日本経団連タイムス No.2836 (2006年11月9日)

第54回北海道経済懇談会開催

−北海道経済活性化や自立的発展への取り組みなどで意見を交換


日本経団連と北海道経済連合会(道経連、南山英雄会長)は10月28日、札幌市内のホテルで「第54回北海道経済懇談会」を開催した。懇談会には、御手洗冨士夫会長をはじめ三木繁光副会長、宮原賢次副会長、西岡喬副会長、和田紀夫副会長、三村明夫副会長、渡文明副会長、江頭邦雄副会長ら日本経団連首脳役員、道経連会員など約150名が参加。「活力と魅力あふれる『希望の国・地域』づくりに向けて」を基本テーマに、北海道経済の活性化や自立的発展に向けた取り組みなど、北海道が抱える課題を中心に意見を交換した。

開会あいさつした道経連の南山会長は、北海道経済を取り巻く状況について、緩やかに回復しているとの見方もあるものの、規模、業種、地域によって差があり、依然厳しいとの見方を示した上で、北海道経済の自立的発展に向けて、(1)産学官連携を軸とした産業構造の転換(2)農水産業・食関連産業の競争力強化(3)北海道観光の全体戦略と推進体制の構築(4)道州制特区の推進(5)社会資本の整備拡充――などに引き続き鋭意取り組んでいくと語った。

続いてあいさつした日本経団連の御手洗会長は、地域がそれぞれの特色を最大限に活かしながら新しい経済圏をつくっていくことが、「希望の国」の実現に向けた重要な施策の1つであると強調。北海道が官民を挙げて道州制に関する先駆的な試みに取り組むなど、真に自立した地域づくりを推進していることについて、北海道経済の新たな成長の基盤となるとの期待感を示した。

■活動報告

第1部では、日本経団連から、宮原副会長が経済連携推進、三木副会長が税制改正、江頭副会長が観光立国推進をテーマにそれぞれ取り組みを報告。EPA(経済連携協定)交渉の加速化への働きかけ、減価償却制度の見直しなど来年度税制改正に向けた取り組み、日韓観光協力会議の開催などを通じた国際観光の推進など、最近の活動を説明した。

一方、道経連からは、中井千尋副会長が、「道州制と特区推進法案」について報告。経済の自立的・持続的発展を図るには、独自の戦略的地域経営を可能にする機能的・機動的な行財政システムが必要であり、そのための有効な手段が道州制であると説明。また、道州制特区推進法案が国会に上程されているが、道州制特区によって、地方財政の自立と地域経済の自立的・持続的発展の足がかりを確保したいとの説明があった。
次に、林光繁副会長が、「魅力ある北海道観光の実現に向けた取り組み」について報告。北海道観光の問題として、情報発信力の不足、観光基盤の整備の立ち遅れなどを指摘。官民一体で構成する北海道観光戦略会議を通じ、北海道観光の競争力強化を推進していくと説明した。
続いて、横山清副会長が、「国民への安全・安心な食料の安定供給」について報告。中長期的に世界の食料需給の逼迫が懸念される中、わが国の食料供給基地としての北海道の役割は従来以上に高まっていくとの見方を示し、北海道の特性を活かした「安全・安心」な食料供給システムの確立により、消費者から高い支持を得られると指摘。北海道のポテンシャルを活かした、食関連産業の育成に取り組んでいきたいと報告した。

■自由討議

第2部の自由討議では、道経連側から、(1)産業構造の転換に向けた地域の取り組みを促進する上で、産学官連携の推進、地方における試験研究機能の強化、ベンチャー企業の育成が必要(2)バイオマス資源など地域の特性を活かした新エネルギーなどを利用することは、温暖化対策としての有効な方策(3)地域発展の原動力は「人」であり、家庭・学校・地域それぞれの場での教育力の向上と連携が必要(4)少子・高齢化、労働力人口の減少が進行する中、当面の労働力確保の観点から、雇用形態の見直し、女性や高齢者の一層の活用が必要(5)厳しい地方経済と地方自治体財政の下、大都市部と地方との地域間格差は深刻化しており、是正へ向けての取り組みが喫緊の課題(6)新幹線、高速道路をはじめとする社会基盤整備は、地方の自立・発展のために不可欠――との発言があった。

これに対して日本経団連からは、「大学と産業拠点との密接な連携、集積が、地域発のイノベーション創出の鍵」(渡副会長)、「エネルギー問題と環境問題の一体的解決が重要。新エネルギーの活用など地域特性に応じた取り組みの推進を期待」(三村副会長)、「家庭と学校でしっかりとした倫理観を持った人間を育めるような教育改革が必要」(江頭副会長)、「税制改正を含め、実効ある少子化対策が必要。地域が持つ魅力を発揮すれば地域外から人を呼び込める」(和田副会長)、「地域の活性化を図る上で、分散型の経済圏の形成が求められ、そのためには道州制の導入が必要」(三木副会長)、「真に必要な社会基盤を適切な事業評価やコスト見直しを行いつつ、着実に整備していくことが必要」(西岡副会長)――と応じた。

【総務本部総務担当】
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