日本経団連タイムス No.2842 (2007年1月11日)

第60回評議員会開く

−政治と経済を車の両輪に/御手洗会長、改革の推進を強調


西室議長が06年の活動振り返る

日本経団連は12月25日、東京・大手町の経団連会館で第60回評議員会を開催、御手洗冨士夫会長、西室泰三評議員会議長をはじめ、副会長、評議員会副議長、評議員ら約370名が出席した。

冒頭、あいさつした西室評議員会議長は、06年の日本経団連の活動を振り返り、財政構造改革と持続的な経済成長の実現を政府・与党に働きかけた結果、07年度税制改正における減価償却制度の見直し、規制改革・民間開放推進会議の後継機関の設置などを実現したと指摘。対外関係についても、御手洗会長が初めての外遊先として中国を訪問したことや、11月の安倍総理大臣のベトナム訪問に合わせ日本経団連ミッションを実施したことに触れ、アジアをはじめ各国との関係強化やEPA締結の推進に大きな成果を上げたと指摘した。
その上で、わが国がより豊かな経済社会を実現するためには、道州制の導入、教育再生、労働法制の見直しなどについて、さらに議論を深め実現すべきであると述べ、日本経団連が引き続き、スピード感をもって改革に取り組むよう、期待を表明した。

続いて、あいさつした御手洗会長は、06年を回顧する中で、大きく3つの動きに注目する必要があると指摘。第1に「いざなぎ景気超え」を挙げ、今回の景気回復は、企業の経営革新に基づく収益力の上昇を起点としており、底堅いとした。いわゆる格差問題については、頑張った人が報われることが「真の公平」であるとした上で、再挑戦の仕組みをつくることや、やむを得ず挑戦できない人のためのセーフティネットを用意することが重要であると述べた。また、地域間格差の解決には、各地域の特色を活かした広域経済圏の創出が有効であり、今後、日本経団連としても、道州制の導入に向けた議論を深めたいと述べた。
第2に「社会の絆の揺らぎ」に触れ、昨今のいじめ、犯罪、不正などの社会問題の頻発を受け、教育の再生に取り組むべきであると指摘。その際、克己心や公徳心など日本人が伝統的に培ってきた価値観を徹底して教えるとともに、将来の日本を背負うリーダーの育成が重要であり、経済人ももっと教育に関心を持つべきであると語った。
第3に「加速する経済のグローバル化」を挙げ、WTOとEPA・FTAへの取り組みを着実に進めるとともに、国際競争を勝ち抜くため、引き続き構造改革に取り組むことが重要であると指摘。税制、労働市場、社会保障制度の改革、財政健全化など、国の根幹にかかわる課題を解決すべきとの考えを示した。
最後に御手洗会長は、今後、日本経団連の政策提言能力をさらに強化し、政治への積極的な働きかけを通じて、政治と経済が車の両輪となって改革を推進すべきであると述べた。

安倍首相らが所信表明

来賓としてあいさつした安倍晋三総理大臣は、06年9月の安倍内閣発足以降、外交では、中国、韓国を訪問し、両国との信頼関係を構築。それを基盤として、今後、世界に対し、「主張する外交」を展開していきたいと述べた。また、先の臨時国会で教育基本法の改正、防衛庁の省昇格、地方分権改革推進法の成立など、新しい国を築く上での骨格をつくったと述べた。
07年度予算については、国債発行額の過去最大の減額を行い、財政規律を守り、財政再建に向かって着実に進むという安倍内閣の姿勢を示したと指摘。07年の通常国会では、教育再生にかかわる法改正、社会保険庁の再編等をめざすと述べた。
安倍内閣の経済政策については、日本を力強く安定的に成長させるため、生産性向上に向けた「イノベーション」と、EPA等を通じた世界に対する「オープン」な姿勢が重要であると強調した。加えて、だれもが再チャレンジ可能な機会あふれる社会を構築していく必要があると述べた。
最後に安倍総理は、皆が夢や希望を持てる「美しい日本」をつくるため、日本経済が力強く成長するよう国づくりを行うとの決意を示した。

続いて、甘利明経済産業大臣から、経済成長戦略の推進に向けた、税制改革、予算配分、イノベーション推進、知的財産戦略等への政府の取り組みなどについて話があった。
また、麻生太郎外務大臣、尾身幸次財務大臣、柳澤伯夫厚生労働大臣、大田弘子内閣府特命担当大臣(経済財政政策)から、外交政策、07年度予算、少子化対策、社会保障制度改革などの課題について話があった。

「日本経済の本年の回顧と来年の展望」/福井日銀総裁が講演

最後に、福井俊彦日本銀行総裁が、「日本経済の本年の回顧と来年の展望」と題して講演を行った。
この中で福井総裁は、06年の日本経済の情勢について、米国の景気減速の懸念はあるものの、海外経済の高い成長を受けて、息の長い成長を続け、企業収益の好調と設備投資の増加など、企業部門の好調さがますます明確になったと指摘。企業部門の好調さは緩やかに家計部門にも波及し、生産・所得・支出の好循環という景気拡大の基本的メカニズムが形成されていると述べた。
こうした経済情勢の下、06年の金融政策運営を振り返ると、日銀は06年3月に「量的緩和政策」を解除、7月には無担保コールレートの誘導目標を「概ねゼロ%」から「0.25%」に引き上げたことを説明。その理由として、日銀の量的緩和政策の効果などもあり、バブル崩壊以降続いていた企業や金融システムにおける構造調整圧力がほぼ払拭されたことを挙げた。

その上で、07年の日本経済の展望について、消費者物価上昇率は徐々にプラス幅を拡大し、日本経済は引き続き息の長い拡大を続けるとの見通しを示した。この見通しに沿って経済・物価が推移すれば、日銀としては、極めて低い金利水準による緩和的な金融環境を当面維持しつつ、経済物価情勢の変化に応じて、徐々に金利水準の調整を行うと語った。
ただ、中長期的には、少子化・高齢化や財政再建などの課題にいかに対応するかが重要であると指摘。その解決のためにも、物価安定の下で持続的成長を実現することが必要であるとして、日銀としては、「新たな金融政策運営の枠組み」を活用し、今後とも適切な金融政策運営に努めたいと述べた。

【総務本部総務担当】
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