日本経団連タイムス No.2846 (2007年2月8日)

四国地域経済懇談会開く

−「希望と活力あふれる日本・四国を目指して」テーマに


日本経団連(御手洗冨士夫会長)と四国経済連合会(四経連、大西淳会長)は1月30日、松山市内のホテルで「四国地域経済懇談会」を開催した。懇談会には、御手洗冨士夫会長をはじめ草刈隆郎副会長、渡文明副会長、江頭邦雄副会長、池田守男評議員会副議長、池田弘一社会貢献推進委員長、野間口有知的財産委員長ら日本経団連首脳役員、四経連会員など約150名が参加。「希望と活力あふれる日本・四国を目指して」を基本テーマに、四国経済の活性化や自立的発展に向けた取り組みなど、四国が抱える課題を中心に意見を交換した。また、同懇談会に先立って、同市内にある三浦工業本社工場を視察。貫流ボイラの製造でトップシェアを誇る同社の製造現場を見学したほか、オンライン端末を利用してボイラの稼動状況をチェックするシステムの説明を聴取した。また翌31日には、西条市の今治造船西条工場を視察し、30万トン級船舶の建造を可能とするハイテク化された製造ラインを見学した。

開会あいさつした四経連の大西会長は、四国経済を取り巻く状況について、緩やかな改善が続いているものの、高齢化・人口減少の進行や、人口流出による経済的地域格差の拡大などにより、長期的にみると厳しい状況にあるとの見方を示した。その上で、地方の自立と活性化のために、特色ある地域づくりを通じた広域交流の拡大が重要であると指摘、そのためには高速交通基盤の整備をはじめとするインフラ整備が欠かせないとの考えを示した。また、東京一極集中を転換し、地方がそれぞれの特徴を生かして自立し、日本全体を支える、新しい国をつくっていくために、道州制が大きな柱になると指摘するとともに、道州制の導入に当たっては、地方がより主体的にかかわっていく必要があると強調した。

続いてあいさつした日本経団連の御手洗会長は、「希望の国」を実現するためには、地域の自立と活性化が特に重要であり、そのためにも道州制の導入が求められると強調。これにより「広域経済圏」がつくられ、地域の自立が可能になるとの考えを示した。その上で、四国が産学官の連携で新産業創出に取り組んでいることに触れ、四国の潜在力や個性を生かした事業が成功し、地域のさらなる発展につながることへの期待感を示した。

■活動報告

第1部では、日本経団連から、江頭副会長が「税制改革」、草刈副会長が「規制改革・民間開放」、池田社会貢献推進委員長が「企業の社会的責任」、野間口知的財産委員長が「知的財産問題」をテーマにそれぞれの取り組みを報告、(1)法人実効税率の引き下げなど税制改正に向けた取り組み(2)規制改革・民間開放推進会議の後継組織設置の働きかけ(3)CSRの一環としての社会貢献活動への取り組み(4)世界特許の構築、模倣品・海賊版対策、国際標準化など知的財産分野強化への取り組み――などを説明した。

一方、四経連からは、三木俊治副会長が、「地域の自立に不可欠な地方分権の推進」について報告。従来の中央集権的な仕組みから、地域が国全体を支えるという地方分権型社会への移行が求められていると指摘。道州制の導入に当たっては、税源移譲や財政などの制度設計や地域での合意形成とともに、四国が1つとなって地域づくりを推進する必要があると説明した。また、これに関連して四国を深く知り四国の将来を考える「四国学」の提唱について紹介があった。
次に、森本惇副会長が、「産学官連携の推進と地域活性化への取り組み」について報告。四国産学官連携推進会議での競争力のある新産業の創出をめざす取り組みを紹介した。一方、高速交通ネットワークの整備による観光振興の取り組みも重要であると指摘。四国の歴史文化遺産を生かした「歴史文化道」を整備、情報発信することで観光客の増加に取り組んでいると説明した。
続いて、山下直家副会長から、「地域の自立と安心・安全な暮らしを支える社会基盤整備の促進」について報告。四国の産業活性化や観光振興を進める上で、社会基盤整備の遅れが大きな制約要因となっており、必要なインフラ整備の推進が重要であると指摘。中でも四国を循環する高速道路「四国8の字ネットワーク」の早期完成、本四連絡橋の利用しやすい通行料金の実現に取り組んでいるとの説明があった。

■自由討議

第2部の自由討議では、四経連から、(1)地方分権の推進と新たな国土づくり(2)観光振興等を通じた交流人口の拡大(3)国際化への取り組み(4)新産業・新規事業の創出(5)教育再生に向けた取り組み(6)広域高速交通ネットワークの形成――などについて日本経団連の考え方や取り組みに関する質問があった。
これらに対して日本経団連からは、「道州制の導入により、独自の発想で地域づくりを進めることが可能となり、分権型の国土・組織構造の形成につながる」(草刈副会長)、「国際観光の推進の観点から、中国・韓国を中心としたアジア諸国からの旅行者を増やすことが大切」(江頭副会長)、「経済連携協定(EPA)を推進し、成長著しい東アジア諸国のダイナミズムを取り入れていくことが重要」(渡副会長)、「新事業の創出には、高度人材の育成と外部人材とのネットワーク強化が重要」(江頭副会長)、「教育再生は社会全体で取り組むべき課題。ワーク・ライフ・バランスを実現し、企業が教育に参画することが必要」(池田評議員会副議長)、「円滑な人流・物流を妨げているボトルネックの解消など、緊急性が認められる、真に必要な道路については引き続き整備すべき」(渡副会長)――と応じた。

最後に会議の総括で御手洗会長は、「持続的な地域社会の発展のためには、より自立した地域経済の構築が必要との認識の下に、四国がさまざまな資源や特色を生かしつつ懸命に取り組んでいることを実感した」と述べ、特に「四国学」の提唱のような活動の積み重ねが重要であると述べた。また、四国には独創的な技術や事業展開によって、世界市場で強みを発揮している企業が数多くあり、四国が伝統的に持っている進取の気性を大いに発揮しながら、広域経済圏づくりに邁進してほしいとの期待を示した。

【総務本部総務担当】
Copyright © Nippon Keidanren