日本経団連タイムス No.2837 (2006年11月16日)

リッポネン・フィンランド国会議長と懇談

−フィンランドの対日輸出や日本からの直接投資増加を/リッポネン議長が期待感示す


日本経団連は10月30日、東京・大手町の経団連会館で、フィンランド共和国のパーヴォ・リッポネン国会議長(元首相)との懇談会を開催した。日本経団連からは佐々木元ヨーロッパ地域委員会共同委員長らが出席した。懇談会におけるリッポネン国会議長の発言要旨は次のとおり。

フィンランドの対日輸出や、日本からの対フィンランド直接投資がこれまで以上に増加することを期待している。フィンランドはロシア、特にサンクトペテルブルクに近いため、対ロシアビジネスの観点から魅力的な立地にある。
フィンランド経済は1990年代初頭の経済危機を脱した後、安定成長を続けている。それは以下に挙げるような長期的視点に立った政策の組み合わせの成果である。第1に技術開発に力を入れたこと、第2にユーロ導入による安定的な金融政策の下、財政改革を進めたこと、第3に政労使三者の合意に基づき、所得、購買力、物価のバランスを保つことができたこと、第4に構造改革を進めた結果、研究開発や教育分野に積極的に投資することができたこと、である。現在、フィンランドの競争力は極めて高く、中でも教育水準の高さや、汚職腐敗が少ないことが示すようにガバナンスに優れている点は、世界でも有数である。

現在、フィンランドは99年以来2回目のEU議長国を務めており、この大役をおおむね良好に遂行している。フィンランドは人口500万人の小国であるが、こうした小国であっても、人口4億5000千万人のEUをまとめることができるという良い例を示していると思う。議長国期間中の残された大きな仕事の1つが、域外、特にロシアをめぐる共通エネルギー政策の構築である。これまでEU加盟国は個別にロシアとの外交を行ってきたが、各国共通の課題が多いエネルギー分野については、EU全体が足並みをそろえる必要がある。
EUは一昨年、新規加盟国として10カ国を迎え入れたが、これを吸収する力があるのかどうか限界を試している段階といえるかもしれない。来年にはルーマニアとブルガリアを加盟国として迎え入れる。その後、西バルカン諸国を受け入れることについては、おおむね一致しているが、アルバニア、セルビアの加盟には時間がかかると予想される。また、トルコの加盟についてはトルコ自身の考え方、加盟国の意見とさまざまであり、ハードルが多いが、交渉を続けていきたい。トルコでは、EU諸国と同様にきちんとした選挙が実施され、民主主義が浸透しており、経済も好転している。
EUにとって、拡大は最も強力な「ツール」である。EU加盟というメリットを活用することによって、近隣諸国に影響を与えることができるからである。また、EUの拡大に当たっては、戦略的思考が必要である。トルコはEUにとって重要なエネルギー供給国であるばかりでなく、中東からEUへエネルギーを運ぶ際の中継地点でもある。それ故に、トルコの安定はEUにとって極めて重要である。
WTO新ラウンド交渉については、EU議長国の義務、責任として何とか再開できるよう努力したい。

【国際第一本部欧州・ロシア担当】
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