日本経団連タイムス No.2839 (2006年12月1日)

北陸地方経済懇談会を開催

−「希望に満ち溢れた日本・北陸を目指して」テーマに


日本経団連、北陸経済連合会(北経連、新木富士雄会長)は11月15日、福井市内のホテルで「第33回北陸地方経済懇談会」を開催した。懇談会には、御手洗冨士夫会長はじめ庄山悦彦副会長、米倉弘昌副会長、勝俣恒久副会長、張富士夫副会長、岡村正副会長、渡文明副会長ら日本経団連首脳役員、北経連会員など約120名が参加。「希望に満ち溢れた日本・北陸を目指して」を基本テーマに、北陸地域や日本全体が克服すべき課題などについて意見を交換した。

開会あいさつした北経連の新木会長は、北陸地域の経済動向について、全体として着実に回復を続けているものの、原材料価格の高止まりなど景気の先行きについては今後とも注視していく必要があると述べた。また、こうした中、北経連では今年1月に今後5年間の活動指針とする「第2次中期アクションプラン」を策定、(1)北陸新幹線の整備などによる人流・物流の結節点“北陸”の構築(2)新技術・新産業の創出支援などを通じた活力あふれる地域づくりの推進(3)地域の活力を育む地方分権型社会システムの構築――をベースに諸活動を実施していると説明した。

続いてあいさつした日本経団連の御手洗会長は、地域の自立と活性化を進める上で、各地域が産学連携の取り組みを通じてイノベーションを生み出し、その成果の事業化に向け行政とも連携して環境整備を行うことで、地域に新しい成長エンジンを整備することが重要との考えを示した。そうした点から、北経連が中心となり、北陸3県の県境を越えた産学官の連携を通じ、既存産業の高度化や新技術・新産業の創出に取り組んでいることに期待を寄せた。

■活動報告

第1部の活動報告では、日本経団連側から張副会長が法人実効税率の引き下げや減価償却制度見直しなどに向けた税制改正への取り組み、米倉副会長が経済連携協定(EPA)交渉の加速化への働きかけなど、経済連携推進に向けた取り組み、庄山副会長が規制改革や民間開放の推進に向けた取り組みについてそれぞれ説明した。

一方、北経連側からはまず、江守幹男副会長が「人流・物流の結節点“北陸”の構築に向けて」報告。日本海国土軸の大動脈となる北陸新幹線の1日も早い全線開通、高規格幹線道路・港湾・空港の一体的かつ整合性を持った整備促進の必要性を強調するとともに、北陸・韓国経済交流会議の定期的開催など北陸と韓国をはじめとした東アジアとの文化・経済交流の状況を説明した。

次に犬島伸一郎副会長が「新技術、新産業創出に向けた取り組み」について報告。新技術・新産業の創出と支援を目的に2000年に立ち上げた「北陸スーパー・テクノ・コンソーシアム」事業は、「会員相互の人的ネットワークの形成」と「会員の起業化へのバックアップ体制」の2つを柱に展開してきており、566に上る法人・個人会員が、相互にシーズ・ニーズ・アイデアを発表、情報交換し合う場であるサロンが延べ21回開催され、これまでに13件の起業化事例が生まれたことなどの成果を説明した。

また、深山彬副会長は、「魅力あふれる地域づくりに向けて」報告。北経連として(1)「Uniqueness and Unity Hokuriku」というブランドメッセージを設定し、北陸一体となって地域づくりを進めている(2)新たに広域観光推進委員会を設置し、観光振興に向けての戦略や外国人観光客の受け入れ体制の充実などについて検討を行っている(3)中央集権的な社会システムを、各地域が主体的に政策を企画・立案・執行できる仕組みに変革していくべく、総合対策委員会で地域の主体性が真に発揮される分権改革のあり方、広域自治体の自立を支える税財政制度等についての調査研究を進めている――などの取り組みを紹介した。

観光立国推進、少子化対策など

■自由討議

第2部の自由討議では、北経連側から(1)観光立国の推進は官民を挙げて取り組むべき重要な課題であり、大きな潜在需要が見込まれる中国、台湾、韓国などからの観光客を取り込むためにも、最低限のインフラ整備とソフトの充実が必要。顧客の立場に立った税関、出入国、検疫のサービス改善や外国人宿泊客の旅券写しの取得・保存の省略などを国に求めていく必要がある(2)人口減少、少子高齢社会の進行に歯止めをかける包括的な施策の充実が急務。少子化対策として国は「子育て支援」「働き方改革」「社会の意識改革」を一体的に進める国民運動などの推進を打ち出しているが、「働き方の改革」では子育てと仕事の両立などに向けて各企業の主体的な取り組みが重要であり、企業に対して、税財政面での支援といった具体的な施策も必要(3)わが国がグローバル競争に打ち勝っていく上で、人材力の強化は喫緊の課題。ものづくりの基盤となる技術者の育成には企業内での育成には限界があり、大学との密接な連携が必要。日本の大学にも金型学科を設けるなどして、技術者を体系的に育成していくことが必要(4)国と地方のあり方を抜本的に見直し、地方分権改革を着実に推進していくことが必要。道州制は地方分権改革推進のための有力な選択肢の1つであり、実効ある地方分権の制度設計を国民的に論議していくべき。地方の自主性が発揮できる地方財政制度の確立も重要な課題(5)アジアダイナミズムへの戦略的な対応として、日本海側の港湾を国際物流の拠点として重点的かつ効果的に整備していくことが必要。07年度には東海北陸自動車道が開通し、北陸の港湾の利便性も高まることが期待されるが、物流の効率化は産業競争力を高めると同時に、環境負荷の軽減にも寄与する――などの発言があった。

これに対して日本経団連側からは、「観光立国推進基本法制定を働きかけるなど、観光振興に積極的に取り組んでおり、北陸地域で進める広域連携への取り組みが北東アジア観光ゾーン形成に重要な役割を果たすことを期待する」(岡村副会長)、「少子化対策において、ワーク・ライフ・バランスの推進は重要な課題。ワーク・ライフ・バランスへの取り組みは、多様な人材の確保や従業員の意欲向上などにもつながるものであり、企業による主体的な取り組みを広げていく上で、政策的なインセンティブも必要」(勝俣副会長)、「イノベーションの実現を担う高度技術系人材の育成が不可欠であり、産学連携の実効性を高めるため、企業と大学の人材交流の活性化、インターンシップの拡充、先端技術融合型研究拠点の実現に取り組んでいる」(庄山副会長)、「わが国が競争力を高めていく上で不可欠である地域経済の活性化を進めるためには、各地域に分散型の経済圏を形成することが何よりも必要。そうした観点から各地域の意見を聞きながら、道州制の導入を働きかけていきたい」(張副会長)、「円滑な物流を妨げているボトルネックの解消をめざし、港湾・空港へのアクセスの改善や港湾機能の高度化などを働きかけており、アジアへのゲートウェイとしての日本海側の港湾整備の必要性についても訴えている」(渡副会長)――などと応じた。

最後に総括を行った御手洗会長は、地域の活力を引き出すことはわが国にとって最も重要な課題の1つであり、「地域のことは、地域が決める」という基本的考え方に立ち、国から地方への大幅な権限委譲を進めていくとともに、それぞれの地域が「自立」を基本理念として自ら具体的な取り組みを立案し、取り組んでいくことが重要と強調した。

【総務本部総務担当】
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