日本経団連タイムス No.2841 (2007年1月1日)

年頭所感/日本経団連会長・御手洗冨士夫

−「希望の国、日本」の実現に向けて


謹んで新年のお慶びを申し上げます。
日本経団連は、年頭に、これからの10年を視野に置いた新ビジョン、「希望の国、日本」を公表しました。われわれがめざす「希望の国」とは、だれしもが、「今日より明日が、明日より明後日」がより良くなるという希望のもとに、気概を持って挑戦していく国だと考えます。
この「希望の国」の実現に向けて、とりわけ2つの側面が重要となります。まずは、経済の持続的成長を確かなものとすることです。経済全体が好調に維持されないことには、個人の雇用や所得を着実に増加させていくことも、また、その結果として税収を増やし、財政や社会保障制度の持続可能性を確保していくことも著しく困難となります。
それを前提とした上で、もう1つ欠かせない点は、すべての個人に対して、成功に向けたチャレンジの機会が、分け隔てなく公正に開かれていることです。日本人のみならず、海外から訪れた人も含めて、本人の努力と研鑽次第で、社会の階梯をどこまでも上がっていくことができるオープンな社会、これもまた、「希望の国」の非常に重要な側面だと思います。
私は、1960年代から20年余りをアメリカで過ごしました。会社のスタートアップから悪戦苦闘の連続でしたが、アメリカ社会の開かれた風土にも支えられ、全米で企業活動を展開する基盤を築くことができました。その傍ら、一から始めて企業のトップやオーナーに上り詰めた人たちを、幾人も目にしてきました。アメリカ社会には、自らを律し、努力することで成功の機会をつかんだ人、いわゆる「セルフ・メイド・パースン( self-made person )」を賞賛・尊敬する文化があり、また、そのような人々を続々と生み出していくために、豊富な学び直しの機会をはじめとするさまざまな仕組みが用意されています。こうした点は、われわれが「希望の国」を築いていく上で、大いに見習うべきところだと思います。

結果の平等から機会の平等へ

今回われわれが世に問うた新しいビジョンでは、労働市場の改革を通じた人々の働き方の見直し、豊かな地域づくりを進めるための道州制の導入、グローバル経済のダイナミズムを取り込んでいくための改革など、幅広い分野について、具体的な提言を行っていますが、これらの根底に流れる考え方として、「結果の平等から機会の平等へ」、だれもが挑戦し、たとえ失敗しても何度でも再挑戦できるチャンスが存在する社会にしていくことに、特に重きを置いています。
本年が、「希望の国」の実現に向けて着実に一歩を踏み出す年になるよう、日本経団連として全力を挙げて取り組んでいきたいと思います。会員各位のご協力をお願いいたします。
今年一年、皆さま方のご健勝をお祈り申し上げます。

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