリーダーの講演を聴取した。

荻原講師は、キヤノンの「三自(自発・自治・自覚)の精神」をはじめ、「人間尊重主義」、および「公平」処遇を基本とした、年功序列ではない「実力終身雇用」という人事に関する考え方を説明した。その上で、次世代リーダー、グローバル人材、プロフェッショナル人材の育成に関する取り組みを紹介した。とりわけ、次世代リーダー育成に関して、事業規模の拡大や要員の現地化などに対応したリーダーの発掘・育成は計画的に行うことが必要であると強調。
また、キヤノンの求める「人間力の要素」と「戦略立案、実行力要素」の両輪で構成される次世代リーダーの条件と、その育成プログラムの具体的内容を披露した。

続いて三菱商事の松田講師は、「グローバル優秀人材の活用と開発」をテーマに、これまでに同社が推進してきた人材開発施策を紹介した。同社は人材開発を単なる人事制度の1つとしてとらえるのではなく、経営戦略の一環として早くから取り組んだ実績を有している。それは、(1)国・地域別プロフェッショナル制度の導入による優秀人材の活用と確保(2)人材層別、全社、対象地域、対象国別の人材開発・育成プログラム(3)海外オフィス別テーラーメイド式人事制度の整備(4)英語データベースなど社内インフラのバイリンガル化(5)日本人派遣社員の意識改革――などといった総合的な施策であり、これらによって人材の成果管理と能力開発を同時に行っている現状を説明した。

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NICCは、1994年に日経連(当時)が設立した団体で、開発途上国の経営者団体の健全な発展ならびに経営管理者の育成をめざし、招聘研修事業などを実施している。NICC協議会は、NICCを財政的に支援している企業で構成され、NICCの活動の理解を深めるとともに、委員企業の意見を集約してその活動に資することを目的としている。

【労政第二本部国際労働担当】
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