日本経団連タイムス No.2842 (2007年1月11日)

資源・エネルギー対策委員会開催

−資源エネルギー庁とエネルギー基本計画改定案で意見を交換


日本経団連は12月18日、都内のホテルにおいて、資源・エネルギー対策委員会(柴田昌治委員長)を開催し、資源エネルギー庁の木村雅昭総合政策課長から「エネルギー基本計画の改定案」について説明を聴くとともに、意見交換を行った。木村課長の説明概要は以下のとおり。

1.エネルギー政策に関する基本的な方針

2003年10月に閣議決定された「エネルギー基本計画」は、02年6月に制定された「エネルギー政策基本法」で掲げた3つの基本方針((1)安定供給の確保(2)環境への適合(3)市場原理の活用)を具現化するため、今後10年程度を見通したエネルギー政策を示すものである。基本計画は、基本法に基づき、約3年ごとに、必要に応じ見直すこととされている。
今般、当初の基本計画策定から3年が経過し、この間、国際的なエネルギー需給の逼迫や気候変動問題の深刻化など、内外の情勢は大きく変化した。
06年5月、経済産業省は、エネルギー安全保障を軸とし、30年に向けて特に重要な施策プログラムを盛り込んだ「新・国家エネルギー戦略」を策定した。その後、政府は「経済成長戦略大綱」や「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」において、資源・エネルギー政策を戦略的に展開することの重要性を示した。
こうした状況を踏まえ、今般、次の認識に基づいて基本計画の見直しを行う。

第1に、自立した環境適合的なエネルギー需給構造を実現するため、原子力発電を積極的に展開し、新エネルギーの着実な導入拡大を図ること、第2に、石油等化石燃料の安定供給に向けて資源外交を積極的展開、強靭なエネルギー企業の育成等戦略的な取り組みを強化すること、第3に、世界のフロントランナーとして省エネルギー政策の一層の充実・強化を図るとともに、地球温暖化問題に係る実効ある国際的な将来の枠組みづくりを主導すること、第4に、技術により国内外のエネルギー・環境問題の制約をブレークスルーするため、わが国の優れた技術力の一層の強化と戦略的な活用を図ること、である。

2.長期的、総合的かつ計画的に講ずべき施策等

(1)エネルギー需要対策の推進

今後さらに省エネルギー政策を進める上では、これまで以上に、エネルギー効率の向上に資する技術開発を活発化し、それを受け入れる社会システム側の変革を図る必要がある。具体的には、省エネルギーに関する技術開発のロードマップを策定し、さまざまな主体による技術の融合によりブレークスルーをめざす。さらに、民生、運輸、産業すべての部門におけるエネルギー利用効率の最大化を目的とするセクター別のベンチマークアプローチの導入や国民各層による省エネ型のライフスタイル形成等の各種対策を講じる。

(2)多様なエネルギーの開発、導入および利用

わが国はエネルギー資源の大部分を海外に依存していること、気候変動等の環境問題への対応が重要な課題となっていることを踏まえれば、エネルギー源ごとに供給安定性、環境適合性、経済性等を評価し、最適な組み合わせを図るとともに、これらのエネルギーを徹底的に有効利用していくための取り組みを着実に推進することが必要である。具体的には、次の4点を基本的な考え方として、施策を展開する。

  1. 原子力については、「原子力政策大綱」ならびに「原子力立国計画」を基本方針として尊重しつつ、安全確保を大前提に核燃料サイクルや高速増殖炉の早期実現を含め、原子力発電を将来にわたる基幹電源として推進する。
  2. 運輸部門については、燃料のほぼ全量を石油に依存しているため、バイオマス由来燃料等の安定供給確保や供給インフラの整備、燃料電池自動車等の開発・普及等の取り組みを総合的に推進する。
  3. 新エネルギーについては、現時点で出力の不安定性やコスト面での課題はあるものの、資源制約がない等の長所に着目し、コスト削減等のための技術開発を積極的に行いつつ導入を進める。
  4. 今後もエネルギー供給の主要部分を賄う化石燃料については、安定供給確保、環境負荷の低減等の課題を解決しつつ、バランスのとれた活用を図っていく。

(3)資源確保に向けた戦略的、総合的な取り組みの強化

資源の安定供給を戦略的に確保するため、資源エネルギー分野にとどまらない広範な協力、ODA等の経済協力の戦略的な活用、首脳・閣僚レベルでの資源外交を展開する。また、政府全体での資源確保指針の策定や、リスクマネー供給機能の強化等により、わが国開発企業による上流権益獲得を支援する。また、国際競争力のあるエネルギー産業の形成を促進する。

(4)エネルギー・環境分野における国際協力の推進

世界全体が抱えるエネルギー問題の克服に向けてわが国が積極的な役割を果たすため、省エネルギーや新エネルギー分野における国際協力を推進する。地球温暖化問題では、京都議定書の第1約束期間が終了する13年以降、すべての国がその能力に応じ排出削減に取り組むとともに、米国や中国、インドなどの主要排出国に最大限の削減努力を促す実効ある枠組みの構築をめざす方向に議論を主導していく。

(5)緊急時対応等の国内制度の充実・強化

石油備蓄など緊急時対応に万全を期すほか、これまでの制度改革の評価を踏まえつつ、電気・ガス事業制度の改革を推進する。

(6)エネルギー技術戦略の策定

省エネルギー等の明確な政策目標の下、技術開発によって解決すべき課題を明示し、要求される技術開発をロードマップの形で提示したエネルギー技術戦略を策定する。これにより、政府資金の投入の道筋を明確にし、官民一体となった戦略的な技術開発の推進を図る。

(7)広聴、広報、情報公開の推進

政府は、国民がエネルギーに関する理解と関心を深めることができるようエネルギーに関する広聴、広報や客観的な情報の積極的な公開に努める。

◇ ◇ ◇

資源エネルギー庁からの説明に対し、日本経団連側からは「本計画案には、『首脳レベルでの資源外交の展開』や『エネルギーに関する技術開発力の戦略的強化』『原子力立国実現に向けた政策展開』など、05年5月に取りまとめた日本経団連意見書で提唱した内容の多くが反映されている。甘利大臣のリーダーシップの下で、個々の政策実現に取り組んでほしい」といった意見が出された。

【産業第三本部エネルギー担当】
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