日本経団連タイムス No.2837 (2006年11月16日)

環境安全委員会を開催

−地球温暖化対策めぐる内外情勢と今後の課題/経産省・伊藤審議官と懇談


日本経団連は6日、東京・大手町の経団連会館で、環境安全委員会(鮫島章男共同委員長、新美春之共同委員長)を開催した。経済産業省の伊藤元・大臣官房審議官から、「地球温暖化対策をめぐる内外情勢と今後の課題」と題して、京都議定書におけるわが国の目標達成に向けた今後の課題ならびに将来の国際枠組みのあり方について講演を聴取し、その後、出席者と意見交換を行った。
伊藤審議官の講演の概要は次のとおり。

1.京都議定書の目標達成に向けたわが国の状況と課題

先般公表された2005年度のわが国の温室効果ガス排出量は、基準となる1990年度との対比で8.1%増加しており、第1約束期間において6%削減するという約束達成への道のりは険しい状況にある。特に、全体の84%を占めるエネルギー起源CO2排出量の動向を部門ごとにみると、産業部門は自主行動計画の効果から3.2%減少しており、運輸部門では18.1%増加しているものの、低燃費車の市場投入効果が顕在化し前年対比では減少となっている。
しかし、依然として家庭部門が37.4%増加し、事務所ビルや商業施設等の業務部門では42.2%と大幅な増加が続いている。現在、関連統計の解析や関係業界からのヒアリングを通じて、きめ細かく排出増減の要因分析を行っており、今後の効果的な対策に結びつけたい。

昨年4月に閣議決定された「京都議定書目標達成計画」については、今年11月中に開始する産業構造審議会と中央環境審議会の合同会合の場において、現行計画上に規定されている約60項目の温暖化対策の進捗状況を把握するとともに、今後の見通しについて検討を行っていく。07年央には中間報告を取りまとめ、その後、07年末を目途に各種対策の見直しに加えて必要に応じて追加的な対策を検討する。
日本経済が再び成長過程にあることを踏まえ、「環境と経済の両立」を実現できる温暖化対策の検討に際し、産業界からの一層の協力を期待している。

世界をリードする役割を

2.将来の国際枠組みに関する課題

2012年に終わる第1約束期間以降の次期国際枠組みについて、現在の国際交渉の状況は、先進国の第2約束期間における削減目標に関する議論が先行している。
しかし、わが国としては、先進国の約束の改正だけでなく、すべての国がその能力に応じた排出削減への取り組みを可能とすると同時に、米国や中国等の主要排出国の最大限の削減努力を促す実効ある枠組みを構築することが不可欠と考えている。また次期約束については、従来の国別の数値目標だけではなく、業種別のエネルギー効率指標やCO2効率指標の役割についても検討されるべきである。こうした点は、ナイロビで開催される気候変動枠組条約第12回締約国会議等の場でも強調していきたい。
また、わが国としては、二酸化炭素回収・貯留(CCS)技術をはじめとする先進的技術の開発や、米国・中国・インドといった主要排出国が参加する「クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ(APP)」の推進を通じて、地球温暖化問題において世界をリードする役割を果たしていきたい。

【産業第三本部環境担当】
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