日本経団連タイムス No.2836 (2006年11月9日)

甘利経産相と懇談

−「イノベーションの創出」などで活発に意見交わす


日本経団連(御手洗冨士夫会長)は10月30日、都内で甘利明経済産業大臣との懇談会を開催した。同懇談会には、日本経団連から、御手洗会長、西室泰三評議員会議長のほか、副会長8名、評議員会副議長3名ら計27名が、経済産業省からは、甘利大臣のほか、山本幸三副大臣、渡辺博道副大臣、高木美智代大臣政務官らが出席した。今般発足した安倍内閣が最優先課題として掲げる「イノベーションの創出」などをめぐり、活発に意見を交換した。

御手洗会長、構造改革継続の必要性強調

開会あいさつにおいて御手洗会長は、「構造改革の進展が実を結び、景気も着実に回復している。環境が急激に変化する中、『希望の国』をめざすには、構造改革の継続が必要であり、イノベーションを原動力とした経済成長を図る必要がある」と述べるとともに、新内閣を支援していくとの考えを示した。

これを受けて甘利大臣は、産業界が経済成長戦略を牽引していることに対し謝意を述べた上で、「少子化対策、財政再建も健全な経済成長があって成り立つものである。経済成長の基盤をしっかりとしたものとするため、今こそ現場の知恵を活用するときであり、経済産業省も問題意識を持って取り組みたい」と語った。

懇談において、まず日本経団連側から、重要政策課題について問題提起がなされた。
はじめに宮原賢次副会長が、三角合併を含む合併等対価の柔軟化について、(1)新会社法を活用した防衛策などが進められているが、不当な敵対的M&Aに対する不安をぬぐい去るまでには至っていない(2)不安をぬぐい去るため、例えば株主総会での決議要件を特殊決議とするなどの対応策が必要など、より一層の取り組みが必要――との認識を示した。
庄山悦彦副会長からは、イノベーションを加速するようなシステムの構築が不可欠との認識の下、(1)戦略重点科学技術について、基礎研究から産業化までの一貫した政策の遂行(2)産学連携の強化(3)政府研究開発投資の一層の拡充――を求めた。
出井伸之副会長からは、次世代通信ネットワークにおける省庁の壁を越えた政策づくりや、次世代のマーケットにおけるルールづくりに取り組むべきとの指摘があった。
米倉弘昌副会長からは、(1)WTO新ラウンド交渉の再開と早期妥結に努めること(2)経済連携協定(EPA)に関して、東アジアに重点を置きながら、ASEAN等との多国間EPA、戦略的に重要な国々との2国間EPAを推進すること――を要望した。
中村邦夫評議員会副議長からは、今年度の税制改正要望の重点事項である、法人実効税率の引き下げ、減価償却制度の見直し、移転価格税制の改善を求めた。

これに対し、甘利大臣は、(1)三角合併については、国際標準の枠内で考えることが必要である(2)科学技術政策については、市場と基礎研究との双方向の対話を図りながら強力に進めたい(3)規制改革については、官は官にしかできないことをすることが大事である。民間も、プラットフォームビジネスに積極的に取り組んでほしい(4)WTOは開始することに意義がある。EPAも、ネックである農業について農水大臣と相談して対応したい(5)減価償却制度については、100%償却と耐用年数の短縮により設備投資を促進し、競争力をつける方向で取り組む(6)消費の拡大には所得移転も必要で、ぜひ取り組んでほしい――と述べた。

このほか、日本経団連側からは、勝俣恒久副会長がホワイトカラーエグゼンプションなどの労働法制について、岡村正副会長がコンテンツ産業の振興について、渡文明副会長がエネルギー問題について、野間口有知的財産委員長が知的財産政策について、鮫島章男環境安全委員会共同委員長が環境・温暖化問題について、それぞれ重点となる施策の実施を訴えた。
こうした産業界からの幅広い要望に対して、甘利大臣は、現場で起きている事態を把握できるよう、今後も情報交換を行うとともに、政策への提言を行ってもらいたいとの意向を示した。

【産業第二本部開発担当】
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