日本経団連タイムス No.2841 (2007年1月1日)

柳澤厚労相と懇談/労働行政などで意見交換


日本経団連は12月11日、都内のホテルで柳澤伯夫厚生労働大臣をはじめ厚労省首脳との懇談会を開催した。厚労省からは柳澤大臣、武見敬三副大臣、松野博一、菅原一秀両大臣政務官、辻哲夫事務次官らが、日本経団連からは御手洗冨士夫会長、西室泰三評議員会議長、関係副会長、評議員会副議長らが出席。今後の労働行政、社会保障行政をめぐり、意見を交換した。

会合の冒頭、御手洗会長は「安倍内閣の成長路線の効果により、経済は順調な成長を維持しており、経済成長が雇用の確保、社会保障制度の安定に重要になる。今後は成長を継続するとともに、雇用、社会保障制度を経済にふさわしいものにしていくために引き続き構造改革を進める必要がある」と述べた。

続いてあいさつした柳澤大臣は「合計特殊出生率の推移と将来人口推計が労働力人口の将来見通しに影響を与える。何もしないと2030年までの間に1050万近くの労働力が減少するとの推計がある。30〜34歳の女性、60〜64歳の男性について現状の労働力率を上げると、労働力の減少を半分近くに抑えることができる。一方、平成14年度以降も毎年のように継続して、医療、年金、介護等の制度改革に取り組んでおり、中には今後実施していくものもある。社会保障は公共事業と違って、何億円減といって決められるものではなく、個別の制度改革を積み上げていかなければならないところに難しさがある。こうした制度改革の効果もあって、社会保障の給付は2025年には165兆円の見通しが143兆円に縮減される。現在の労働市場は、規制緩和により多様な雇用形態となった。それに対する労働者の状況は、満足している人たちがいる一方で、正社員になりたいといった希望を持つ人が多い」と説明した。

日本経団連から問題を提起

このあと日本経団連側から基本的な問題提起を、労働問題と社会保障制度改革の2点に分けて行った。
最初に岡村正副会長から労働問題に関して「第1に、労働時間法制に関連してホワイトカラーエグゼンプションの導入」を求めたほか、「割増賃金率の引き上げには中小企業への影響の懸念から強く反対」した。「第2に、労働契約法制は労使自治の原則から企業の実態に即した必要最低限のものとする」よう求めた。「第3にパートタイム労働法制に関連して、パートタイム労働者を4つに分類して均衡処遇を図っていくような性急な規制強化」に反対するとともに、「雇用保険について国庫負担による国の関与の継続」を求めた。

また、三木繁光副会長から社会保障制度改革に関連して「年金、医療、介護の一体的な改革を進めて、今後の社会保障の伸びを高齢化を加味して想定される将来の経済成長に見合うようにする」ことを要望した。年金については「持続可能性を確保するために高所得者への給付抑制、マクロ経済スライド方式における所得代替率下限の見直し」、医療では「高齢者医療制度における患者負担のさらなる適正化、保険免責制導入の検討、療養病床の期限どおりの再編」、介護では「利用者の一部負担の見直し、サービスメニューの絞り込み、被保険者の年齢範囲の引き下げに反対」を表明し、社会保障制度改革の基盤となる社会保障番号や認証システムの整備を求めた。

この問題提起に対し柳澤大臣からは、「労働時間法制に関連して、成果で処遇する場合、対象範囲が問題になる。その場合、給与水準が裏打ちになるのではないか。労働契約法制はもともと民法から労使自治を前提にしており、必要最小限のものとして考えたい。雇用保険の基本的枠組みは堅持したい。社会保障の制度改革は国民に納得してもらえるかにかかっている。介護保険は導入した結果、悲惨な事例もなくなり、よかったと思っているが、少しやりすぎているかもしれない。年金の所得代替率については、50%を下回らないとしており、これを維持していくのも容易ではない」とのコメントがあった。

続いて自由懇談に入り、武田國男副会長が医療産業の成長戦略と国の環境整備の必要性を指摘。池田守男評議員会副議長からは企業のワーク・ライフ・バランスへの取り組みと政府の経済的支援の必要性を、鈴木正一郎評議員会副議長からは労働者派遣制度に関連して、期間制限の撤廃や雇用契約申し込み義務の廃止などの規制緩和を、井手明彦社会保障委員会共同委員長からは確定拠出年金の規制改革を、加藤丈夫労使関係委員長からは最低賃金制度の見直しを、それぞれ要望した。

【経済第三本部社会保障担当】
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