日本経団連タイムス No.2848 (2007年2月22日)

定期健診項目の安易な拡大に反対

−医療保険者、事業者、労働者の役割明確化・連携へ意見書公表


日本経団連は16日、意見書「定期健診項目の見直しに関する考え方」<PDF>を公表し、厚生労働大臣に建議した。同「意見書」は、高齢者医療確保法が2008年4月に施行されることを契機として、事業者の役割分担等について整理すべきであることや、特定健診の項目(案)に合わせる形での定期健診項目の安易な拡大には慎重であるべきことを骨子とする。

各種健診の現状と定期健診項目の見直しに係る問題としては、(1)事業者は、労働安全衛生法に基づき、労働者の定期健診の実施が義務付けられている。その目的は、労働者の適正配置と作業関連疾患に係る予防等である(2)他方、08年4月以降、健保組合等の医療保険者は、高齢者医療確保法に基づき、40歳以上の加入者を対象とした特定健診・特定保健指導を実施することが義務付けられる。その目的は、生活習慣病予防である(3)現在、特定健診項目(案)に合わせる形で、定期健診の項目拡大が検討されている。この方向での見直しが行われた場合、事業者は費用負担増や、労働者に対する精密検査の勧奨等、一層の事後対応が求められる――の3点が指摘できる。
「意見書」の概要は次のとおり。

労働者の自己保健義務を強化する必要性も強調

1.医療保険者、事業者、労働者の役割の明確化

高齢者医療確保法に基づく新しい枠組みの下、国民の健康の保持増進に向け医療保険者、事業者、労働者がそれぞれの立場から連携して取り組めるよう役割を明確化する必要がある。
その背景には、高齢者医療確保法の施行後、事業者が労働安全衛生法上の義務として事後対応・指導等をどこまで行うべきか、ある程度具体的にする必要が生じていることが挙げられる。

2.事業者と医療保険者との連携の必要性

定期健診と特定健診の項目が一致しない場合でも、労働者が健診を2回受けることのないよう、事業者が医療保険者から特定健診等を受託する等、最大限の連携・協力を行うべきである。
この点に関し、医療保険者と共同で労働者の健康の保持増進を図る諸施策(健康づくり活動、人間ドック等法定外健診)に取り組んできた事業者も少なくない。「2」は、こうした事業者と医療保険者との積極的な連携・協力が今後も一層望まれることの指摘である。

3.定期健診項目の見直しの視点

特定健診の項目に合わせる形での定期健診の安易な項目拡大には反対である。特に、腹囲測定等を事業者に課すことについては、労働者の意識を踏まえれば測定方法にも配慮することが求められ、その必要性を十分議論すべきである。
この点は、特定健診の項目に腹囲測定等を入れること自体に反対するものではない。その趣旨は、定期健診項目の見直しを行う場合、医学的知見のみならず、従前の健診項目によって代替が可能かどうか等、幅広い視点からの検討が必要という指摘である。

4.労働者の自己保健義務を強化する必要性

事業者の事後対応・指導に対する労働者の努力・協力義務(自己保健義務)を強化すべきである。
この点は、脳・心臓疾患等生活習慣病の予防・増悪防止に当たって、労働者本人の自覚と取り組みが不可欠との問題意識によるものである。

◇ ◇ ◇

なお、事業者と医療保険者の連携を通じ、特定健診受診率の向上促進を図ること等の重要性については、日本経団連の提言「生活習慣病予防に係る効率的で質の高い特定健康診査・特定保健指導の実施に向けて」(起業創造委員会ヘルスケア産業部会)で指摘している(2006年8月31日号既報)。

【労政第二本部安全・衛生担当】
Copyright © Nippon Keidanren