日本経団連タイムス No.2844 (2007年1月25日)

連合首脳と懇談

−春季労使交渉をめぐる諸問題テーマに意見交換


日本経団連(御手洗冨士夫会長)と連合(高木剛会長)は15日、都内で首脳懇談会を開催した。日本経団連からは御手洗会長はじめ三木繁光副会長、岡村正副会長、渡文明副会長、鈴木正一郎評議員会副議長、中村邦夫評議員会副議長、大塚陸毅国民生活委員長、加藤丈夫労使関係委員長らが、連合からは高木会長はじめ会長代行や副会長ら、合わせて35名が出席。今年の春季労使交渉をめぐる諸問題をテーマに意見交換を行った。

冒頭のあいさつで連合の高木会長は、家計への配分の必要性や非正規従業員の増加、正規従業員の長時間労働などの問題認識を示した上で、「日本経団連と連合がそれぞれの役割と責任を十分自覚し、当面する社会問題に対処していくことが強く求められている」と述べた。

続いてあいさつした日本経団連の御手洗会長は、日本企業は絶えざるイノベーションによって生産性を上げ、国際競争力を強化することが不可欠であると強調。その上で、個別企業の賃金については、生産性向上と支払能力、継続的な成長の見込みなど中長期的な経営戦略を踏まえて、個別労使が決定すべきであるとの基本スタンスを改めて示した。

意見交換

意見交換では、連合が今年の春季労使交渉の主張点として、格差社会の深刻化とその背景にある社会的な分配の歪みを挙げた上で、(1)昨年を上回る賃金改善の獲得(2)パートタイマーの処遇改善と処遇制度の整備(3)ワーク・ライフ・バランスの視点からの働き方の見直しと時間外割増率の引き上げ(4)三六協定の総点検や派遣・請負労働者の職場の総点検――などに取り組むとの考えを示した。

一方、日本経団連はまず、イノベーションを推進するに当たり、その原動力である人材力の強化に向けて、新しい働き方としてのワーク・ライフ・バランスの取り組みが求められていると強調。その上で、春季労使交渉については、(1)グローバル競争激化の時代に雇用を維持し賃金水準を確保するためには、企業の競争力強化が最重要であること(2)個別企業の賃金決定は自社の支払能力に応じるべきであること(3)企業労使が協力して取り組むべき重要課題は付加価値の増大であること(4)短期的な成果は賞与・一時金に反映すべきであること――などを主張した。
このほか、日本経団連からは、「回復時期にあるいまこそ、国際競争力の強化と生産性向上の新しい方向を労使で見つけていかなければ、1990年代の“失われた10年”と同じ轍を踏むことになるのではないかと危惧している」「労働分配率の議論については、金額ベースでみると、雇用者全体の所得総額は増加しており、成長の果実の分配も雇用者増や賞与・一時金の増加などを通じて進んでいるのではないか」などの意見が出された。
さらに、「ワーク・ライフ・バランスを実現するためには、多様な働き方に応じて従業員を処遇する必要があり、労働時間でなく職務や仕事の公正な評価に基づいて、成果に応じて賃金を決定する賃金体系の導入が進められるべきである」といった意見に加え、労働力人口の減少を見据えた働き方の見直しの必要性や、格差問題を一律に論じるべきではないとの考え方などを示す発言があった。

連合からは、「外需主導の景気回復を内需拡大につなげる視点が重要であり、物価上昇も踏まえて適度な賃金引き上げをしなければ国内経済は活性化しない」「ワーク・ライフ・バランスについては、公正な処遇や健康配慮なども含めて納得できることが必要であり、今後の交渉でも労使で十分議論していきたい」などの意見があった。

【労政第一本部労政担当】
Copyright © Nippon Keidanren