日本経団連タイムス No.2838 (2006年11月23日)

東海地方経済懇談会を開催

−「より良い未来を求めて時代を切り拓く〜活力と魅力溢れる国・地域づくりに向けて」をテーマに/克服すべき課題などで意見交換


日本経団連、中部経済連合会(中経連、豊田芳年会長)、東海商工会議所連合会(東海連、箕浦宗吉会長)は14日、名古屋市内のホテルで「東海地方経済懇談会」を開催した。懇談会には、御手洗冨士夫会長はじめ三木繁光副会長、庄山悦彦副会長、西岡喬副会長、米倉弘昌副会長、岡村正副会長、三村明夫副会長、渡文明副会長、柴田昌治評議員会副議長ら日本経団連首脳役員、中経連・東海連会員など約200名が参加。「より良い未来を求めて時代を切り拓く〜活力と魅力溢れる国・地域づくりに向けて」を基本テーマに、中部地域や日本全体が克服すべき課題などについて意見を交換した。

開会あいさつした中経連の豊田会長は、中部地域が、ものづくりの中枢圏域としての強みを活かすとともに、昨年開催・開港した愛・地球博、中部国際空港のもたらした有形無形の成果を糧に、経済面で引き続き堅調に推移していると述べた。また、われわれは現状の景気回復局面に満足することなく、持続的な安定成長のために次のステップに向けた活動を行っていく必要があるとの考えを示した。その上で、道州制の導入、新技術・新産業の創出といった産業振興、中部国際空港の拡充を取り組むべき課題として挙げた。

続いてあいさつした日本経団連の御手洗会長は、グローバル化の中で日本が生き残っていくためには「科学技術創造立国」の実現が不可欠であることを強調。ものづくりの中枢である中部地域が蓄積した技術などに一層の磨きをかけ、日本経済全体の活性化へ貢献することに期待を寄せた。
また、地域間格差を解消するためには各地域に、それぞれの地域の特色を活かした経済圏を創出する必要があり、道州制の導入はそのための有効な方策であると述べた。

〈活動報告〉

第1部の活動報告では、日本経団連側から米倉副会長が経済連携協定(EPA)交渉の加速化への働きかけなど、経済連携推進に向けた取り組み、三村副会長が環境自主行動計画の推進、新たな国際枠組みへの対応など地球環境問題への取り組みについてそれぞれ説明した。

一方、地元側からはまず、佐々和夫中経連副会長が「道州制の実現に向けた取り組み」について報告。中経連では、道州制の導入は国と地方のあり方を根本から見直し、地方分権社会を構築するための究極の構造改革であるとして、中部5県の地元議員に働きかけ、道州制を推進するための議員連盟の設立をめざすなど諸活動を進めているが、こうした動きを全国レベルで展開することが必要と述べた。

次に安井義博名古屋商工会議所副会頭が「環境と交流を基軸とした地域づくり」について報告。万博の理念であった環境や交流を中心に据えた新たな地域づくりの事業として、(1)環境を基軸とした産業をテーマとする「メッセ ナゴヤ〜環業見本市」の開催(今年10月)(2)地域で生活する多数の外国人の参加を得て実施する「NAGOYA UNDOUKAI」の継続的実施(3)2010年開催予定の「第10回生物多様性条約締約国会議」の名古屋への誘致運動――などを紹介した。

〈自由討議〉

■地元側の発言

第2部の自由討議では、地元側から(1)先端科学技術の振興を図り、産業への応用につなげるべく取り組んでいるが、中でも重要な基盤技術であるナノテクの振興に向け、来年4月にナノテクセンターを設立するので、支援・協力を願いたい(2)道路整備が地域の活性化に寄与する役割は大きく、地域発展の基本であることに変わりはない。同一県内でも地域により所得や雇用に格差があるという実態を踏まえて地域活性化の取り組みを支援してほしい(3)既存産業の高度化と新産業の育成を図るため産学官の連携を深め、海外企業や飛行研究施設などの研究機関の誘致に、地域を挙げて取り組んでいる。中部広域観光圏の形成をめざし、自治体、経済団体などが参加し「中部広域観光推進協議会」を昨年10月に設立、広域観光モデルコースの策定などのインバウンド事業の推進に取り組んでいる。1999年に中経連として立ち上げた「ベンチャービジネス支援センター」を今年「中経連新規事業支援機構」に改組、産学の新規事業に対してさらなる支援活動を展開している(4)岐阜県恵那市では経済団体と市の協働でさまざまな街の活性化策を進めており、市では独自の税制・補助制度による企業等立地促進制度などを講じている(5)中部の主要道路ネットワークの整備を進めるとともに、中部国際空港の2本目の滑走路整備、スーパー中枢港湾である名古屋港、四日市港の大水深バースの一層の整備など総合的な社会資本整備が必要(6)春日井では商工会議所が中心となって、人材を必要とする中小企業と、豊富な知識、経験、ノウハウを有するOB人材のマッチング作業を実施しているほか、県をまたいで尾張・東濃地域広域ネットワークを展開し、技術交流などの産学連携事業に取り組んでいる――などの発言があった。

■日本経団連側の発言

これに対して日本経団連からは、「イノベーションがより多く創出できるシステムの構築が求められており、中部地域におけるナノテクの活用による産業化といった取り組みは、地域発のイノベーションのモデルになる」(岡村副会長)、「道路整備は物流ネットワークの観点からも重要であり、各地域が自主性を発揮しながら、重点的、効率的に整備を進めていくことが求められる。地域が自立していくためには、地域固有の資源を発掘し、高い付加価値を創造することで、他地域との差別化を図ることが重要である。道州制は地域に新しい経済圏を創出し、自立を促すことにつながる」(西岡副会長)、「企業誘致を進めていくには、人材、インフラなど資源を広域に連携させて、地域の魅力をゾーンとして総合的に高める必要がある。日本経団連では、観光立国推進基本法制定を働きかけるなど、観光振興に取り組んでおり、中部地域で進める広域観光圏形成への取り組みを評価したい」(柴田評議員会副議長)、「地域の活性化を図っていく上で、産業の育成、誘致を各地域が主体的かつ戦略的に行うことが重要である。自治体独自の優遇措置は地域活性化に向け有効な手段となる」(三木副会長)、「日本経団連では、物流の円滑化をめざし、ハード面の整備を含め働きかけているが、中部においても今年3月立ち上げられた中部国際物流戦略チームを通じ、国際物流の円滑化に向けた効果的なインフラ整備と諸手続きの簡素化などが図られるよう活動してほしい」(渡副会長)、「日本経団連では、イノベーションの実現を担う高度技術系人材の育成が不可欠であるとの認識の下、産学連携の実効性を高めるため、インターンシップの拡充、先端技術融合型研究拠点の実現に取り組んでいる」(庄山副会長)――などと応じた。

御手洗会長、国から地方への大幅な権限委譲の必要性強調

最後に総括を行った御手洗会長は、地域の活力を引き出すことは、わが国にとって最も重要な課題の1つであり、「地域のことは地域で決める」という基本的な考え方に立ち、国から地方への大幅な権限委譲を進めていくことが必要であることを強調。同時に、それぞれの地域が「自立」を基本理念として、具体的な取り組みを自ら立案し、取り組んでいくべきだと述べた。
その上で、中部経済界に対して、日本のものづくりを支える代表的な地域として、将来に向けた新しい成長エンジンの創出、人々の活力を引き出すことなどを視野に入れて、さまざまな政策提言を続けてほしいとの期待を示した。

【総務本部総務担当】
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