日本経団連タイムス No.2838 (2006年11月23日)

防災に関する委員会を開催

−「災害に強い社会の構築にむけて」/溝手防災担当相から話を聴く


日本経団連は9日、東京・大手町の経団連会館で防災に関する委員会(數土文夫委員長)の第1回会合を開催した。来賓として出席した溝手顕正防災担当大臣から「災害に強い社会の構築に向けて」と題して話を聴くとともに、内閣府から政府の防災対策について説明を受けた。また、今後の委員会活動の進め方について議論し、実効ある防災対策を推進するため、具体的な災害を想定したケーススタディなど、実践的な検討を行うこととなった。

防災に関する委員会は、従来の「防災に関する特別懇談会」を発展的に改組したもの。会合の冒頭、數土委員長は、「真に災害に強い社会を構築することは喫緊の課題であり、企業としては自主的な取り組みを進めるとともに、政府やNPOとの連携を強化し、総合的な防災力を高めたい」と述べた。

溝手防災担当大臣は、現在のわが国は、リスクに対して社会全体が極めて敏感になる「リスク・コンシャスの時代」になっているとの認識を示し、特に災害に関するリスクマネジメントが重要であると強調した。
さらに、災害に強い社会をつくる上で、経済界と行政との連携が極めて重要であると指摘。災害に強い社会を実現し、災害による国民への被害を減らすためには、企業自らが災害に強くなるとともに、いつかは起こる大災害の際に有用なサービスを少しでも多く提供できるようにすることが重要であり、政府としても、企業の災害への対応能力強化のために、さらなる支援をしていくと語った。

続いて、内閣府の池内幸司参事官から、大規模地震への政府の取り組みについて説明があった。政府は、今後想定される大地震の主要な類型について、それぞれ地震の揺れの大きさと人的・物的被害についての分析・想定を行い、その想定結果に基づき予防から応急、復旧・復興までの対策を定める「地震対策大綱」、死者数や被害額の半減など定量的な目標を掲げ、その具体的な方策を示した「地震防災戦略」を策定している。さらに、地震発生時の各省庁の具体的役割や応援規模、行動の内容について定めた「地震応急対策活動要領」を策定している。
また、特に首都直下型地震については、マグニチュード7クラスの地震が発生した場合、約1万1000人の死者数、112兆円に及ぶ経済被害が想定されており、政府としては、首都中枢機能の維持の観点から、中枢的な施設とその機能を支えるヒト、モノ、カネ、情報、ライフライン、インフラ等を維持することを柱とした対策大綱を定めている。また、700万人に及ぶ避難者、650万人に及ぶ帰宅困難者の問題への対応について、内閣府の中央防災会議において現在精力的に検討しているとの説明があった。

西川智参事官からは、災害時の企業の事業継続と災害被害を軽減するための国民運動に関する政府の取り組みについて説明があった。内閣府では、多数の企業が集積している土地で大規模地震が発生した場合、その経済被害をいかに食い止めるかが日本の将来の浮沈に大きく関わると考え、企業の事業継続について中央防災会議で検討し、2005年に「事業継続ガイドライン」を策定している。また、国際的には、ISO(国際標準化機構)においてBCP(事業継続計画)を国際標準化しようという動きがあり、日本としては、企業の自主性を尊重し、第三者認証規格にすべきでないと主張するとともに、復旧活動における地域との連携など、日本の考え方を盛り込むよう努力しているとの説明があった。
また、災害被害を軽減する国民運動については、政府は優遇税制などによる建築物の耐震化の促進といった「公助」はできても、最終的に個人の生命を左右するのは、家具の配置など個々の家庭や企業における「自助」であり、いつ来るかわからない災害に向けて、被害予防のための国民の取り組みを息長く続ける必要があるとの説明があった。さらに、国全体で災害の被害を減らしていくために、政府として、経済界や個々の企業との連携を積極的に強化していきたいとの考えも示された。

その後、委員会では、溝手大臣をはじめとする内閣府の説明も踏まえ、今後の活動のあり方について審議を行い、活発な意見交換が行われた。今後、アンケートを通じて各企業の取り組みの現状、問題意識やニーズの把握を行うとともに、各種災害の対応策について有識者や政府等からヒアリングを行い、問題点を整理することとした。また、人口密集地・産業集積地における大規模地震など具体的な災害を想定したケーススタディを実施し、実践的な検討を行うこととした。

【社会第二本部企業・社会担当】
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