日本経団連タイムス No.2836 (2006年11月9日)

サカ・エルサルバドル大統領と懇談

−サカ大統領、優れたビジネス環境を強調


日本経団連は10月23日、東京・大手町の経団連会館でサカ・エルサルバドル共和国大統領との懇談会を開催した。エルサルバドル側からはサカ大統領はじめデ・ガビディア経済大臣、ロチ観光大臣、ライーネス外務大臣、フィゲロア・エルサルバドル投資促進機構(PROESA)理事長らが、日本経団連からは佐々木幹夫・中南米地域委員長らが出席した。エルサルバドル側出席者の発言概要は次のとおり。

〈サカ大統領〉

エルサルバドルの2005年のGDP成長率は2.8%で、06年は3.5〜3.7%と予想される。05年の国民1人当たりGDPは2500ドルである。マクロ経済指標は良好で、ラテンアメリカ諸国で最高ランクの投資グレードを有する国の1つである。インフレ率は中米地域で最低レベルにあり、金利もラテンアメリカ諸国で最低水準である。01年以降のドル化政策により、通貨は米ドルであるため、為替リスクは存在しない。
エルサルバドルはメキシコ、ドミニカ共和国、チリ、パナマとFTAを締結しているほか、米国と中米5カ国(エルサルバドル、グアテマラ、コスタリカ、ホンジュラス、ニカラグア)・ドミニカ共和国との自由貿易協定(DR―CAFTA)を批准している。実質的に4億人以上の消費者を抱える市場になっている。現在、台湾、コロンビア、カナダとFTA交渉中であり、07年にはカリコム諸国とともにEUとのFTA交渉を開始する。FTA締結に伴い、貿易やビジネスに関する新たな法的枠組みをつくっている。エルサルバドルは地理的に恵まれており、優れた人材を擁し、近代的な道路、電気通信などのインフラも整備されている。特に電気通信部門は高いポテンシャルを示している。全長3000キロ以上の道路網が整備されており、北部ではさらに道路建設が進んでいる。地熱、火力、水力発電が行われ、近代的な国際空港がある。東部では日本からの支援を得て、ラ・ウニオン港を改修している。これは、エルサルバドルを北米、中米、南米の物資流通拠点にする大規模総合物流プロジェクトであり、中米との統合をさらに進めていきたい。
このようにエルサルバドルは優れたビジネス環境が整っており、将来、日本企業の優秀なビジネスパートナーになる要素を備えている。

〈デ・ガビディア経済大臣〉

エルサルバドルを物流拠点、付加価値の高い製品を輸出するための基地としたい。米国とのFTAは、そのためのまたとないチャンスであり、日本企業にはこれを活用してエルサルバドルを拠点に世界最大の市場である米国に製品を輸出することを考えてほしい。米国とのFTAの原産地規則はNAFTAのそれよりも柔軟である。世界各国から原料をエルサルバドルに輸入し、加工して米国に製品を輸出することが自動車、自動車部品、エレクトロニクス、機械など多くの分野で可能である。エルサルバドルは物流センターになるため、インフラ整備に優先的に取り組んでおり、この分野でも投資のチャンスがある。例えばラ・ウニオン港の改修に加えて、太平洋と大西洋を結ぶ道路建設の計画もある。これが実現すれば7時間で両大洋間を往き来することができるので、パナマ運河の現実的な代替施設になるだろう。エネルギー部門も重要であり、2つの水力発電用ダムの建設、地熱発電所の拡張、送電線の敷設などを計画している。送電線の敷設では第1段階としてグアテマラとパナマを結び、将来的にはメキシコからコロンビアまでをつなげたいと考えている。

〈ロチ観光大臣〉

歴代政権は国内インフラの整備に力を注いできた。その結果、04年6月にサカ大統領が就任した後、インフラは十分整ったと判断し、エルサルバドルを観光地として宣伝できるようになった。国内には多くの観光資源がある。例えば、かつてマヤ民族がどのような暮らしをしていたかをつぶさに見られるところもある。エルサルバドルの航空分野は米国連邦航空局から第1級との評価を得ており、優れたサービスを行うことができる。エルサルバドルは物流センターをめざしているが、観光戦略もそれにのっとっており、中米のコンベンションセンターをめざしている。

〈フィゲロアPROESA理事長〉

エルサルバドルはビジネス振興政策を進め、既に成果を上げている。03〜06年の外国直接投資は多くの分野で増加している。エレクトロニクスや自動車部品などの業種で世界的な大企業がエルサルバドルに進出しており、一部では米国とのFTAの原産地規則の柔軟性を見越して工場を建設している。製造業に限らず、エルサルバドルを拠点にすれば、中米、カリブ地域にビジネスを展開できる。ラ・ウニオン港の改修が完了すれば、こうした活動は一層強化されるだろう。PROESAは多くのサービスを提供できるので、エルサルバドルへの投資に関心を持つ企業の要望を聞いて対応したい。

【国際第二本部中南米・中東・アフリカ担当】
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